爆発する感情
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「娘さ~~ん!」
お互い黙りこくった状態が続く中、ヨナ達の後方から叫びながら駆け寄ってくる黄色の影がいた。その声に一同は走ってきたゼノの方を振り返った。
「…ゼノ」
「ゼノ
あれっ、雷獣とシンアは?」
ゼノだけしか来なかったことに悪い予感が的中したと内心で頭を抱え込むルイを他所にユンは一緒にいた二人の姿が見えないと不思議そうに尋ねた。それにゼノは他人事のようにあっけからんと答える。
「たぶん大変」
「たぶんとは何だ?」
「海に…」
ゼノの言葉にキジャが怪訝な眼差しを向ける。それに対して詳しく状況を説明しようと口を開こうとしたゼノはスウォンの姿を捉える。スウォンを識別したゼノは驚きで大きく目を見開いた。
「海がどうしたの?」
「あ、そだそだ」
突然固まったゼノに早く先が知りたいユンが促す。それに時間が動き出したかのようにハッと正気に戻ったゼノはスウォンからユン達に視線を戻した。が、ユンの問いに答えたのは知らせに来たゼノでなく険しい面持ちであるルイだった。
「……海の向こうから沢山の船が来てるんじゃない?」
「その通り!」
「えぇ!?どこの船!?」
「そこまではわからん
兄ちゃん達はヒヨウが出て来るかもしれないから見張りー」
やっぱりわかっていたかとニコニコ笑うゼノを他所にユンが驚きの声を上げるが、流石にそこまではわからんとゼノは両手を後頭部に回して答えた。
「ヒヨウの取り引き相手か?」
「恐らくそうだろうね…」
「やっぱりルイの予感は当たっちゃったね」
ゼノの知らせに一同の表情は険しくなる。その中、現状を知りたいヨナが水の部族出身のリリを呼ぶ。
「リリ!この近くに海が見える高台ある?」
「えぇ」
「案内して」
ヨナの気迫に押されるがままにリリは見晴らしの良い高台へ駆け出し、ヨナはその後ろ姿を追った。そんな彼女の後姿をスウォンはジッと見つめていたのだった。
*****
リリに連れられ高台に到着した一行は水平線の彼方からゆっくりと大きくなっていく船のシルエットを視界に捉えた。
「遠くてよく見えんがあれは…」
「間違いなく南戒の方角からの船だね」
「ちょっといくらなんでも多すぎない?」
「取り引きの商船にしては数が多いよね」
「団体で観光かなー?」
「戦でも起こす気か?」
方角は南戒。ヒヨウの取引相手の国だ。ヒヨウとの取引が目的だとしても船の数が多すぎる。この尋常でない船の接近は戦を起こそうという意思が垣間見えた。
さて、どうしたものか…
そう一同が思う中、静寂を搔き消すように鋭い眼差しで海を眺めていた者が口を開いた。
「困りますね
将軍や王に予告もなしにあんな団体さんを一気に連れて来るなんて…
こっちはヒヨウさんで忙しいのに…
帰ってもらいましょうか」
それはスウォンだった。真っ直ぐ視線を海に向けたまま淡々と言いのけた。そのあまりにも呆気なく言うものだから一同は意表を突かれてポカンとしてして思わずスウォンを見てしまった。だが、彼の言っていることは御尤もだと一部を除いて正気を取り戻した。
「「…そだね、帰ってもらおう」」
「ヒヨウさんはそのうち出て来るでしょ」
「近隣住民も迷惑であろう」
呆気なく同意を示す彼ら。そんな彼らに対して唯一リリが素っ頓狂の声を上げた。
「えっちょっと!
待って
どうやって?あんなにたくさんの船を…」
「そうですねぇ…」
リリの言っていることは御尤も。はてどうしたものかと、掴みかかるリリの気迫に押されスウォンは思考を巡らせ始めた。その中で、ヨナがリリに振り返り柔らかく微笑んだ。
「リリ、大丈夫よ
私達が何とかするわ
リリは安全な所で待っていて」
「いっ嫌よ!!
わ、私だって闘う為にここに来たんだから。」
だが、ヨナの言葉をリリは拒絶した。その彼女の叫び声に一同は驚き目を見開いた。
「私は何の力もないかもしれないけど…
水の部族の地は私の大切な場所よ…!
一緒に闘わせてよ…!」
「リリ…」
怖い…
でもそれ以上に水の部族長の娘として…
水の部族の民を護りたい
リリは声を震わしながらも思いの丈を叫んだ。
そんなリリの肩にスウォンはそっと手を置いた。そして見上げた彼女に彼は優しく微笑んだ。
「我々の中で一番水の部族を救える力を持っているのはリリ様ですよ」
「えっ…」
「微力ながら私もお手伝いします」
「リリから離れて
あなたは何を考えているの?」
そんな彼をヨナは鋭い眼差しで睨みつけた。その彼女の放つ殺気にスウォンとヨナの関連性を知らない者達の表情には動揺が走った。
「…ヨナ」
その中、顔色を変えなかったのはスウォンの存在に勘付いたルイと彼女から可能性を聞かされていたジェハだった。黙って成り行きを見守っていたルイは殺気を更に鋭くさせるヨナの肩に手をそっと置いて彼女の名を呼んだ。その手の温もりにヨナは一瞬、殺気を収めた。
「ヨナ、落ち着いて
”彼”とは今回の目的が合致している
味方の数は多い方に越したことはない」
落ち着けと優しく諭すように語りかけたルイは、同意を求めるようにスウォンに視線を上げた。そのルイの取り繕った笑みに対してスウォンは微笑み返した。
「えぇ…ルイさんの言う通りですね
私の考えている事なんて今回においてはここにいる皆さんとそう変わりませんよ?」
そう言うとスウォンは早速行動を始めるのだった。