爆発する感情
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「矢を放てぇ!!!」
2人の一声を皮切りに南戎の船へ向けてユンの指示の下、火矢が放たれる。それでようやくカザックらは今現在何者かによって襲撃されていることを呑み込んだのだった。
「敵襲!!敵襲だッ!!」
「麻薬人形を出せェェェ」
「いやぁ…懐かしい光景だね」
「そうだね
少し前まではこれが僕らの日常だったからね」
一気に騒々しくなる甲板。その甲板では、ジェハとルイが懐かしそうに目を細めて眺めていた。その傍では下ろした縄を掴んだ者達を引っ張り上げるキジャがいた。
「お主ら!少しは手伝え!」
「いやぁ…だってさ
キジャ1人で十分だろ?」
「そうそう
逆に手伝ったら邪魔しちゃうよ」
「…そうか??」
目を点にした2人が漏らした言葉にキジャはキョトンとしながらも続々と人を引っ張り上げていく。その光景からキジャ1人で十分なのは明らかだった。
キジャが続々と人を引き上げていくうちに甲板にやけにガタイのいい者が続々と現れていく。無表情で虚ろな眼差し。彼らが麻薬人形なのは見るからにわかった。
それを見てジェハとルイは臨戦態勢に入る。
「キジャ君、この船は任せた
僕らは隣の船を沈める」
「わかった」
そしてすかさず背に乗ってきたルイを抱えてジェハは隣船へと跳び上がった。船の甲板が確認できた途端、すかさずジェハとルイは暗器を投げていく。空から降り注ぐ黒い暗器の雨。
それに悲鳴を上げる彼らを無情に見下ろしながら、ルイはジェハの背から飛び降りた。そして、音を立てずに綺麗に着地をしたルイは懐から短剣を取り出した。
「…さて、ひと暴れしますか」
短剣を構えニヤリと口角を上げたルイは、風の如く目に止まらぬ駆け抜けて眼の前の敵を斬り捨てていく。
「…ぎゃぁぁぁ!!」
直線上にいた者達は、一瞬で血飛沫を噴き上げて倒れ込む。その線上の先で唯一立っていたルイは血で塗れた剣を一振りして垂れ落ちる血を振り落とした。
そんな彼女を横目で捉えたジェハは口笛を吹いた。
「…いい剣さばきだ
ゾクってくるね」
「無駄口叩いている暇があるなら手足を動かしなよ」
「ちゃんと仕事してるからいいだろ?」
ルイの言葉を受け流しながらジェハは背後を襲ってきた男の剣を身を屈めて交わすと右脚で蹴り倒した。そんな彼の言葉にルイはため息を漏らす。
「その余裕が仇にならないといいけど…」
「仇になっても僕の背はルイが守ってくれるんだろ?」
独り言のように呟いたルイの背後に跳び下りたジェハは前を見ながら口角を上げる。そんな彼をチラッと確認したルイは視線を前に戻す。
「遊んでいる相棒の背を守る筋合いはないかな」
「えぇ〜そんなぁ…」
互いに軽口を叩き合いながら2人は迫りかかってくる敵をなぎ倒していく。
「ほら?隙だらけ」
「そういうルイの背も隙だらけだよね」
悪態を付きながらも互いの死角をカバーしあいながら背を合わした戦う2人を取り囲む敵を地に伏せていく。その2人の長年培って出来上がったコンビネーションは互いを信頼しあってるからこそできるもの。無駄に口を動かしながらも一向に隙を見せずに致命傷を与えていく。味方が次々に倒れていくにもかかわらず、傷一つつけられないこの状況に彼らは底知れない恐怖を覚えた。
バンッ!!
戦闘を繰り広げる最中大きな爆発音が響き渡る。その音にビクッと身体を震わして動きを止める彼らをなぎ倒した2人は海の下の船底を見下ろして口元を緩めた。
「いい仕事っぷり」
「海女ちゃん達お見事」
その爆発は乗船した海女達の仕業。ユンが即席で作成した爆弾を海女達が船底に次々と置いていっていたのだ。
「ジェハも見習ったら?」
「ちょっとそれ言う相手が違うんじゃない?」
ジト目を向けられたジェハは軽く肩を竦めるとある方向に目をやった。その目線の先が気になりルイは追う形で視線をやる。すると、そこには動きをピタッと止めているハクがいた。それを視界に捉えたルイは呆れた表情を見せた。
「そうだね
言う相手が違かったね」
嘆くように言葉を吐き出したルイは、隣船で上の空のハクの名を呼んだ。
「ハク!」
「ぼーっとしてないでこっち手伝ってくれないかな?」
「ああ」
ルイの声に振り返ったハクにジェハが言葉を掛ける。それに小さく頷いたハクは表情を変えることなく縄を掴んで飛び移った。そして、何か雑念を振り払うように大刀を無我夢中で振り回し始めた。
水の部族兵から聞き出した言葉が脳裏から離れない。
”雷獣”
自分をそう表す相手は限られるのだ。
まさか?!?!
リリの用心棒の正体として、突如浮かび上がった1人の青年を、ハクは脳裏から掻き消すように目の前の敵をなぎ倒していった。