黒幕との鉢合わせ
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「う…うそ…
やだ…しっかりしなさいよ…!」
斬られたヨナは力を失いリリの胸元に倒れ込んだ。リリは冷たくなっていくヨナの身体を支える手をギュッと握った。
「何…してんのよ…?
私の盾になって力も技もないくせに…
どうしてッ…
どうしてそんな自己犠牲が出来るの?
あんたおかしいわよ!!」
涙目になりながらリリは叫んだ。その声にムクッとヨナは顔を上げると、口角を上げた。
「…自己犠牲?私が?」
軽く鼻で笑うとヨナは上半身を起こした。
「私は生き抜く為に闘ってるの
理不尽な力に屈する気なんて毛頭無い」
”自己犠牲”
その言葉がお似合いなのは自分ではなく、そこで血を流して気を失っているルイだ。
もう、守ってくれる人はだれもいない
1人剣を構えることにヨナは恐怖で立ちくらみを起こしそうになる。それでも、ヨナは己を鼓舞して再び剣を握って敵と向き合った。
私が皆を守るんだ
覚悟を固めたヨナ。だが、その剣の柄を持つ手が、身体を支える足が微かに震えていた。
そんなヨナを見てリリはヒシヒシと自分の無力さを痛感していた。
私は水の部族を救うんだと簡単に口にして現実に怯えて何の覚悟もないままどうすれば良いのかわからないまま…
私の為について来たテトラが倒れても、未だ私の足は動けない…
どうしてこんな子がいるの…?
自分もこんな風に強くなりたい
リリは悔し涙を流しながら、ヨナを見上げてそう強く願った。
「生意気な目をした女ですね。
鼻につく
とっとと殺って下さい」
ヒヨウは目の前で立つヨナの紫紺色の眼差しに嫌気がさす。もう興味がないと手鏡で己の顔を見ながら、ヒヨウは指示を出した。その指示に従い、男は剣を振り上げる。しかし、斬ろうとした男の身体は逆に血飛沫を噴いた。
「きゃぁぁぁぁ!!」
斬られた男は悲鳴を上げて倒れ込んだ。その男の背後には、剣を振り下ろしたシンアがいたのだった。
「シン…ア」
「ヨナ!」
シンアの姿を捉えたヨナは、張り詰めていた糸がプツンと切れ、その場にへたっと座り込んだ。その彼女の背後から、遅れてユンとゼノが駆け寄ってきた。
「ヨナ、背中に血がッ…!!」
「ユン!
私よりも、ルイをッ…」
咄嗟に彼女の傍に屈んだユンは、ヨナの背中の傷を見て息を呑んだ。そんな彼にヨナは前を見据えながら、倒れているルイを横目に捉えた。その視線の先をユンは目をやる。すると、血の気が失せ、グッタリと血の海の上で力なく横たわるルイの姿があった。その尋常でない出血量にユン達は表情を青褪めた。
「ルイ!!」
「姉ちゃん!!」
駆け寄ったユンとゼノは、未だに傷口から溢れ出す血に険しい面持ちをした。
「この出血量…不味いな」
「ちょっと!一体何があったのさ!!」
「私を庇ってッ…ルイが…」
表情に影を落とし、ヨナは悔しげに呟いた。そして、目の前にいる彼らが四泉にナダイを持ち込んだ黒幕だと説明した。その衝撃的な事実にユンは思わず驚きの声を漏らした。
そのやり取りの最中、シンアが見ていたのはヨナとルイだった。血を流し、痛々しいヨナの背の傷とルイの抉られた脇腹の傷。それを視界に捉えたシンアは腸が煮えくり返っていた。腹の底からこみ上げてくる怒りを抑えきれずシンアは歯を噛み締め低い呻き声を上げると、ヒヨウ以外の者を片っ端から斬り捨てていった。そしてその矛先はヒヨウに向けられた。
「シンア!
待って、その人には聞きたい事がある」
今にも斬りかかりそうなシンアをヨナは、彼の名を叫んで制止させた。それに従い、シンアは大人しく剣を下ろした。
一方、ヒヨウは機会を伺いながら懐に忍ばせてある短剣に手を伸ばす。が、それに気づいたヨナは咄嗟に手に持つ剣を振り上げた。
「じっとしていなさい」
「ヨナ、駄目だよ動いちゃ!」
慌ててユンが、ヨナに心配そうに駆け寄った。
そんな彼らの前でヒヨウが額を押さえて叫び声を上げた。そしてそのまま頭を抱えてしゃがみこんだ。
「ぎゃあああ!
私の…私の肌にまた傷がぁあああ!!」
ヨナの剣先が斬ったのはヒヨウの額。大きな縦筋をつけられたヒヨウは額を押さえながらも目の前のヨナを睨みつけた。
「ゆるさない…ゆるさなイィイイイ
忘れない…
あんたの顔…絶ッ対殺」
突然声を上げたヒヨウに呆気にとられた彼らは彼の冷たい双眸に、射竦められる。固まったかのように動けなくなるヨナ達。そんな彼らに、ヒヨウは咄嗟に背を向け駆け出した。
それを見てシンアは後を追おうと駆け出す。が、ゼノが彼の名を叫んで引き止めた。
「青龍!そいつはあとだ
娘さん達が危ない!」
危険が去ったことで意識をかろうじて繋ぎ止めていたヨナは、床に倒れ込んだのだ。
シンアは振り返り、グッタリ横たわる2人を確認するとすぐに彼らの元に戻った。そして彼らはユンの指示の下、危険な状態な3人を急いで室内へと運び込むのだった。