狙われた赤髪の少女
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「いない…何て素早い人達なんだろう」
「
一瞬で姿を消した彼らに驚くウォンことスウォンに、成り行きを見守っていたジュドが近寄った。
「聞きたい事あったのに残念です」
「ウォン…何があったの?」
ガクッと肩を落とし落胆するスウォン。そんな彼の耳にリリの声が入る。その声に振り返ったスウォンは、扉から顔を覗かせたリリに柔らかく微笑むのだった。
「この宿に
「ええっ!?」
「でも宿自体はヒヨウの息がかかったものではないみたいです」
驚くリリに淡々とスウォンは簡単に説明した。それを呑み込んだリリは恐る恐る尋ねる。
「誰か…
他に人がいなかった?」
「いましたよ
そう言うと思い出すかのようにスウォンは遠い目をした。
「1人は珍しい緑の髪で何だか華やかなかっこ良い人で…
もう一人は綺麗な濃紺の髪を持つ妙に勘の鋭い人でした」
一体彼女は何者なのだろうか?
ふわりと風のように掴みどころがない
それなのに時折、見透かしたように勘くぐるような眼差しを向けてくる
その彼女が纏う不思議なオーラに惹かれてしまう
「そ、その緑の髪の人…長身で黒い戒帝国の服を着てなかった?」
リリの言葉に思考を戻したスウォンはリリを見て甘く微笑んだ。
「えぇ、着てました」
「あっ、あと…
濃紺の髪の人、薄紫色の紐で髪を結いていなかった?」
「えぇ、身に着けてましたよ」
あれか!!
確信したリリの頭の中ではジェハとルイの姿が浮かび上がった。その彼女のハッとした表情に気づいたスウォンが不思議そうに尋ねた。
「お知り合いですか?」
「たぶんそいつらが私の探してる旅芸人よ」
「なんだ、そうでしたか
すれ違ってしまいましたねぇ」
悔し気に告げたリリの言葉に、スウォンは残念そうに肩を竦めてみせた。だが、全く情報がないわけではないと、地団駄踏むリリにスウォンは笑いかけた。
「大丈夫、手がかりはありますよ」
「えっ」
「彼らが向かう場所は…」
三番地の
スウォンが発したそのキーワードは吹きこんだ風に溶け込んでいくのだった。
*****
「「ただいま~」」
「おっ?
危なっかしいコンビが戻ってきた」
「危なっかしいコンビ??」
入ってきた二人を見た途端のハクの一声。その一声にルイとジェハは眉を顰めた。
「…ハク
僕も含めて一括りにしないでくれないかい?」
「無理だろ」
「ジェハ、諦めろ
あの一件でお主が危なっかしいことは周知されている」
バッサリと切り捨てたハクに続くようにキジャが言葉を畳みかけた。その二人の言葉がグサグサと胸に突き刺さったジェハはガクリと肩を落とした。
「君達、わざと
僕の傷口を抉ってるでしょ…」
「ハイハイ
その話はまた今度」
このままだとジェハの精神がズタボロになってしまうと面倒くさそうにユンが助け舟を出し、話を切り上げさせた。そして、2人に報告するように促すのだった。
「で?なんかわかった?」
「あそこの主人は
ある場所で買っていたらしい」
「三番地にある
2人が仕入れてきた情報に、ヨナが復唱するようにジェハの口から発せられた言葉を声に出す。
「三番地の
「そう
そこがヒヨウの居場所ってわけじゃないだろうけど、
調査してみる価値はあるだろ」
「何も知らない人に売りつけている胡散臭い店だ
けど、上手くいけばヒヨウの居場所がわかるかもしれない…」
「そうね」
2人の言葉にヨナは小さく頷いた。
明日、三番地の店「
別々の場所でヨナとリリは決意を固めるのだった。
*****
「で?彼とはいつ会ったんだい?」
夜が更けた時刻、ひっそりと部屋を抜け出した2人は宿の屋根の上で今回の一番の収穫である酒を開けて晩酌を楽しんでいた。その最中、頃合いを見計らっていたジェハが抱いていた疑問を投げかけた。
「阿波を去るときにちょっとね…」
ジェハの問いにはぐらかすことなくルイはお猪口を傾けてグビッと酒を飲み干して答えた。
「…盛られた僕が夢の中にいたときね」
「まだ根に持ってるの?」
「とーぜんだろ?
勝手に何も言わずに相談もされずに去られた僕の身にもなってほしいものだね」
棘がある言葉に小さくルイは息を吐きだした。そんなジト目で見上げてきたルイにジェハは鼻で笑い飛ばすと、目の前の酒を煽った。
「ハイハイ
あの時はすいませんでした」
「全然感情が伝わってこないよ」
「しょーがないでしょ
あの時はあれが最善だと思ってたんだから」
今度は逆にジト目を向けられたルイは不満げに睨み返すとお猪口に入った酒を飲み干した。
「いやぁ~、でも流石幻のお酒だね」
「ホント、格別な味だよね」
喉をスッキリと通る酒。その酒から仄かに香る香りに2人はうっとりと目を細めた。
「んで?
彼、何者なの?」
サラリと話題を戻すジェハ。その彼にルイは驚きで顔を上げた。その動揺が見られるルイの顔にクスッとジェハは笑みを浮かべた。
「酔いたい気分って言いだしたの、彼のせいでしょ?」
「…よくわかったね」
「伊達に13年一緒にいるわけじゃないからね
このくらいわかってとーぜんさ」
図星だと目を瞬かせるルイをジェハは軽く小突いて見せた。そして、で??と目尻を下げてルイに話すようにジェハは促した。
「…ハクやヨナの耳に絶対入れないでね」
「??わかったよ」
「彼の正体はわからないから私のただの憶測になっちゃうんだけど…
彼の纏うオーラに私はヨナに近いものを感じたの…」
釘をしっかり刺したルイは淡々と記憶を辿りよせながら言葉を紡いでいった。そしてゆっくりと視線をジェハに向けたルイは優しく吹き付ける風に言葉を乗せた。
もしかしたら時折ハクが見せる悲しい殺気の原因が
…彼かもしれない
その紡がれた衝撃的な言葉にジェハが驚きで目を見開いたのは言うまでもない。