爆発する感情
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「…リリ様、この町に大富豪のお知り合いはいます?」
「大富豪…?」
「その方達に船を何隻か貸して貰うんです
出来ますか?」
「…やってみる」
リリが大きく頷いたのを確認するとスウォンは頭に思い描いた構図を実現させるためにもう一手欲しいと言葉を漏らす。
「あとはこの町の漁師さんに話をつけたいですね」
「まさかあの団体さんに船を出して真っ向勝負する気かい?」
「いいえ
でも海に出なければお引き取り下さいって言う事も出来ませんし」
「お引き取り下さい、ねぇ…」
そのスウォンの言葉にジェハが口を開いた。その彼の投げかけに対してスウォンは淡々と表情を少しも変えずに返答した。その指示慣れした簡潔な的確な指示にジェハは勘くぐる眼差しをスウォンに向けた。
さっきのヨナの尋常でない様子と垣間見られたスウォンの本性の姿から、ジェハの脳裏の中で増々ルイの勘に信憑性が高くなっていっていたのだ。
「じゃあ、そっちの交渉は僕たちがやりましょう」
だんまりとしてしまったジェハに変わり、ルイが声を上げた。その声にジェハは視線を和らげるとスウォンの指示に乗った。
「そうだね
漁師さんへは僕らが話をつけてくるよ」
「あ、ではもう一つお願いしたい事が…」
「何だい?」
「海女さんにも協力を仰いでいただけますか?」
「「…海女さん!?」」
「えぇ…
気づかれずことなく船を沈めるにはもってこいの方々だと思いませんか?」
驚く二人を横目にスウォンは作戦を伝えていく。ニコリ微笑むスウォンはその表情と裏腹に関わらず物騒なことを淡々と述べていく。だが、その指示は無駄がなく的確。こんな作戦を瞬時に考え付いたスウォンに対して二人は内心舌を巻いて驚いた。そしてそれが最善だと理解した二人は素直に了解の意思を伝えるのだった。
対して3人が話し合っている最中、ユンは神妙な面持ちを浮かべているヨナを呼んだ。
「ヨナ、行こう
…ヨナ?」
「ユン、私リリと一緒にいる
ユン達は漁師達に交渉に行って」
「では私は姫様にお供します」
だが、ユンの言葉にヨナは頷くことなくリリと行動すると言い出した。その言葉にキジャが同行を申し出た。それに対してヨナは首を横に振った。
「キジャの力は向こうで必要になるわ
キジャも行って」
「いけません、それは…」
「どーしたんだい?」
「ほら、早く行くよ君達」
そこに話を終えたルイとジェハが合流した。そんな彼らにキジャは経緯を説明した。
「…なるほどね」
「確かに一戦交えるからにはキジャ君は重要な戦力だね」
一先ず話を理解した二人は苦笑いを浮かべた。ヨナの言っていることは御尤もだ。だが、今の彼女を”彼”と同伴させてよいものなのだろうか…。悩ましい案件に二人が頭を悩ませる中、満面の笑みを浮かべたゼノがヨナに抱きついた。
「娘さんにはゼノがついてるから!」
「そなたが…?」
「おー、娘さんはゼノが命懸けで守るし
何かあったら念を飛ばすし」
「しかし…」
それでも食い下がる気配がないキジャにゼノは迷いがない真っ直ぐな眼差しで言い切った。
「ゼノが命懸けっつったら娘さんに危ない事は絶対ないから
黄龍の名にかけて」
「…そなたを信じるぞ」
そのゼノの表情に何か感じ取ったのかキジャは引き下がった。そして、悩んでいたジェハ達もゼノにヨナを任せることに決めた。
「…ヨナ」
「大丈夫よ
やるべきことは見失ってないわ」
「うん…それならいい
海のことは任せて」
念を押そうとしたルイにヨナは小さく笑いかける。その返答に対してルイは小さく頷く。が、彼女の笑みはどこかぎこちなかった。仕方ないか…と思いながらも彼女のストッパー役を買ってでたゼノにルイは視線を向ける。その視線に気づいたのかゼノは真剣な眼差しで小さく頷いた。それを確認したルイは踵を返し、ヨナとゼノを残し海へ続く道へと駆け出すのだった。