巫女
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「黄龍?黄龍ってあの黄龍!?」
「どうして!?どうしているの!?」
「なぜ普通に焼肉の宴に参加しているのだ!?」
ヨナ、ユン、キジャは目を輝かせ身体を乗り出してハクを押しつぶすと黄龍に近付き身を乗り出す。その一歩後ろではジェハとシンアがのぞき込む。一方で、矢継ぎ早に来る問いに対して少年はのんびりと肉を食べながら皆を見渡した。
「みんな落ち着きないなぁ。
ゼノはちゃんと座って食べてる。偉くね?
あ、ゼノって俺の名前だから。」
「なにそのグダグダな自己紹介…」
ヘラヘラと笑みを浮かべて自分の名を名乗ったゼノに、ユンがげんなりとした表情を浮かべる。
「黄龍が近くにいる気はしていたが、近すぎて逆に疑ってしまった…」
「あるよねー」
その近くでは本当にそうだったのかとキジャが顔を曇らせる。それにジェハが明るい声でノりかかり同調すると、不思議そうにゼノを見据えた。
「君は気づかなかったのかい?
僕らが近くにいること…」
「気付くとか気付かないとか、ゼノはのんびり旅してるだけだから。
他の龍とかあんまり気にしない。」
「気にしない…」
ゼノの言葉に感心したようにジェハが遠い目をした。ハクはそんな彼に下からグッと顔を近づけるとすかさずツッコむ。
「お前、なんだかんだで他の龍、気にしまくってたもんな。」
「ゼノとやら!!」
急に上がってきたハクの頭を邪魔だと言わんばかりにキジャが龍の手で鷲掴みする。キジャの爪が刺さってるハクは抗議の視線をキジャに向けるがキジャは構うことなくゼノに問いかける。
「そなたヨナ様を見て何も感じぬのか!?
ヨナ姫様だ!我々四龍の主であらせられる。」
「また、そんな大げさな…」
「姫様…主…」
ゼノはヨナを見つめるがすぐにへらっと笑った。
「何も感じない何て失礼な。娘さんは超可愛いから!ドキドキだから!」
「そんな事は知っている!!そうではなくて…」
ゼノの態度にキジャだけでなくシンア、ジェハも顔を引き攣らせた。
「まさか…あの洗礼を感じなかったのか…?」
「このボクでさえ“もう煮るなり抱くなり好きにしてっ”となったあの洗礼を…」
「どんな洗礼だよ…」
3人揃ってその時のことを思い返してゾッとしている彼らの表情を見て、ハクが怪訝な顔を浮かべる中、3人は唯一洗礼を体感していないゼノをジッと見つめるのだった。対して、ヨナはずっとどうしようかと思考を巡らしていた。
「大物なのか…よっぽど鈍感なのか…」
「でも里を出て一人で気ままに旅してるならあれかな…」
「ん?どれかな?」
不思議そうに顔を上げたゼノにヨナは向き直ると、本題を切り出した。
「仲間になってほしいってお願いは難しいかな。
私達、四龍を探して力を貸してもらってるんだけど、あなたにも…」
「いいよ。」
「…え?」
渋られるかと思いきや、まさかのオッケーの言葉に一同は唖然して言葉を失ってしまう。まさか聞き間違いだろうかと思っている彼らに念押しするようにもう一度ゼノが答える。
「いーよ、ゼノは好きに旅してるだけだから。
特に目的地とかないしヒマだし。
なによりご飯超美味かったから。食べ物の恩は大事にする趣味!」
「主義だろ」
「よろしくね。そして明日からも美味しいご飯よろしくね。」
満面の笑みを浮かべながらゼノはツッコミを入れたユンの手を握って握手をする。そんなゼノのほんわかした雰囲気に一同は困惑してしまう。
「なんという…ふらふらやってきて最速で仲間に。」
「単に飢えてたからじゃないの?」
「白蛇の最速記録を塗り替えたな。」
わなわなと身体を震わせるキジャにユンとハクが口を挟む。キジャは意地悪気にニヤリと口角を上げて事実を突きつけたハクの言葉に反応を示すと、よほど悔しかったのかヨナやハクと握手を交わしているゼノに近づいた。
「黄龍ゼノよ…
私は白龍キジャ。右手に龍の力を宿す者。
そなたも我々と共に姫様をお守りするのならばその力を示せ。」
「力?」
「そうだ。」
するとゼノはふわっと笑って答える。それに納得したようにキジャは声を漏らす。一方で、1人ニヤリと口角を上げるものがいた。
「あ、ゼノ力はあんまないけど体は丈夫!」
「ほう、やはりそうか。」
「ふーん…どのくらい丈夫なんだ?」
ハクはゼノの丈夫な身体に興味を示し、容赦なく肉を咥えたまま右手でゼノの頬を殴り飛ばした。すると普通に血を流しながらゼノは飛んでいき、プルプルと震えて目に涙を溜めてハクを見るのだった。そんなゼノの反応を見て、ハクとユンが唖然とする。
「痛いのかよ。」
「体弱いじゃん!普通の人じゃん!
あんた本当に黄龍!?」
「いやいや、その兄ちゃんおかしいから!
腕の力ハンパじゃないから!」
対抗するようにゼノが声を上げる。その言葉にジェハが口元を緩める。
「僕もよく殴られるけど、ハクの拳はクるよね!」
「なぜかいつも楽しそうだよね、ジェハ」
そんなジェハにユンは冷たい眼差しを向けた後、ゼノに近づく。
「体、特別硬いわけでもないね。肌ふにふにしてるし。」
ユンは不思議そうにゼノの腕を撫でながら分析する。
「ゼノの肌はつるすべだから。」
「あちこち汚れてるけどね。
雷獣の体のがよっぽど硬いよ。
雷獣が黄龍だったていう方が説得力あるね。」
ユンがハクに視線を向ける。それにノろうとするハク。が、ハクの言葉を遮るようにキジャが形相な顔をしてツッコミを入れた。
「今まで黙っていたが実は俺黄龍…」
「そなたが龍ならその名は邪悪な暗黒龍だっ!」
ハクはそのキジャの言葉に満更でもなさそうに笑う。それを見てキジャはゼノに掴みかかる。
「そなた悔しくないのか!!
あやつに立場が脅かされておるのだぞ。龍の誇りを思い出せ!!」
「つってもなぁー」
「そなた体の修練を怠っていたのではないか?
四龍たる者、常に主の為に己の力を磨かねばならぬぞ。」
うーんと首を傾げるゼノに対してキジャが心得を教え込もうとする。そんな興奮しているキジャをジェハは呆れた表情を浮かばせながら窘めようとする。
「こらこら。
黄龍君には黄龍君の人生がある。
自分の価値観を他人に押しつけるのは君のよくない所だよ。」
「だがっ…ようやく四龍が、古からの兄弟が集まったのだ、神話の時代から…数千年ぶりの邂逅がようやく…
伝説の龍、我らの代で叶ったのだぞ…!!
私はっ…そなたら四龍と再会出来たことっ…本当に…っ」
「あー、わかったわかった。」
キジャは目に涙を滲ませながら歓喜極まって言葉を詰まらせながら吐露した。そんな泣き出すキジャにジェハはただ呆れたように笑う。
キジャを囲むように輪を作る4人の四龍を少し遠くで眺めていたユンがボソリと呆気なかったとボヤく。
「伝説の四龍が揃った…
考えてみればすごい事なんだろうけど、あっさりしすぎて拍子抜けだよ。」
ユンの言葉に納得しつつヨナはふとゼノを見る。すると彼はとても穏やかに優しく微笑んでいたのだった。