阿波の夜明け
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「ふぅ…危ない危ない」
ルイは自室に着くとホッと胸を撫でおろしていた。多少のかすり傷程度ならいいが、ここまで重症だと性別がバレかねないからだ。ユンの目をかいくぐり戻ってきたルイは、手際よく止血を済ませるとホコリまみれになって汚れてしまったものをサッサと洗い流してしまおうとルイは軽くシャワーを浴びた。ルイは傷口に水がかかる度に激痛が走るがサッパリするほうが先決だったのだ。
「サッパリした~!!」
スッキリしたルイは部屋に軽快な足取りで戻った。するとそこには本来なら宴の輪の中心にいるであろう人物がいてルイは思わず目を見開いた。
「阿波の美女と戯れなくていいの?」
「ちょっと今はその気分じゃないかな?」
ルイの皮肉をジェハは軽く受け流すと、おいでと彼女を手招きする。それに素直に応じたルイはちょこんとジェハの前に背を向けて座った。ジェハは緩く口元を緩めるとルイの濃紺色の髪を綺麗に梳き始めた。
「ルイの髪はホントに綺麗だよね」
「ホント、口が上手いよね
そうやってジェハは何人の女性を落としたのかな?」
「さぁーね?
それは僕にもわかんないや」
勘くぐるルイの言葉に当然のようにジェハはとぼけた。本当は口先ではないのになと内心ではジェハは自嘲気味に笑っていた。
こんなふうに胸が張り裂け、締め付けられるくらい愛おしいと思うのはキミだけなのに…
すり寄ってくる女性には軽く言える言葉も彼女の前ではどうしても躊躇してしまう
自分の想いを軽い言葉で軽々と言い表したくない
素直になれず肝心なところではぐらかしてしまう
キミはこのことを知ったら臆病だと笑うだろうか?
今の相棒としての関係に甘んじて、この関係を壊したくないと願う僕のことを…
「ルイ??」
「なぁーに?ジェハ??」
「眠いかい??」
髪を梳いてくれるジェハの優しい手付きにルイはついウトウトしてしまっていたのだ。それに気づいたジェハが優しく語りかけた。
「ちょっとだけ眠いかな…」
ジェハの問いかけにルイは小さく頷いた。でも折角の宴に参加したい気持ちはもちろん残っており、頑張って意識だけを保っていた。そんな彼女の気持ちを汲み取ってジェハは小さく笑った。
「少しだけ寝たらいいんじゃない?」
「で…でも…」
「この状態だと、丸一日お祭り騒ぎなんだから
ちょっとくらいいいんじゃない?」
言いよどむルイにジェハは、どんちゃん騒ぎになっているであろう宴会場を思い浮かべて苦笑いを浮かべた。
甘い誘い言葉に、うーんと未だに悩むルイ。その彼女にジェハは悪巧みを閃いたのか意地悪い笑みを浮かべた。
「それとも添い寝して欲しいかい?」
その言葉にルイは大きく目を開いて驚いた。
「添い寝してくれるの??」
「お望みならば」
半信半疑で尋ねたルイの言葉に、ジェハは小さく笑って答えた。ルイはトロンとした翡翠色の眼差しをジェハに向けて柔らかく微笑む。
「1時間だけ…
お願い…」
「今日は甘えん坊さんだね」
ジェハは今すぐ襲ってしまいかねない己の本能をグッと堪えると、それを隠すように軽口を叩いてルイを抱え上げた。そのままジェハはルイをベッドに横たわらせると、自分も彼女の隣に滑り込んだ。
「え?本気!?」
この状況にルイは自分でお願いしたのをすっかり忘れて目を瞬きさせる。そんな挙動不審なルイにジェハはクスリと笑って彼女の腰に手を回した。
「嫌ならやめるけど…」
「…傍にいて」
「りょーかい」
意地悪なジェハの投げかけに対してルイはこの温もりを手放したくないとジェハの裾を掴んだ。恥ずかしそうに赤らめるルイが可愛いと思いつつ、それを口にしたらどつかれると思ったジェハは乾笑しながら頷きしっかりと彼女の身体を抱き寄せるのだった。