暗黒龍とゆかいな腹減り達
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「そこの鼻タレ
ここが私らの縄張りと知っての狼藉かい!?」
身分がバレないようにとヨナが深く外套を被って茂みから立ち上がり発した一声だった。これに一同は目を丸くして驚いた。
「女…?」
「縄張りだと?」
「貴様ら賊か!?」
「その通りさ!!」
「もしもーしっ」
驚きの声を上げる役人にヨナは啖呵を切る。ユンの必死な叫びはもう届くことはなかった。
「そこの食料もその子もこの村のモンは全て私らの所有物さ!!
わかったらとっととしっぽ巻いて帰んな、小僧共!!」
「ぶっは!!」
「笑うんじゃないよ、暗黒龍。」
「…失礼。」
ヨナらしからぬ口調にハクが盛大に吹き出す。一方、聞き覚えのありすぎるヨナの口調にルイとジェハは笑いをかみ殺していた。
「…懐かしいものを聞かせてくれるじゃないか」
「聞いてもいい?懐かしいんだけど、その口調。」
「ギガン船長のマネ。」
二人の反応にヨナは振り返って口角を上げた。
「ふざけた連中ですね。」
「とっとと追い出して下さい。」
役人達が呆れる中、ユンが助けを求めるようにヨナの名を呼ぶ。
「ヨナぁ…」
「ユン、ごめんね。
私、高華国の民の為に闘う覚悟はとっくに出来てるの。」
「そういう事なら仕方ないですね…」
言い出したら聞かないヨナの性格を熟知しているハクがそう言うと、釣られるように他の皆もヨナを見てこう呼ぶのだった。
「お頭」
そして一同は役人を瞬殺で地面にノすのだった。
「貴方達…こんな事をして…ただで済むと思ってるんですか!?」
「お前らこそこれに懲りたらもう二度とこの村に近づくんじゃないよ。
今度この村に何かあったら私ら…」
えっとと視線を泳がすヨナの言葉に続けるようにお腹を盛大に鳴らすハクとゼノが口を開く。
「暗黒龍」
「と、ゆかいな腹へり達ー」
「……がただじゃおかないよっ」
勢いそのままヨナ達一行の賊の名前が決定される。このくだりに関してもうルイはもう呆れかえっていた。そんなルイにまぁまぁとジェハが苦笑いしながら宥める。
「なにこのグダグダ感…
ってかなんでお腹そんなに鳴ってるの」
「まぁまぁ、色々あったんだよ…」
一方のユンは収集がつかないこの状況下にげんなりとしながらイクスのことを思い浮かべるのだった。
イクス、あんたの予言した連中はこれからどこへ行っちゃうわけ…?
そして役人を追い払ったヨナは、またもやとんでもないことを言い出すのだった。
「まあ一生に一度くらい賊になる事があってもいいかな。」
「ヨナ、初めてじゃないだろ?」
「そうそう
ヨナちゃん、君はちょっと前海賊の仲間だったじゃないか。」
「あ、本当ね
じゃあもうなんでもいいか」
ヨナの漏らした言葉にルイとジェハがあっけからんと返答する。それにそっかと納得するヨナにユンがツッコむ。
「何その転職するみたいな軽さ」
「名乗ったからにはやるしかないわ」
「何バカ言ってんの。早く逃げるよ!
あいつら絶対また来るって!今度は兵を大勢連れて。」
慌てるユンを尻目にヨナは淡々と言葉を紡ぐ。
「火の部族はこんな村がたくさんあるのよね?」
「…そうだよ。」
「そしてどこも貧しくて税が重い。」
「…うん。」
ユンは表情を曇らせながらも頷く。それをヨナは聞き終えると口元を緩めるのだった。
「じゃあ私達が手の負えない賊となって縄張りを広めていく。
そうすれば不当に重い税を課せられた住民達を守れるわ。」
「そんな簡単な問題じゃないよ。
徴収が滞ればさらに厳しい取り立てになるし、しばらくは何とかなっても下手すると彩火城の兵が動くよ!」
ヨナの言っていることは理解できるが、それは無謀すぎるとユンは異議を唱えた。が、ヨナの意思は強く揺らぐことはなかった。
「いつでも来ればいい。
危険を避ける程、痩せた子供や病人を見捨てるのなら本末転倒。
それに私負ける気がしないの、皆がいれば。」
「ルイ〜〜!!」
ユンは助けを求めるようにルイの名を呼んだ。このメンバーの中で唯一まともに一緒に反対してくれてると思ったからだ。しかし、ルイは真剣な表情でヨナをジッと見つめていた
「ヨナ、それが今やりたいことかい?」
「そうよ
もちろんルイも手伝ってくれるわよね」
「どうしてそう思うんだい??」
「だってルイだって本心はこの一帯の住民を守りたいって思ってるでしょ?」
「…言われちゃったね、ルイ」
ヨナに見透かされたルイの心情。ルイはまさかジェハならまだしもヨナにバレるとは思わず目を見開いた。そんなルイにジェハはクスクス笑いながら耳打ちする。それに答えるようにルイは肩を竦めてみせた。本当にヨナには驚かされてばかりだ。本来なら止めるべきだ。いくら皆が強くても大勢の兵士に多勢に無勢だ。でも、ヨナの真っ直ぐな紫紺色の眼差しを見ると、信じてみたくなるのだ。
「はぁ…本当にヨナには敵わないよ
君の力強い眼差しは、本当にこの無茶なことをやりのける気がしてならない…」
ルイはため息混じりに紡ぐとまっすぐヨナを見据えた。
「ヨナ、僕も微力ながら手伝いたい」
「ルイならそう言ってくれると思ってたわ」
ルイの言葉をわかっていたかのようにヨナは柔らかく微笑んだ。そんなヨナにまだ諦めがつかないユンが待ったをかける。
「…ッ!!ちょ、ちょっと!!」
「ユンならきっとわかるはず、どう動けば効率よく役人に圧力をかけられるか」
そう言われるとユンは何も言い返せなくなった。その沈黙を肯定と認めるとゼノが陽気な声を上げるのだった。
「じゃ、まとまったところで“暗黒龍とゆかいな腹へり達”の旗上げだーいっ」
「まずその名前に圧力がないよ!!」
おー!!と掛け声を上げる一行に対して唯一ユンが悲鳴に似た声を上げるのだった。