阿波の海賊
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「うーん…
動きやすくて女性らしい服装……」
自室に戻ったルイは数少ない服装とにらめっこしていた。元々普段から男装しているルイは女性用の服装をもっていないのだ。
「やっぱり…ユンに頼んで……」
同じく女装するユンに頼んで調達してもらうしかないかないか…
ルイは小さくため息を吐くと、お願いしに行こうと踵を返した。そんなルイの視界に映ったのは、いつの間に自室に入っていたのか無表情で立ち尽くすジェハだった。
「……ジェハ??」
「本気で行く気かい??」
ゆっくりと近づいてくるジェハの様子にルイは怖じ気ついて思わず後ずさりしてしまった。それくらい今の彼からは無言の圧力が醸し出されていた。ジェハはゆったりとした足取りでルイを壁際に追い詰めると逃さすものかと両手のひらを壁につけた。
「……行くよ
だから邪魔しないで」
ギラギラとする桔梗色の瞳から逸しては駄目だとルイはジェハを見上げた。彼が心配してくれているのはわかる。自分の為を思って引き留めようとしてくれるのは重々承知だ。でもここで行かなかったら駄目だ。
「で…でも!!
ルイは一回…」
異を認めない…ルイの決心が籠もった言葉にジェハは困ったように顔を歪めた。脳裏に蘇る数年前の記憶だった。
もうあんな思いはさせたくないのに……
泣きじゃくる顔を見たくないのに……
どうすれば彼女を引き止められるのだろう…
「もうそれは昔のことだよ…」
ルイはそっと今にも泣き出しそうなジェハの肩に手を置いた。
「大丈夫!!あの頃より逞しくなったから」
ルイは安心させようとジェハに笑いかけた。確かにあの頃の記憶はルイにとってはトラウマだ。たまたま男装せずに街に繰り出したところで人攫いにあったのだから。目の前の彼が気づいて助けに来なかったら今頃どうなっていたか…想像しただけで足がすくんでしまう。それでもこのトラウマからルイは抜け出したいのだ。いつまでも仲間に…特にジェハに迷惑をかけたくないのだ。
「お願い…行かせて…ジェハ…」
「はぁ…全く君って子は…」
ジェハは大きく溜息を吐くと目の前の彼女の身体を引き寄せて強く抱きしめた。
「ホントに僕の言うことを聞かない頑固者だね…」
「…!?」
「僕としては褒め言葉なんだけど…」
力なくジェハは笑うとルイの肩に自分の顔を埋めた。
「どうしたら君を僕の元に縛り付けておくことができるんだろうね…
風のようにふわふわしていていつか僕の傍からいなくなりそうで怖いよ…」
「自由を愛するジェハからそんな束縛発言がでるとはね…」
絞り出すように出されたジェハの言葉にルイは目を丸くして驚いた。普段だったら珍しい彼の表情を是非とも拝んでおきたいのだがそれは今の体勢からでは無理だった。
風か…
それはジェハにこそぴったりの言葉だと思うんだけどな…
ルイは寂しそうに表情を歪ました。右足に宿る龍の力で彼は何処にだっていけるのだ。大空に飛び上がって。それは誰にも止めることはできないのだ。
「じゃあさ…これ預かっててくれない?」
本当ならこういうものは渡したくない。でも、これで彼が安心してくれるならば…とジェハに離れるように背を小さく叩いて合図して彼の腕の中から開放されたルイは自分の首元に手をやった。
「なんだい?それは??」
「私がずっと肌見放さずにもっているペンダントだよ」
ルイはペンダントを取り出すと不思議そうに見つめるジェハの手に握らせた。
「こんなの持っていたなんて、知らなかったよ…」
「アハハ…滅多に取り出さないからね…」
そう言うとルイは愛想笑いを浮かべた。いつもペンダントをしているが露出度が高い服装をしないため誰にもこのペンダントは認知されていないのだ。だが逆にペンダントに目をつけられて誰かに追求されてもルイは説明することができないからそれで良かったとも思っていた。なぜならこのペンダントがどのような意味合いを持っているのか?いつから持っているのか?、ルイ自身がわからないからだ。
「あ、失くしちゃ駄目だからね」
「そんなに僕信用ない?」
「ジェハは危なっかしいから!」
思い出したようにルイはジェハに念押しした。万が一失くされたら困るからだ。そのルイの言葉にジェハは呆れた表情を浮かべながら受け取ったペンダントを自身の首にかけた。
「僕からしたらルイのほうが危なかっしいんだからね」
困ったような表情を浮かばせるジェハの言葉に、ルイはなにかしたかとピンとこずに首を傾げた。そんな彼女の無自覚さにジェハは小さくため息を吐いた。
「絶対、僕のところに帰ってくるんだよ
僕の背中を預けられるのはルイだけなんだからね」
本当はそんな危険な場所に送り出したくない。いつでもすぐに駆けつけられるように目の届く場所にいて欲しい。でも、彼女はそれを望まない。クムジの悪徳を心底根嫌いしてきた彼女は、作戦が成功するならばどんな役でも買って出るような馬鹿なのだがら、どんな言葉をかけても彼女の決心は揺らぐことはないのだ。
だったら自分が出来ることは無事にルイが戻ってきてくれるの祈るだけだ。
「わかってるよ、相棒…
作戦成功させて戻ってくるよ」
その祈りに答えるようにルイは決意の籠った声で答えるのだった。