阿波の海賊
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「何真っ昼間からこんなトコ来てんのさ。」
店から出たハクは見事に目鯨を立てた茶髪の少年…ユンにお叱りを受けていた。
「お前らこそ何でここに…」
「キジャがこの辺りから緑龍の気配がするって言うから入ってみたの」
「まさかこんな所だとは…
そしてあんたがいるとは…
ヨナ、ちょっとこの男に何か言ってやって!!」
冷めた目つきでハクを見上げたユンは赤髪の少女…ヨナにもっと言ってやれとふる。ハクはユンからヨナに視線を移すとバツが悪そうに声を上げるが、ヨナはユンとハクが思っていた言葉とは真反対の言葉をハクに向けて吐き出すのだった。
「あー、誤解すんな。俺は…」
「ハク…こういう店に行きたい時はちゃんと言ってね」
「違ーう!!」
「はい、良いお言葉頂きましたー!」
たまらずヨナの発言に対してハクはツッコミを入れる。その掛け合いに対してユンは笑みを浮かべて手を叩くのだった。
そんな楽し気な茶番劇を背後から見ていたルイはゆっくりと彼らに近づいた。
「彼らかい?君が護衛しているのは?」
ハクの背後から現れた人物にヨナとユンは息を呑んだ。
「誰?この人?」
「わぁ〜!キレイな人」
驚きの表情を見せてくれた二人にルイはニッコリと笑いかけた。
「こんな可愛らしいお嬢さん方に言っていただき光栄だね」
ルイの言葉にユンはムッと顔を顰める。
「俺は美少年だから」
「あ、そうなのかい?それは失礼したね」
少年と訂正するユンに今度はルイが目を丸くした。外見は少女に見えたからだ。ルイは丁寧に頭を下げて無礼を詫びた。
「別にわかればいいよ」
「私、ヨナ!
あの、お名前は?」
「ルイと申します」
ヨナに名前を尋ねられたルイはニッコリと笑みを浮かべて名を述べた。
「俺はユン
で?雷獣とルイはどこで知り合ったの?
まさかここって言わないよね?」
「...昨日ちょっとな」
「役人を殴り飛ばした仲だよ」
冷たい眼差しを向けてくるユンに対してハクははぐらかそうとする。しかし、もう片方の空気を読まなかった人物によりハクが隠したかったことが公になってしまうのだった。
「はぁ!?なに目立つことしてんだよ!
雷獣!!」
青筋を立てるユン、それを受けるハクを横目にルイは自然にヨナの手をとり、反対の手を自分の胸に置いた。
「本来ならおもてなしして差し上げたいのですが...
忙しい身分のためここで失礼しますね」
小さく頭を下げたルイはもう用済みだと踵を返す。そんなルイにハクが慌てて声を上げるが気づかないふりをして人混みの中に姿を消すのだった。そして暫く歩いていたルイは足を止めるととある屋根の方を見上げて叫んだ。
「ジェハ!そこにいるんだろ?」
「なんだい?ずっと他人行儀してたのに?」
「だってジェハと関わるとろくな事がないからね」
ひょっこりと顔を覗かせたジェハは華麗に飛んでルイの隣に着地した。
「それそっくりそのままお返しするよ」
げんなりとするジェハが呆れた口調で言うが、ルイは右から左にその言葉を聞き流す。そして手短に要件を伝えるのだった。
「それより船までひとっ飛びしてくれない?」
「珍しいね?早く戻りたいの?」
「いち早く船長の耳に入れときたい件があってね」
「なるほど...そういうことなら」
ジェハはそう言うとルイの髪に手を伸ばした。髪を結いている藍色の紐を解くとルイの濃紺の髪が靡いた。それを器用に纏め上げてジェハは簪を挿した。
「男装はお終いってことで...」
「別に飛ぶくらいいいじゃない」
頬を膨らませたルイはジェハにそっぽ向いた。そんなルイにジェハはおどけた口調で彼女に手を伸ばした。
「ホントはそのサラシも取りたいんだけど...」
「服を剥ごうとするな!変態!!」
瞬時に危機を察したルイはジェハの手をバシッと払い除けた。
「僕は出来ればキレイな女性を抱えて飛びたいもんでね」
「ハイハイ、私に向かって砂を吐くようなセリフを言わなくていいから」
「そう言っているルイの方がタチ悪いんじゃない?」
「しょうがないでしょ?コッチの方が動きやすいんだから」
わざわざ屈んでくれているジェハの首に手を回しながらルイは小さく笑みを浮かべる。男装していたほうが狙われにくいのに加えて色々な情報を知っていそうな女性から情報を得る事ができる…この2つのメリットがあるためルイは男装して街に繰り出しているのだから。
そのルイの背と膝裏に手を回したジェハは溜息を付きながら軽々と抱え込むと、空に向かって飛び上がった。
「もう、なんでそんなに自分を犠牲にするような性格をしてるのかねぇ?」
「もちろん、皆の役に立つためだよ、ジェハ」
困ったように顔を曇らしながらジェハは腕の中に収まるルイを見つめた。そんなジェハにルイは柔らかく微笑みながら彼の肩口に自分の顔を埋める。
「で?なんで昨日と今日2日続けて慌てたように姿をくらましたの?」
「実は白龍の気配がしてね」
「四龍の気配が辿れるんだっけ?確か...」
「そうそう!
それで今白龍と青龍がガン首揃えて僕に用事があるらしいんだよ」
心底鬱陶しいと思いながらジェハは、先程感じたもう一つの気配に疑問を抱いていた。白龍と青龍以外のもう一つ、とてつもなく強く心を乱してくる気配の正体を。そんな彼の心情など知りもしないルイは溜息混じりに紡がれた言葉に顔を上げると翡翠色の瞳の奥を揺らした。
「会わないの?兄弟...なんでしょ?」
「会わないよ、当然でしょ。
伝説の四龍?守るべき主?くだらない
生まれた時から決まった
心配そうに見つめるルイにジェハは小さく笑いグッと抱く力を強め、決意を秘めた声でこう呟くのだった。
「逃げきってみせるさ、
緋龍王が現れたって僕は蹴り飛ばしてみせるよ」