阿波の海賊
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「おやおや、今日は一緒に帰ってきたかい」
昨日と違い静かに降りたジェハの腕にはルイが抱えられていた。それにギガンは気づくと呆れた表情を浮かべた。そのギガンに構うことなく、ルイは濃紺の髪を靡かせてギガンに抱きついた。
「ただいま!船長!!」
「バカ娘!何日帰ってこないんだい!」
コツリと鉄拳を喰らったルイは痛みを訴えながらも嬉しそうに笑っていた。これはギガンの心配ゆえの愛情表現だとわかっているからだ。
「まぁまぁ船長、そんなに怒らなくても…」
「ジェハ、アンタも見かけたなら無理矢理にでも引っ張ってこいって言ったはずだが?」
「え?そうだっけ??」
微笑ましい光景にジェハが口を挟むが、返されるギガンの槍のような鋭利な声にジャハは愛想笑いしながらとぼけた。
「どうやら踏まれたいらしいね」
「もう踏んでるよ、船長♡」
「船長、ジェハが喜ぶことしてもしかたないでしょ」
イラッときたギガンがジェハを踏み倒す光景にルイは大きく溜息を吐いた。でも日常茶飯事の光景に、ルイは家に戻ってきた実感が湧くのだった。
「で?収穫はあったのかい?」
「もちろんですよ!船長!」
ギガンの投げかけにルイはニヤリと口角を上げた。クムジの取引の情報を得るためにルイは街をのめり歩いているのだから。
「今日も麻薬船を攻め落としましょう!」
「ルイ…目がキラキラしてるよ…」
胸を張って情報をギガンに提示するルイは真剣そうに見えて楽しげでジェハは呆れた表情を浮かべた。そんなジェハにルイは前のめりになる。
「当たり前でしょ!!
悪徳人を成敗しなくっちゃ!!」
「まぁそれは同感だね」
「でしょ!!」
二人で笑い合うジェハとルイ。だが、二人の瞳はメラメラと燃えていた。そんな彼らを見て困ったものだとギガンは顔を顰める。誰がこんな子に育て上げたのだろうと自問自答するが、数秒後に自分自身ではないかとギガンは頭を抱えるのだった。
「一先ずジェハに船の見張りを伸ばしてもらってから襲撃でいいですよね!」
「あぁ…そうだね」
ルイは簪を取りながらギガンに同意を求める。それに煙管を吹かしながら答えるギガンに対してジェハは渋い顔を浮かべた。
「また僕かい?」
「だって私、ジェハのように跳躍できないし…」
本当なら自分が行きたいのに…と拗ねた表情を浮かべるルイにギガンとジェハはヤレヤレと肩を竦めた。
「ルイはそんなことしなくいい」
「船長の言うとおりだよ
危険な場所に1人で突っ込むのは危ないしね」
キッパリとルイがする仕事でないと言い切るギガンの横で、ジェハがルイを宥めようとする。が、ルイの心情は違った。ジェハのような特越した能力がないにしても潜入くらいならルイはこなせる自信がある。しかし過保護な彼らがそれを許してくれないのだ。
危険な場にいつも行ってるのはジェハじゃない…
ルイは少しでも皆の負担を減らしたかった。そのためなら自分の身なんて惜しくも痒くもないと思っているのにと、ルイは拳を握りしめた。
「ジェハの負担を少しでも減らしたいのに…」
「…!?」
「なーんてね!!
1人で敵陣に行くジェハが相棒として心配なんですよーっと」
深刻な表情を浮かべながら発するルイの言葉にジェハは目を丸くする。その表情を見た途端、ルイは不味ったと焦り、瞬時に明るい表情に変えると軽口を叩くのだった。
「さて、武器の手入れでもしよーっと」
この場から逃げるようにルイは口実をでっち上げてジャハ達に背を向けて船室に入っていった。その後姿をジェハは呆然と見ていた。が、ようやく言葉を呑み込むと嬉しそうに頬を緩ました。
「ルイが僕のことを心配してくれている!!」
「私の耳元でギャンギャン騒ぐんじゃないよ!」
隣で嬉しそうに鼻を伸ばすジェハにギガンは怒声を飛ばす。
「だ…だって…」
「自覚したんなら、ルイを心配させないようにかすり傷一つも作らないことだね」
「わかってるよ、船長」
有無を言わせないギガンの言葉にジェハは海に視線をやりながら小さく頷くのだった。