狙われた赤髪の少女
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「遅かったじゃないか」
扉を開けるとそこには探していた2人の姿があった。白い外套を羽織ったヨナと身を寄せ合っていたジェハが扉の音に反応して顔を上げた。そんなヘラっと笑ったジェハの言葉に緊張の糸を張り詰めていた一同は大きく息を吐きだした。
「やっと見つけた」
「こんな所に隠れてると思わねーよ」
そして一同は彼らを囲むようにしゃがみこんだ。その時、ルイはジェハの右腕側の袖が微かに裂けていているのを見つけて顔を顰めた。ルイは黙ったままそこに手を触れた。
「…!?」
「…なに、傷負ってるのよ」
「ちょっと死角から襲撃喰らっちゃってね」
苦笑気味のジェハに、小さく息をついたルイはこのくらいなら構わないだろうと力を使った。彼女の手から淡い緑色の光が灯りジェハの掠り傷を優しく包み込んだ。
「ごめん、手間取らせた」
「聞きたい言葉はそれじゃない」
「…ありがと」
「どーいたしまして」
視線を合わしてくれないルイに困ったようにジェハは目尻を下げた。
「ヨナ…顔色良くない」
「ちょっと寒かっただけだから」
「ちょっと触れるよ」
対して、ヨナの体調を心配してシンアがグッと彼女を覗き込む。その2人のやり取りを耳に挟んだルイは彼女の前にしゃがみ込むと彼女の額にそっと手を触れた。その途端、ヨナの全身を淡い緑色の光が包み込んだ。
「ありがと、ルイ」
「いいえ、これくらいお安いご用よ」
ふんわりと笑ったヨナにルイは笑い返す。怠さが引いたヨナに念のためにもシンアが被っていた毛皮を羽織らせ、ゼノは思い切り抱きつき、冷たくない彼女の身体を温めようとし始めた。
「ちょっと...
ヨナちゃんと僕への対応差あり過ぎないかい?」
「…気の所為よ」
「で?…何があった」
やり取りを眺めていたハクが横から口を挟む。そして、視線を鋭く尖らせたままジェハに尋ねた。それに言いかけた言葉を引っ込めてジェハはルイからハクに視線を移した。
「ヒヨウの刺客らしき奴が襲ってきてね
この状態で宿を探すのは危険だからここで君達を待ってたのさ」
「やっぱりそっちにも…」
「えっ…どーゆう…」
「宿を探しにくいとなると野宿だけど困ったな」
「どうしたの?」
「仙水に入った時、ざっと町の様子を見てみたんだけど…」
「きゃーーーっ」
ヨナが狙われている以上、彼女を休ませたいのに迂闊に行動できない。さて、どうしようかと頭を悩ませるユンら。そんな彼らの耳に女性の悲鳴が聞こえてきた。その声に一同は腰を浮かした。
「何!?」
「女の子の声だ」
直様、ルイが立ち上がり走り出した。それに続くようにジェハとゼノが続いた。そんな彼らの視界の先で2人の男に掴まれている女性がいた。
「…私、右」
「じゃあ、僕は左だね」
走りながら目線を交わし軽く相槌をかわすと2人は同時に地面を蹴り上げた。その2人の右足はそれぞれの男の頬にクリーンヒットするのだった。2人の強烈な蹴りは男を地面にノシ、気絶させた。
対して、掴まれた両腕を離された女性はヘナっと地面に座り込む。そんな彼女を心配そうに3人は覗き込んだ。
「怪我はないかい、お嬢さん」
「…は、はい」
「一体何があったんですか?」
「わかりません…
強い力で…突然私を捕まえようとして…
“赤い髪じゃない”
“とりあえず連れて行け”
って…」
その言葉にジェハは息を呑む。対して先程同じようなものに遭遇していたゼノとルイはやはりかと神妙な面持ちを浮かべた。
「お嬢さん、家はどこですか?
近いなら僕たちが送り届けます」
ルイの提案に表情を青褪めた女性は小さく何度も頷いた。そんな彼女の手をとりルイは立ち上がる。そして3人は女性を家まで送り届けると急いで先程の場所に戻るのだった。
*****
「赤い髪の女を探してる?」
「やっぱり…ヨナのことだよね」
「ヒヨウの刺客というのも姫様を狙って…?」
「恐らくね」
3人が戻ると既にユンが手際よく薪を使って火を灯していた。それを取り囲むように一同は座った。そして、互いに離れている間と今さっきの出来事を話し、意見を擦り合わせていった。その結果、ヒヨウはヨナを狙って刺客を放っているということで全会一致した。
「…仙水は四泉以上にヒヨウの息がかかった人間が
多いかもしれないね」
「うん…
仙水は四泉より町が荒れている気がしたよ」
「おのれ、ヒヨウ…
無差別に女を襲うとは…」
「私を狙って無関係の子が襲われてるのね…」
話し合いが続く中、顔に影を落としたヨナがポツリと独り言のように呟いた。その言葉に一同の視線はヨナに集まった。彼女がなにかやりそうなのは明らか。慌ててユンが声を上げた。
「…ヨナ、ダメだよ?
まだ怪我が…」
「ユン、包帯を巻き直してもらえるかしら」
「え…う…うん」
力強い一声にユンは困惑しながらも素直にヨナの元に近寄った。
「…ヨナ」
「ヨナちゃん…」
「…みんな」
小さな声で彼女の名を呼んだ心配そうな表情を浮かべるルイとジェハに大丈夫だと小さく笑いかけるとヨナは一同の顔を見渡した。
「私は未熟だから今しばらく迷惑をかけてしまうけれど力を貸して欲しい」
決意を固めたヨナの頼み事。もちろん、彼女の頼みを安々と跳ね除ける者はこの中には誰もいなかった。
「いいとも!!」
「そのような事断る必要などありません」
すぐさま一同は頷く。それを確認したヨナは真っ直ぐな紫紺色の瞳で一同を見渡した。
「ヒヨウが私を探しているように私達もヒヨウを探している
ならば暴れてやりましょう、"赤い髪の女"はここにいるって」
力強く言葉を言い放ったヨナに、粗方予想通りだった一同はユンを覗いて口角を上げた。
「さて、暴れてやりますか」
「…お任せください!」
「ゼノ、頑張る!」
「はぁぁ、やっぱりこーなるよね」
「まぁ、ヨナちゃんだから」
「ちょっとルイ!張り切りすぎないでよ!」
「…なるべく、善処するね」
「それフラグ立ててるから!!
暴れるなら程々に!」
怒りを押し殺していた一行はニヤッと口角を上げて、意気揚々に腕を鳴らす。そんなやる気みなぎる彼らに、あたふたとユンはキレのあるツッコミを入れていった。
そして、雨が上がった翌朝…
一行はわざと居場所がわかるように派手に暴れまわるのだった。