狙われた赤髪の少女
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ガタガタッ!!
ガッシャーン!!
宿の玄関口辺りで行われた彼らが起こした騒ぎの騒音は宿に宿泊していた者の耳に入っていた。
「…何?」
ピタッと動きを止めて耳をすまし始めたのはリリだった。水呼城に戻ったリリは1人仙水にやってきていたのだ。だが、彼女は今1人ではなかった。
「下から聞こえましたね
ちょっと見て来ます」
「あ、私も…」
「ここは用心棒の仕事です」
一緒に見に行こうとするリリを制止させたのは1人の若い男。リリと一緒にいた彼らは彼女が仙水で出会った者だった。襲われかけたリリは救ってくれた彼らの腕を見込んで用心棒を頼み込んだのだ。
リリに心配ないと柔らかく微笑んだ彼はもう1人の男と共に部屋を出て階段を下った。
「あのーそこに誰かいらっしゃいますか?」
恐る恐る覗き込んだ彼らは、目の前の光景に目を見開いた。何故なら明かりが一つだけ灯った薄暗い場所で宿の主人が1人の男に片腕を捻られ押さえ込まれていたからだ。
そんな不審人物に2人は警戒心を強まらせていった。
「宿泊してる人…かな
悪いね、お休みの所騒がせて」
尋問を始めようとしたジェハは第三者の声と鞘を抜く金属音に反応し押さえ込んでいる男から視線を外した。
「…あなたは?」
「この宿にね、泊まろうとしたんだけどちょっと悪い物見かけて」
「悪いもの?」
「毒入りの酒さ」
「…麻薬 ですか」
「知ってるのか」
「この町に来て聞いたんです」
傍に来た彼を横目に見ながらジェハは捻り上げる力を強めた。
「いででで、放せ
俺は何も知らない…っ」
「知らなくてこれを店に置くのかい
客に売ってたんだろ
どこで手に入れた?」
「いでででで…うううっ…」
怒りを押し殺しながらもジェハは捻る力を強くしていった。肩が今にも外れそうな激痛。その痛みに耐えきれず男は硬く閉ざしていた口をようやく開いたのだ。
「これは…
三番地の洞 という店で手に入れたんだ…
良い酒だからと」
その言葉に棚を物色していたルイが振り返った。
「ふーん
貴方はこれが麻薬 とは知らなかったと?」
「あぁ!!そうだ!!」
声を上げた男は嘘を吐いて誤魔化しているようには感じ取れなかった。
こいつは中毒者じゃない
ただ麻薬入りの酒を入手しただけだ
両者は互いに行き着いた意見が一致しているのを確かめるように顔を上げた。目を見合わせる二人。だが、顔を上げたルイはジェハの隣にいつの間にかいた彼の存在に驚きのあまり目を見開いた。対する、彼もルイの顔を見ると驚きのあまり目を見開くのだった。
「……また会えましたね、ルイさん」
先に正気に戻ったのはジェハの隣にいた彼だった。その彼から発せられたルイの名前にジェハは驚きの表情に。そして、説明を求めるようにルイに目で訴えた。
「えぇ…
ホントにまた会えましたね、ウォンさん」
ジェハの目線を感じながらルイは目尻を下げて笑ってみせた。
「いつから此処に??」
「ついさっき来たばかりです」
「そーですか
ならサッサとこの土地を出た方がいいですよ?
ここに居ても商売は成り立たないでしょうから」
ウォンの返答に目を細めたルイは、忠告のようなセリフを吐き出すと手に持っていた酒瓶を落とした。
ガシャンという音と共に、叩き落された瓶の破片は床に散乱し、瓶に入っていた液体が落ちた付近の床を湿らせた。
「どれが麻薬 なのですか?」
「えぇーとですね…」
「この宿の酒全部調べ終わった??」
「ごめん、まだ
実はさ、ずっと此処にあったからか匂いが混じってて全部を正確に識別できないんだよねぇー」
「じゃぁ、全部打ち割りますか」
「そーだね」
「それが手っ取り早いね」
いつの間にかウォンを混じえて酒瓶が置かれている棚の前で相談が始まった。そして一同、一つの結論に至った彼らはケラケラと笑いながら鬱憤を晴らすように瓶を音を立てて割っていくのだった。その光景を主人は蒼白した表情でただ眺めていることしかできなかった。
「あっ見てください!
凄いお酒がありましたよ!
幻の翡翠酒です!!」
その最中、ウォンが一つの瓶を手に目をキラキラと輝かせた。それに対して手を止めウォンの持つ瓶を覗いたジェハとルイは同様に目を輝かせた。
「ホントだ!滅多に見られないお酒ですね!」
「なんとこれは!!
ゆゆしき酒だね!
回収しておこうかな」
3人は互いにその酒瓶を囲んで笑い声を上げた。そんな3人に唯一輪に加わっていなかった男は呆れた眼差しを向けていた。
「まぁ折角だし……」
ふと零した言葉を中途で噤むとルイはウォンからその瓶を奪い取った。
「え??」
「これは騒ぎを起こした詫びとして僕らが買わせていただきます」
口元を緩めたルイは懐からある物を取り出すと、チャリンと音を立てて生気が抜けた主人の目の前に代金を置いた。
「珍しいね?」
「ちょっと今日は酔いたい気分だから付き合って」
目尻を下げたルイの微笑みにジェハはもちろんだと微笑み返した。そして3人はそのままの勢いで棚に置かれていた全部の酒瓶を割っていった。
「君どこの人?
ルイが言ったように
この町と宿は危ないから早く去った方が良いよ」
「商売したいなら是非阿波でしてくださいな」
ジェハとルイはそうウォンに告げるとクルリと身体を反転させて宿の外へ続く出口に向かう。
「お気遣いどうも
そうします
あなた達こそ…」
「じゃ」
「またいつか」
引き留めて話を聞きたいウォンに対して2人は片手を軽く挙げて別れを告げた。
「あっ、でも
できるのであれば、本来の貴方にはお会いしたくはありませんね」
先に出たジェハの後を追わず、足を止めて片手を下ろしたルイは首だけ後ろに向けると寂し気に微笑んだ。
「あっ、待って…」
ウォンから視線を外したルイは駆け出す。それでハッと正気に戻ったウォンは彼らを追うように外に出る。しかし、既に2人の姿は消えてしまっていた。
ガッシャーン!!
宿の玄関口辺りで行われた彼らが起こした騒ぎの騒音は宿に宿泊していた者の耳に入っていた。
「…何?」
ピタッと動きを止めて耳をすまし始めたのはリリだった。水呼城に戻ったリリは1人仙水にやってきていたのだ。だが、彼女は今1人ではなかった。
「下から聞こえましたね
ちょっと見て来ます」
「あ、私も…」
「ここは用心棒の仕事です」
一緒に見に行こうとするリリを制止させたのは1人の若い男。リリと一緒にいた彼らは彼女が仙水で出会った者だった。襲われかけたリリは救ってくれた彼らの腕を見込んで用心棒を頼み込んだのだ。
リリに心配ないと柔らかく微笑んだ彼はもう1人の男と共に部屋を出て階段を下った。
「あのーそこに誰かいらっしゃいますか?」
恐る恐る覗き込んだ彼らは、目の前の光景に目を見開いた。何故なら明かりが一つだけ灯った薄暗い場所で宿の主人が1人の男に片腕を捻られ押さえ込まれていたからだ。
そんな不審人物に2人は警戒心を強まらせていった。
「宿泊してる人…かな
悪いね、お休みの所騒がせて」
尋問を始めようとしたジェハは第三者の声と鞘を抜く金属音に反応し押さえ込んでいる男から視線を外した。
「…あなたは?」
「この宿にね、泊まろうとしたんだけどちょっと悪い物見かけて」
「悪いもの?」
「毒入りの酒さ」
「…
「知ってるのか」
「この町に来て聞いたんです」
傍に来た彼を横目に見ながらジェハは捻り上げる力を強めた。
「いででで、放せ
俺は何も知らない…っ」
「知らなくてこれを店に置くのかい
客に売ってたんだろ
どこで手に入れた?」
「いでででで…うううっ…」
怒りを押し殺しながらもジェハは捻る力を強くしていった。肩が今にも外れそうな激痛。その痛みに耐えきれず男は硬く閉ざしていた口をようやく開いたのだ。
「これは…
三番地の
良い酒だからと」
その言葉に棚を物色していたルイが振り返った。
「ふーん
貴方はこれが
「あぁ!!そうだ!!」
声を上げた男は嘘を吐いて誤魔化しているようには感じ取れなかった。
こいつは中毒者じゃない
ただ麻薬入りの酒を入手しただけだ
両者は互いに行き着いた意見が一致しているのを確かめるように顔を上げた。目を見合わせる二人。だが、顔を上げたルイはジェハの隣にいつの間にかいた彼の存在に驚きのあまり目を見開いた。対する、彼もルイの顔を見ると驚きのあまり目を見開くのだった。
「……また会えましたね、ルイさん」
先に正気に戻ったのはジェハの隣にいた彼だった。その彼から発せられたルイの名前にジェハは驚きの表情に。そして、説明を求めるようにルイに目で訴えた。
「えぇ…
ホントにまた会えましたね、ウォンさん」
ジェハの目線を感じながらルイは目尻を下げて笑ってみせた。
「いつから此処に??」
「ついさっき来たばかりです」
「そーですか
ならサッサとこの土地を出た方がいいですよ?
ここに居ても商売は成り立たないでしょうから」
ウォンの返答に目を細めたルイは、忠告のようなセリフを吐き出すと手に持っていた酒瓶を落とした。
ガシャンという音と共に、叩き落された瓶の破片は床に散乱し、瓶に入っていた液体が落ちた付近の床を湿らせた。
「どれが
「えぇーとですね…」
「この宿の酒全部調べ終わった??」
「ごめん、まだ
実はさ、ずっと此処にあったからか匂いが混じってて全部を正確に識別できないんだよねぇー」
「じゃぁ、全部打ち割りますか」
「そーだね」
「それが手っ取り早いね」
いつの間にかウォンを混じえて酒瓶が置かれている棚の前で相談が始まった。そして一同、一つの結論に至った彼らはケラケラと笑いながら鬱憤を晴らすように瓶を音を立てて割っていくのだった。その光景を主人は蒼白した表情でただ眺めていることしかできなかった。
「あっ見てください!
凄いお酒がありましたよ!
幻の翡翠酒です!!」
その最中、ウォンが一つの瓶を手に目をキラキラと輝かせた。それに対して手を止めウォンの持つ瓶を覗いたジェハとルイは同様に目を輝かせた。
「ホントだ!滅多に見られないお酒ですね!」
「なんとこれは!!
ゆゆしき酒だね!
回収しておこうかな」
3人は互いにその酒瓶を囲んで笑い声を上げた。そんな3人に唯一輪に加わっていなかった男は呆れた眼差しを向けていた。
「まぁ折角だし……」
ふと零した言葉を中途で噤むとルイはウォンからその瓶を奪い取った。
「え??」
「これは騒ぎを起こした詫びとして僕らが買わせていただきます」
口元を緩めたルイは懐からある物を取り出すと、チャリンと音を立てて生気が抜けた主人の目の前に代金を置いた。
「珍しいね?」
「ちょっと今日は酔いたい気分だから付き合って」
目尻を下げたルイの微笑みにジェハはもちろんだと微笑み返した。そして3人はそのままの勢いで棚に置かれていた全部の酒瓶を割っていった。
「君どこの人?
ルイが言ったように
この町と宿は危ないから早く去った方が良いよ」
「商売したいなら是非阿波でしてくださいな」
ジェハとルイはそうウォンに告げるとクルリと身体を反転させて宿の外へ続く出口に向かう。
「お気遣いどうも
そうします
あなた達こそ…」
「じゃ」
「またいつか」
引き留めて話を聞きたいウォンに対して2人は片手を軽く挙げて別れを告げた。
「あっ、でも
できるのであれば、本来の貴方にはお会いしたくはありませんね」
先に出たジェハの後を追わず、足を止めて片手を下ろしたルイは首だけ後ろに向けると寂し気に微笑んだ。
「あっ、待って…」
ウォンから視線を外したルイは駆け出す。それでハッと正気に戻ったウォンは彼らを追うように外に出る。しかし、既に2人の姿は消えてしまっていた。