暗黒龍とゆかいな腹減り達
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「ヨナちゃん!ルイは!?」
加淡村から戻ってきたジェハは間髪なくルイの居場所を尋ねた。その言葉にヨナは表情を曇らせた。
「ルイは…
シンアの暴走を止めるために
「そ…そっか…」
「ジェハ!あのね!!」
「ヨナちゃんが気にすることはないよ
ルイのことも…もちろんシンア君のこともね」
切羽詰まった声をヨナが上げる。だが、先の言葉を遮るようにジェハが悲痛な表情を浮かべるヨナに優しく語りかけるのだった。そして彼女の頭を優しく撫でるとジェハはルイの元に向かった。
「ホント、僕が目を離すとすぐに無茶ばかりするんだから」
天幕に入り、横たわったルイの横に腰掛けるとジェハは嘆くように呟くのだった。自分のことは二の次。誰かのためにルイはぶっ倒れてまでも必死に手を伸ばす。そんなルイを見て不安に思うのだ。いつか知らない内に手の届かない場所に行ってはしまわないかと。
「だから僕は目を離せないんだよ」
ジェハは穏やかに眠るルイの前髪に手を伸ばして掻き上げて彼女の額に己の手を当てた。一先ず熱はなさそうでジェハはホッと胸を撫で下ろすと額から手を離した。
「へぇ〜、お前がそんな表情するとはな」
ジッとルイを見ていたジェハはその声に慌てたように天幕の入り口を見た。するとそこには珍しいものでも見たと言わんばかりに口角を上げるハクがいた。
「ハク…」
「そんな大事な女か??」
「まぁーね…」
驚くジェハの隣に腰掛けたハクはそう唐突に尋ねた。それに答えたジェハはルイを見て柔らかく微笑むのだった。が、あるフレーズに気づきジェハは目を見開いてハクを凝視する。
「な…なんだよ」
「今なんて言った!?」
ジェハはハクに身を乗り出した。聞き間違いであると願いつつ。だが、それはあっさりと次のハクの言葉で崩れるのだった。
「そんな大事な女かって言った」
「………
どうしてルイが女だってわかったんだい!?」
「雲隠れ岬でのお前の表情に違和感を覚えたのが最初だ。
で、今それが確信に変わったから鎌かけてみた」
疑問を抱くジェハにハクは悪戯が成功したかのようにニヤリと笑うのだった。ルイに向けるジェハが向ける柔らかい表情が、ハクにとってヨナに向けているものと同じように直感的に思ったのだ。最初は、相棒であるルイを心配しての表情かと思ったらそれは断じて違うのを先程のジェハの様子を見てハクは確信に変わったのだ。
「はぁ…
まさか一番知られたくないハクにバレるとはね…」
ジェハはやれやれと肩を竦めガクリと肩を落とした。そんなジェハにハクは小さく笑いながら彼の肩を叩く。
「ホントだよな。
俺のこと茶化している場合じゃないんじゃないんですか?」
ハクはいつもの仕返しとばかりにジェハの痛いところをついた。その言葉にジェハは自嘲気味に笑った。
「ハクの言うとおりだね。
僕も結局、気持ちを言えずに踏みとどまっているんだから」
少しの間離れてみて、愛おしい気持ちは今まで以上に強くなった。でも、それを言う覚悟が持てない。いつもハクに言っている言葉は結局自分に跳ね返っているのだ。
でもジェハはその件を棚に上げてハクにニッコリと笑うのだった。
「でも、ハクからかうの楽しいからやめるつもりないけどね!」
「安心しろ、タレ目。
今度は俺が逆にからかってやるからよ」
額に青筋を立てハクが睨みを利かす。やられっぱなしは性に合わないハクにとってはこれは美味しいネタだったのだ。
「ん......」
茶化し合っていた二人は目を合わせ合い足元を見る。すると仰向けに寝ていたルイが身体を横にしていた。身じろぎながらルイの手はジェハの手を掴むのだった。そして安心しきったように再び穏やかに寝始めるルイの無意識な行動を偶然にも目撃してしまったハクとジェハは目を点にするのだった。暫し二人とも口を噤んだため沈黙が続く中それを破ったのはハクの一声だった。
「どうぞ、ごゆっくり…」
「え?ハク!?」
「お邪魔虫は退散させていただきますと」
スッと音を立てずに立ち上がったハクは必死に引き留めようとするジェハを置き去りにして愉しげに天幕を出るのだった。
「はぁ…参ったな…」
この状況にジェハは困ったように息を吐いた。が、手を離してルイを起こすわけにもいかないためこの場を離れることはできない。といってこのままルイの寝顔を見ていたら襲いかねない。ジェハはもう一度大きく息を吐くと、仕方ないとルイの横に寝転がり目を閉じるのだった。
*****
「ん…」
身じろぎながらルイはゆっくりと瞼を開けた。するとすぐ傍にはジェハの寝顔があり、起き上がったルイは頬を緩めた。目を細め、ルイはジェハの前髪に手を触れようと手を伸ばす。が、それはルイを呼ぶ声で寸止めされるのだった。
「「ルイ!!」」
その声にルイは視線を移す。すると天幕の入り口にヨナとユンがいたのだった。二人の姿を見て柔らかく微笑むルイに二人は切羽詰まった表情で駆け寄った。
「ルイ!気づいたのね!!」
「もうなんでルイぶっ倒れてるの!!
帰ってきてビックリしたんだからね!!」
怒涛の勢いで声をかける二人にルイはごめんごめんと平謝りした。そんなルイが気にかけるのはもちろん自分自身のことではない。
「シンアは大丈夫かい?」
「ルイのお陰で元気よ」
「まぁ念のため暫く安静にしてもらうけどね!」
その言葉にルイは良かったとホッと胸を撫でおろした。そんなルイにユンが目くじらを立てる。
「ルイ!ちょっとは自分の心配をしてくれない!?」
「それはちょっと無理だと思うよ、ユン君」
「ジェハはなんでそんなとこにいるの…」
ユンの心配する怒声に対して宥めるように声を上げたのはジェハだった。ぬくりと起き上がったジェハに、ユンは怪訝な表情を浮かべた。そんなユンの指摘にジェハは愛想笑いを浮かべる。
「いやぁ…色々あったんだよ…」
「色々って何??」
「いやぁ…姫さん、実はですね…」
「なんでハクはそんなタイミングよく現れるんだい?」
「面白そうな話を小耳に挟んだんで来てみた」
ヨナの純粋な問いに対してどう返そうかと戸惑うジェハを他所に口を開いたのはいつのまにか天幕の中に入っていたハクだった。突然のハクの登場に平然さを装いながらも内心は慌てているジェハを見て、ハクはニヤリと不敵に笑った。
「ちょっと…ここで喧嘩おっ始めないでよね…
やるなら外でどーぞ」
二人の纏うピリピリとした空気にユンはげんなりとしながら天幕の外を指差す。
「よーし、外行こうか?ハク」
「しれっと乗っかったな…タレ目」
満面の笑みを浮かべながらジェハは、繋いだままの手を自然に外すと立ち上がりハクと肩を組む。そんな彼の意図していることがわかったハクはこれ以上からかうのをやめて大人しく一緒に外に出ていくのだった。
「静かになったわね」
「煩い珍獣共が外に行ったからね…
で?結局真相はなんなの??」
一気に静寂化した天幕内でヨナの正直な感想にうんざりしながら相槌を打つとユンがルイに尋ねた。
「あぁ…それは恐らく僕のせいだよ」
「…どういうこと??」
「僕が無意識の内に彼を引き止めてしまっただけだから」
「へぇ…へぇ〜」
ユンの問いに対してあっけからんと答えるルイ。最初は普通に聞いていたユンだが、段々と意味がわからなくなってきて眉間にシワを寄せ始める。一方で曖昧に相槌を打ち始めるユンに対して、ヨナは何か通じるものがあったのかニコニコと笑みを浮かべる。
「そっか〜
ジェハとルイってずっと一緒にいたんだもんね」
「そうだね…
子どもの時は一緒に寄り添って寝てたよ
だからかな、彼がいると安心するんだよね」
「わかるわ!!
私もハクと一緒にいると安心するもん」
妙なところで意気投合し始める二人。そんな二人の話に、ユンはどこからどうツッコんでいいかわからず大人しくこの話が終わるまで見守ることにするのだった。