阿波の夜明け
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宴の場を離れてヨナはある人影を求めて歩いていた。辺りに響く音色に導かれるようにヨナがたどり着いた場所には、優雅に二胡を弾くジェハと彼の背に安心しきって己の背を預けて空を見上げるルイの姿があった。
二人の信頼関係が垣間見える光景にヨナは頬を緩めると彼らにそっと近づくのだった。
「素敵な音色ね」
「弾いてみる?」
ヨナの声に二人っきりの時間を堪能していたジェハとルイが顔を上げる。そしてジェハは二胡の手を止め、それをヨナの前に差し出した。目の前に差し出された二胡をゆっくりと受け取るとヨナは緊張した顔つきで引き始める。すると二胡から出たのはグギギーっと酷い音だった。その音に3人は豆鉄砲を喰らった表情を浮かべる。が、その後間を開けるように咳払いをしたジェハとルイは軽快に笑い始めるのだった。
「海賊の方が向いてるみたいだね」
「ジェハ、そんなこと言っちゃ駄目だろ?」
ジェハの軽口を指摘するとルイはヨナの背後に回った。
「ほらヨナ、力抜いて」
「こう??」
「そうそう」
力んでいるヨナに力を抜くように促したルイは、ヨナの腕を軽く掴んで二胡を弾き始めるのだった。
「わぁ!!」
「ヨナも慣れればできるようになるよ」
嬉しそうに手元から出る二胡にヨナは目を輝かした。そんなヨナにルイは小さく微笑んだ。
「…ホントに!?」
「いやぁ、流石にそれはやってみないとわかんないんじゃない?」
「ルイと違って、ジェハは本当に意地悪なんだから!
私だって琴と舞なら少しは出来るんだから!」
「へぇ!?是非とも聞いてみたいなぁ〜」
「琴と舞ねぇ…」
ムスッと言い返すヨナの口から出た言葉に、ルイは感嘆の声を漏らし、ジェハは疑いかかった眼差しを向けた。
「まだ笑うの?ジェハ」
「ああ、いや…君は女の子なんだって思ってさ。
君はこんなにも小さくて危なっかしくて力がなくて面倒だ。」
ジェハは頬杖をついて空を見上げながら嘆いた。
「…悪口?」
「さらに僕をこんな所まで探しに来て迷惑極まりない」
「安心して、もうジェハを無理に連れて行ったりしないから!
それじゃ…」
ため息混じりに紡がれた言葉にムッとしたヨナが立ち上がり背を向けるが、ジェハは彼女の手を握り引き止めた。その行為にヨナは怪訝な表情を浮かべた。
「…ジェハってよくわからない」
「いたって素直な人間だよ、僕は。
宴の夜は可愛い子といたいからね。」
ルイはジェハの言葉にクスッと笑った。
「じゃ、今宵の女神のために一曲弾かせていただけますか?ヨナ」
そう言うとルイは持っていた二胡を構える。それに習うようにジェハも二胡を構えた。
ヨナのためにと聞かせる二人の二胡の音色は満月が浮かぶ夜空に静かに響き渡るのだった。
その後自然と宴は解散となり、酒に酔った男達は倒れるようにあちこちに散って眠った。ヨナもスヤスヤと眠ってしまい、気を利かせてルイが寝具を持ってきて彼女にそっとかけた。
一方、船を停めている岩場では6次会が行われていた。
「やめだやめだ、ジェハ。その曲は眠くならぁ…」
二胡が奏でる音色にロウエンが声を上げて音色を止めさせた。ゆったりとした音色は今の俺らには毒だと言わんばかりに。
「もっと景気のいいヤツにしろぃ…」
「だったら寝れば?昨日は徹夜だったんだし。
町の連中はもうほとんど寝てるよ。」
二胡を弾く手を止めたジェハは呆れた口調で言い捨てる。が、それに既に顔を真っ赤にしてふらふらとトクとリュウが声を上げる。
「寝るだと!!いやっ、俺はまだ飲み足りん!」
「俺もだ、飲むぞっ」
「子守唄~」
ジェハはそれを受け流すと優雅に二胡を弾く。その綺麗な音色に一行はフラッと意識が遠ざかりそうになるのを必死に堪えた。
「よせ、アホっ!寝ちまうだろっ!」
マヤが掴みかかるようにジェハに詰め寄る。そんなマヤにジェハは再び二胡を弾く手を止めると呆れた眼差しを向けた。
「だから寝れば?」
「う~、くそ!寝ないぞ、寝るもんかーっ!!」
マヤはそう叫びながら拳を地面に叩きつけるが、限界が来たらしく体の力が抜けて地面に伏せてしまう。
「酔っぱらいの面倒はみないよ、マヤ」
「寝て…たまるか…っ
寝たらもうっ…夢から醒めちまう…
今夜が…俺ら海賊の…最後の宴だから…っ」
「…バカだな、海賊がなくなったって皆阿波で漁師やるんだろ?
何も変わりは…」
淡々と言うジェハ。だが、その言葉を遮るように感情を高ぶらせたマヤが目に涙を溜めながら叫んだ。
「お前はっ…行っちまうんだろ…!?嬢ちゃん達と!!ルイを連れてよ!!
阿波からっ…出ていっちまうんだろ!?」
そのマヤの言葉にジェハはあえて沈黙を貫いた。それが彼の答えだと感づいたマヤ達は俯いてしまった。
「子守唄~」
ジェハはこの空気を紛らわすように二胡を奏で彼らを眠らせた。
「ジェ…ハ…殺ス…」
海賊達は泣きながら眠りにつく。彼らは彼らなりにジェハとルイのことを大切に想っており、別れの時が迫っているのが寂しかったのだ。だからこそ最後まで惜しむようにどんちゃん騒ぎをしていたのだ。そんな彼らの気持ちなどとっくのとうにお見通しのジェハは彼らに背中を向けると二胡を置いて優しく微笑むのだった。
「…あーあ、皆泣きながら寝ちゃって。
うっとうしいな。
本当…僕は君達が…大好きだよ。」
本人達の前では面と向かって言えない素直な気持ちを切なげに紡いだジェハは今度は船の方へ向かうのだった。
二人の信頼関係が垣間見える光景にヨナは頬を緩めると彼らにそっと近づくのだった。
「素敵な音色ね」
「弾いてみる?」
ヨナの声に二人っきりの時間を堪能していたジェハとルイが顔を上げる。そしてジェハは二胡の手を止め、それをヨナの前に差し出した。目の前に差し出された二胡をゆっくりと受け取るとヨナは緊張した顔つきで引き始める。すると二胡から出たのはグギギーっと酷い音だった。その音に3人は豆鉄砲を喰らった表情を浮かべる。が、その後間を開けるように咳払いをしたジェハとルイは軽快に笑い始めるのだった。
「海賊の方が向いてるみたいだね」
「ジェハ、そんなこと言っちゃ駄目だろ?」
ジェハの軽口を指摘するとルイはヨナの背後に回った。
「ほらヨナ、力抜いて」
「こう??」
「そうそう」
力んでいるヨナに力を抜くように促したルイは、ヨナの腕を軽く掴んで二胡を弾き始めるのだった。
「わぁ!!」
「ヨナも慣れればできるようになるよ」
嬉しそうに手元から出る二胡にヨナは目を輝かした。そんなヨナにルイは小さく微笑んだ。
「…ホントに!?」
「いやぁ、流石にそれはやってみないとわかんないんじゃない?」
「ルイと違って、ジェハは本当に意地悪なんだから!
私だって琴と舞なら少しは出来るんだから!」
「へぇ!?是非とも聞いてみたいなぁ〜」
「琴と舞ねぇ…」
ムスッと言い返すヨナの口から出た言葉に、ルイは感嘆の声を漏らし、ジェハは疑いかかった眼差しを向けた。
「まだ笑うの?ジェハ」
「ああ、いや…君は女の子なんだって思ってさ。
君はこんなにも小さくて危なっかしくて力がなくて面倒だ。」
ジェハは頬杖をついて空を見上げながら嘆いた。
「…悪口?」
「さらに僕をこんな所まで探しに来て迷惑極まりない」
「安心して、もうジェハを無理に連れて行ったりしないから!
それじゃ…」
ため息混じりに紡がれた言葉にムッとしたヨナが立ち上がり背を向けるが、ジェハは彼女の手を握り引き止めた。その行為にヨナは怪訝な表情を浮かべた。
「…ジェハってよくわからない」
「いたって素直な人間だよ、僕は。
宴の夜は可愛い子といたいからね。」
ルイはジェハの言葉にクスッと笑った。
「じゃ、今宵の女神のために一曲弾かせていただけますか?ヨナ」
そう言うとルイは持っていた二胡を構える。それに習うようにジェハも二胡を構えた。
ヨナのためにと聞かせる二人の二胡の音色は満月が浮かぶ夜空に静かに響き渡るのだった。
その後自然と宴は解散となり、酒に酔った男達は倒れるようにあちこちに散って眠った。ヨナもスヤスヤと眠ってしまい、気を利かせてルイが寝具を持ってきて彼女にそっとかけた。
一方、船を停めている岩場では6次会が行われていた。
「やめだやめだ、ジェハ。その曲は眠くならぁ…」
二胡が奏でる音色にロウエンが声を上げて音色を止めさせた。ゆったりとした音色は今の俺らには毒だと言わんばかりに。
「もっと景気のいいヤツにしろぃ…」
「だったら寝れば?昨日は徹夜だったんだし。
町の連中はもうほとんど寝てるよ。」
二胡を弾く手を止めたジェハは呆れた口調で言い捨てる。が、それに既に顔を真っ赤にしてふらふらとトクとリュウが声を上げる。
「寝るだと!!いやっ、俺はまだ飲み足りん!」
「俺もだ、飲むぞっ」
「子守唄~」
ジェハはそれを受け流すと優雅に二胡を弾く。その綺麗な音色に一行はフラッと意識が遠ざかりそうになるのを必死に堪えた。
「よせ、アホっ!寝ちまうだろっ!」
マヤが掴みかかるようにジェハに詰め寄る。そんなマヤにジェハは再び二胡を弾く手を止めると呆れた眼差しを向けた。
「だから寝れば?」
「う~、くそ!寝ないぞ、寝るもんかーっ!!」
マヤはそう叫びながら拳を地面に叩きつけるが、限界が来たらしく体の力が抜けて地面に伏せてしまう。
「酔っぱらいの面倒はみないよ、マヤ」
「寝て…たまるか…っ
寝たらもうっ…夢から醒めちまう…
今夜が…俺ら海賊の…最後の宴だから…っ」
「…バカだな、海賊がなくなったって皆阿波で漁師やるんだろ?
何も変わりは…」
淡々と言うジェハ。だが、その言葉を遮るように感情を高ぶらせたマヤが目に涙を溜めながら叫んだ。
「お前はっ…行っちまうんだろ…!?嬢ちゃん達と!!ルイを連れてよ!!
阿波からっ…出ていっちまうんだろ!?」
そのマヤの言葉にジェハはあえて沈黙を貫いた。それが彼の答えだと感づいたマヤ達は俯いてしまった。
「子守唄~」
ジェハはこの空気を紛らわすように二胡を奏で彼らを眠らせた。
「ジェ…ハ…殺ス…」
海賊達は泣きながら眠りにつく。彼らは彼らなりにジェハとルイのことを大切に想っており、別れの時が迫っているのが寂しかったのだ。だからこそ最後まで惜しむようにどんちゃん騒ぎをしていたのだ。そんな彼らの気持ちなどとっくのとうにお見通しのジェハは彼らに背中を向けると二胡を置いて優しく微笑むのだった。
「…あーあ、皆泣きながら寝ちゃって。
うっとうしいな。
本当…僕は君達が…大好きだよ。」
本人達の前では面と向かって言えない素直な気持ちを切なげに紡いだジェハは今度は船の方へ向かうのだった。