一方その頃、野菜等の食料を積んだ荷台を引く1人の少年が加淡村に来ていた。
彼が姿を見せたことで久々に見る彼に皆が駆け寄ってきた。

「あ！！」

「ユンだ！！」

「ユン！！」

呼ばれた少年…ユンはその声に足を止めた。そして嬉しそうに駆け寄ってきた子どもを受け止めるのだった。

「久しぶり、元気だった？？」

「お腹すいた…」

頬を緩ませてユンは尋ねる。それに子どもたちは悲しげな表情を浮かべてお腹に手を当てるのだった。

「うん
すぐに温かいもの作ってあげるよ」

腰を屈めてユンは優しく彼らに語りかけた。そんなユンにでもね！と子どもたちは嬉しそうに話し始める。

「最近来てくれたお兄ちゃんがね優しいんだ！！」

「僕たちのために食物取ってきてくれるんだよ！！」

「へぇ〜旅の人？」

「そうだよ！
今、セドルおじさんのとこに住みついてるんだよ」

はしゃぐ子どもたちの声をしっかりと聞き取りユンは相槌を打つ。そして子ども達から離れユンはとある一軒の家を覗き込む。

「ミレイおばさん具合どう？？
薬持ってきたよ」

「なんだ来たのかい
もう来ないかと思ったよ」

ぶっきらぼうな彼女の言葉にユンは苦笑いしながら彼女が必要な薬を手渡した。

「ユン」

「セドルおじさん」

荷台を再び引き歩いているユンは今度は一人の男性に呼び止められた。

「久しぶりだな
だいぶ顔を見せなかったから心配してたよ」

「ちょっと遠くに行ってたんだ
どう調子は？」

ユンの言葉にセドルは曇った表情を浮かべ現状を話し出す。

「ここは見ての通り食い物も少ないし病人や老人ばかりだよ
それなのに税ばかり重たくなりやがる」

「また増税？？」

「あぁ、取り立てが厳しくてね
これ以上どうしろって言うんだ」

吐き捨てるように言うセドルの言葉にユンも表情を曇らせた。

「そっか…
そういえばおじさんのとこに旅人さんがいるんだって？？」

「あぁ！そうなんだよ
賊が来た時に退治してくれてね、それ以降ずっとお世話になってるよ」

「どんな人？？」

「とても人当たりがいい青年だよ
土の部族領から来たらしくてね、まだ旅は始めたばっかだって笑ってたよ」

さっきと打って変わって楽しそうに話し出すセドル。そんな彼が発した言葉を元にユンはある可能性を見出していた。

「ねぇ！その人名前なんていうの！？」

ユンは若干前のめりになってセドルに尋ねた。それにセドルは不思議そうに思いながら青年の名を口にする。

「ルイだよ
知り合いかい？？」

「知り合いかもしれない！！
今何処にいるの！？」

「丁度今出かけていったばかりでね
そろそろ戻ってくると思うんだが...」

「そ、そっか
そういえば差し入れがあるんだ！
皆に配るよ」

「すまねぇ…
ところで後ろの奴らは友達かい？？」

「なんでいるの！？」

せドルの言葉にユンは振り返る。するとそこにはイクスの家に置いていったはずのヨナ達がいたのだった。

「ユンがこっそり出て行くから気になって。」

「私は姫様のお供を。」

「ゼノは青龍のモフモフについて来たのね。」

「帰って！」

「ユン君、お腹がすきました。」

「ユン君、今朝はシソ粥にしてくれないかい。」

「即帰れ、ごくつぶし。」

口々に思いの丈を口にする彼らにユンは頭を抱えながら声を荒げる。が、一行は全くユンの言葉に耳を貸さなかった。ヨナ以外はシンアに集まりだす。

「ホントだ、あったかい。」

「ねー」

「聞いてるの！？珍獣共っ！」

「この村のお手伝いをしてるんでしょ。手伝うわ。」

いつになく強い口調を発するユンにヨナは近づく。が、ユンはヨナの申し出を却下した。

「ダメ、目立つんだよ！」

「目立たないよう頑張るから。」

「もう生きてるだけで目立つから！
ここは病人もいるし治安も悪い。
お姫様の来るような所じゃないんだ。」

ユンはなんとかヨナ達をこの村から去ってもらおうと力説するが、ヨナの強い眼差しがそれを阻止した。

「ユン…私が高華の姫でイル王の娘だからこそ来るべき場所だと思うの。
父上の行ってきた事の結果を私は知りたい。」

「わかったよ、手伝って。」

ヨナの決意にユンは説き伏せるのはない無理だと悟り心折れるのだった。

ヨナ、ユンは冷たい水でたくさんの食器を洗い、食器を洗い終えると私達は火を起こして料理を作り始める。一方他の皆は、キジャとゼノは薪を運び、シンアは子供の相手、ハクとジェハは屋根を修理をし始める。
そして料理が完成に近づき始めたところでユンは皆を呼ぶ。しかし、ハクは川で魚を捕まえたから大丈夫だと断りをいれる。それにノルようにキジャもご馳走になったから平気だと言う。が、タイミング悪くキジャのお腹が鳴ったとこでそれが嘘だと判明する。お腹が鳴ったとこを懸命に誤魔化そうとするキジャ。そんな彼にハクは屋根の上から縄の束を投げつけ修行が足らないと声を荒げる。叱られたキジャは近寄ってきたゼノに教えを請い腹の虫を止める修行を開始する。そんな彼らをハクの隣りにいたジェハが最初は笑いをこらえていたが耐えきれず腹を抱えて盛大に笑い出す。
そんな彼らを見ていたヨナもお腹が鳴りながらも食べないと言い出す始末。

イクス、あんたが予言した高華国を揺るがす連中ってのはバカばっかりだよ…
でもお腹がすいても笑ってるバカだから、もっとデカイ困った事にも笑ってどうにかしちゃいそうだよね…

ユンはその光景を内心呆れながらもヨナと一緒に笑うのだった。が、そういえばとユンは先程聞いた情報の信憑性を確かめようと口を開く。

「ジェハ」

「なんだい？ユン君」

「もしルイがこの村見たらどうすると思う？？」

「そりゃあもちろん見て見ぬふりが出来ずにユン君みたいに力を貸すと思うよ？」

でもなんで？？と不思議に思うジェハに、ユンは上ずった声を上げる。

「ジェハ！
もしかしたらこの村にルイがいるかもしれない！！」

「それは本当かい！？」

ユンからの衝撃的な一言にジェハが一気に目を輝かせた。絶対に見つけ出すと覚悟を決めた段階で、彼女を広大な土地から探し出すには途方もない時間がかかると思っていたからだ。だからこそこんなに早く彼女に対する情報源をゲットできるとは思っておらずジェハは珍しく舞い上がっていた。

「ジェハ、嬉しそうだね…」

「そりゃあね！
後少しで感動の再会と考えたら……」

「…愛想つかされたんだからそんな展開あるわけねーだろ」

嬉しそうに口元を緩めて妄想に入り始めるジェハに二人の話を小耳に挟んだハクが冷たい眼差しを向けるのだった。