巫女
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「ヨナ…もう泣きやんで。」
「そなたも泣いておるぞ、ユン…」
「一番泣いてんのはてめーだ、白蛇。」
クムジとの決戦から2日後、ヨナ達は名残惜しいが阿波の街に別れを告げた。だが、ヨナとユンとキジャは道中未だに目に涙を溜めていた。
「だって…ジェハやルイとも結局お別れ出来なくて…」
ヨナがポツリと嘆いた言葉。それにキジャはキョトンとする。
「ジェハ?彼は仲間になったのではないのですか?」
「…え?」
そのときシンアが無言で剣を取り出すと近くの木を切り倒したのだ。すると悲鳴と共に誰かが落ちてくる。
「わ~~~~っ」
「ジェハ!」
「…やっ、ヨナちゃん。」
なんと落ちてきたのはジェハだったのだ。その事実に驚きの声を上げるヨナに苦笑いしながらジェハは茂みに倒れたまま片手を上げて挨拶をした。
「どうして…」
「緑龍ずっと近くに、いた…」
驚きの声を上げるヨナにシンアが気配がずっとしていたことを口にした。それを耳にしながらジェハは起き上がり座り直した。
「ちょっとヒマになったんでヨナちゃんと旅するのも悪くないかなーって思ったんだけど、どうも泣きそうになりながら僕を探す君を見ていたらたまらなく興奮しちゃって、ついね。
声かける機会を逃してしまったのさっ」
「相変わらず変態だな。」
「雷獣と似たニオイ感じるよ。」
ジェハの言葉に対してハクとユンが怪訝な表情を浮かべる中、ヨナは不思議そうにジェハを見つめた。
「えっ、でも四龍の掟に縛られるの嫌だってあんなに…」
「四龍なんて関係ないよ。
今までもこれからも自分で選び進んだ道を行くだけ。
何も僕の美学に反してはいない。
今はただ君を放っておけなくてね。」
ジェハは座ったままヨナに手を差し伸ばす。その手にヨナは恐る恐る手をのばすと、ジェハがヨナの手を取り微笑んだ。
「連れてって、ヨナ。」
だが、甘い空気がそう簡単に続くわけがなく、ジェハの頭をハクの大刀が襲う。
「調子のいい事ぬかしてんじゃねぇよ。」
「そうだよ、ヨナとのふたり旅じゃないんだから
僕らにも挨拶してもらわないと。」
「その通り!
我らは礼節を重んじるもの
緑龍」
それに同調するようにユン達も抗議の声を上げた。
「それは失礼。」
ジェハは服を払いながらすっと立ち上がて、丁重に挨拶をするのだった。
「では改めて、僕の名はジェハ。
右脚に龍を宿す美しき化物だよ。以後よろしく。」
*****
「ねぇ?ジェハ、ルイは?」
一段落したところでヨナがルイの行方を尋ねる。てっきりジェハとルイはセットだと思っていたのだ。だが、ジェハは1人で現れた。一方のルイは昨日から姿を見かけていない。
「…確かに」
「タレ目と違ってしっかりしてそうだから見送りくらいしそうだもんな」
ヨナの純粋な問いにユンとハクが大きく同意するように頷く。
ジェハならまだしもルイが!?という思いが一同にあったのだ。
「あぁ…それなんだけど…」
言いづらそうにジェハが目線を泳がせる。その何か隠しているような様子にキジャがピンとしたのかグッと形相な表情を浮かべて掴みかかる。
「もしや、ルイになにかあったのか!?」
「いや、何かあったわけでないんだけど…」
「あぁ〜!!もう面倒くさい!!
サッサと説明してよ!!」
未だに躊躇するジェハに痺れを切らしたユンが額に青筋を立てるのだった。そんなユンにようやく観念したのかジェハは額に手を置いて項垂れるとボソリと嘆くのだった。
「実はね、ルイは昨日僕に何も言わずに阿波を旅立ってしまったんだよ……」
げんなりとするジェハにハクとユンが呆れた表情を浮かべる。
「つまり、愛想つかわれたのか…」
「そんなことあるわけないだろ??僕たちは13年来の仲だしね…」
「どうせジェハがしつこく迫ったんだよ」
「しつこく迫ることすらできなかったよ…」
ユンの追求にジェハは遠い目をして嘆いた。そんなジェハに一同は何も言えなくなってしまった。
暫く沈黙の状態が続く中、ジェハはいつになく真剣な面持ちを浮かべてヨナ達に向き合うとようやく本題を切り出す。
「旅に加わっていきなりで申し訳ないんだけど…
ルイを僕は探したい…
みんな…」
「…探しましょ!ルイのこと」
ジェハの先の言葉を遮るようにヨナが言い切った。躊躇なく探そうと言ってくれたことにジェハは驚きで目を見開いた。
「いいのかい??」
「もちろんよ!
それに私、ルイにもう一度会いたいし」
「まぁ別にいいんじゃねーの?」
「黄龍を探すついでにルイも探せばいいんだし」
「四龍の兄弟が悩んでいるのに手を貸さないわけがなかろう」
ヨナの言葉に賛同するように他の皆が口々に言葉をかける。彼らなりの気遣いにジェハは思わず頬を緩ますのだった。
「…ありがと、皆」
そして、緑龍を加えたヨナ達一行は旅を再開する。
黄龍とルイを探す旅を。