暗黒龍とゆかいな腹減り達
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「…セドルおじさん」
「おぉ、ルイおはよう」
「おはようございます」
高華国、火の部族領。ルイはこの農村地帯、加淡村の実態を目の当たりにした時にゾッと身体が震えた。豊かな首都との雲泥の差。痩せた土地で懸命に農作物を育てるために耕す住人。しかし痩せた土地で満足のいく量の農作物が作れるわけがなく、住人達は貧しい生活を虐げられていた。それに加えて役人たちによる重たい増税、盗賊による横行が盛んに起こっていた。
ルイが丁度来たのは、盗賊が横行している時。居ても立ってもいられずルイは盗賊を返り討ちにしたのだ。その後少しでも彼らの役に立てないものかとルイはその日からこの村にご厄介になりはじめたのだ。老人と病人が多いこの村で、ルイは様々なことを手伝ったり、賊を返り討ちにしたり、狩りにいく日々を送っていた。
「ルイが来てくれて助かってるよ
最近はいつもの子が来なくて困ってたんだよ」
「いつもの子ですか??」
「あぁ…
定期的に食べ物とか薬を持ってきてくれる子がいるんだよ」
柔らかく微笑むセドルの言葉にルイは相槌を打ちながら聞いていた。が、ある気配を察しルイは険しい表情を浮かべ森の方に鋭い視線を向けていた。
「またかい??」
「どうやらそのようだね…
ちょっと行ってくるよ」
セドルに背を向けるとルイは駆け出した。そのままルイは木々の中を躊躇することなく走り抜けていった。そして標的の気配が近づいてきたのを察するとルイはある木の枝の幹に登り弓を構えた。
標的が視界に入らなくても風が居場所を教えてくれる。ルイは風の声に耳を研ぎ澄ませながら弓を引くと口元を緩めた。
「さっさとこの村から立ち去れ」
翡翠色の瞳を細めたルイは躊躇することなく弓矢を何本も射ていく。木々の枝を通り抜けて鋭い軌道を描き弓矢は賊達の足元を的確に落ちるのだった。だが、ただの弓矢ではないそれは地面に落ちると通常の弓矢では考えられないような威力で地面に亀裂を走らせるのだった。
「な…なんだ!?」
突然の襲撃に一体何処からだと賊は警戒態勢を強める。が、遙か遠くから矢を射ているルイの存在など気付けるわけがなかった。
「うーん…
やっぱり威嚇では退散してくれないか」
毎度のパターンだが、ギガンに人を殺めないように教わってきたルイは必ず牽制の弓を射ていた。これで怖じ気ついて村から去ってくれるのが一番てっとりばやいからだ。
「…しかたない
二度とそんな真似ができないようにこてんぱんにしてやる」
早々にルイは諦めると弓を射る手を止めて、作戦を第二段階に移行する。
「チッ…
なんなんだこの弓は!?」
「ただの弓矢なのにな!!」
「まぁ弓の雨も降り止んだことだし行きますか!!」
ゲラゲラと笑いだす彼らは村へと歩みを再開しようとする。が、そんな彼らの行く手を阻むように暗器が彼らの足元に刺さった。
「……!?!?」
「悪いねぇ〜お兄さんたち…」
彼らが頭上を上げるとそこには枝の幹にぶら下がって暗器をクルクルと回すルイがいた。
「な!?なんなんだ!!お前は!!」
「僕はただの用心棒だよ」
「さっきの弓はお前か!?」
「そうそう!!
盗賊を村に入れさせるわけにもいかないから、牽制のつもりで射たんだけど全然意味なかったね」
スッと立ち上がり華麗に地面に着地するとルイはヤレヤレと肩を竦めた。
「お兄ちゃん、用心棒と言っても1人だろ??
俺らに対して1人で立ち向かう気かい??」
「何言ってるの??
君たちの相手なんてこれ一本で十分さ!!」
ニヤニヤと笑みを浮かべて数は勝っているとルイを囲みだす賊。そんな彼らにルイは爽やかな笑みを浮かべてクルクル回していた暗器を握り直すのだった。
「随分と舐めてくれるじゃないか!!」
「だって強そうに見えないから」
「ざけんな!!」
飄々としたルイの見下した態度にキレた賊達は一斉にルイに襲いかかった。そんな彼らをルイは冷たい眼差しで呆れたように見ると、先陣をきって突っ込んできた一人の振りかざした剣を軽い動作で暗器で弾き飛ばすと鳩尾に蹴りを入れ込んだ。
バタリ...
地面に意識を失い倒れる彼から直ぐに唖然としている他の連中にルイは目をやった。
「あーぁ、呆気ないね
君達はどうする??」
神経を逆なでするような青年の言葉に完全に血が上っている連中は構うものかと一斉に襲いかかる。そんな彼らを見てルイは不敵な笑みを零した。
「折角の忠告を無下にするなんて馬鹿だねぇ…
じゃ、お望み通りに」
ルイは多少の加減をしつつ風のように舞いながら1人ずつ賊を地面にノシていくのだった。