海上での決戦
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「良いでしょう、大歓迎です」
品定めするように眺められていた3人だが、無事に関門を通過することに成功する。奥へどうぞと背を向けた店番が見えないところで3人はニヤリと笑みを浮かべガッツポーズをする。同じ頃店番も上玉がかかったとニッと笑っていた。
「こちらでお待ちください
今、店主を連れてきますから」
店番はある部屋の扉の前で止まる。その店番の言葉に小さく頷くとルイがドアノブを回して部屋の中に最初に入る。続けてヨナ、ユンとあくまでヨナを中心に挟むように3人は薄暗い部屋の中に入った。
「では、しばらくお待ちを」
ギギギっという音と共に店番により扉が閉められた。外の明かりでかろうじて見えていた部屋に一気に闇が押し寄せる。同時に恐怖がヨナを襲ってきた。彼女の足が震えているのが見て取れたユンとルイは心配そうにヨナを見つめた。
「今更…!」
「「ヨナ…」」
ヨナは自分の足をパンッと叩き気合いを入れ直す。そんな彼女に二人は安心させようと言葉を掛けようとする。がその瞬間、3人の下の床が何の前触れもなく開くのだった。
「「「あ…」」」
ルイは咄嗟にヨナとユンを自分に引き寄せた。3人で身を寄せ合うようにして深い闇へと落ちて行ったのだった。その後目隠しをされて馬車に乗せられた3人は別の場所へ移動させられるのだった。
「出ろ!!」
馬車が止まり目隠しを外され降ろされた3人は役人に無理やり立たされる。どのまま3人は女性がたくさん集められた部屋に通された。
「早く入れ」
扉の前にいた3人は役人に背中を押されて部屋に押し入れられてしまった。悲鳴を上げた3人は床に倒れ込むと同時に、扉は閉められて部屋は真っ暗な闇と化した。
その時、ヨナは足首に痛みが走り顔を歪めた。
「大丈夫?
捻挫してる…落ちた時に足を痛めたんだ」
「ごめんね、ちゃんと衝撃から守ってあげられなくて…」
ヨナが足元をめくると足首が赤く腫れていた。それを確認したユンとルイは心配そうにヨナを見つめた。
「ううん…ルイのせいじゃないよ」
「無理しちゃダメだからね
なにかあったらちゃんとユンか僕に言うんだよ」
不安げに表情を曇らすヨナにルイは語りかけた。その言葉にヨナは頷きながらも内心は不安でいっぱいだった。こんな時にこんな足で計画通りに動けるのだろうかと。
その時、重たい音をたてて扉が開き光が差し込んだ。その音にハッとして顔を上げるとそこには1人の男が背後に仲間を引き連れて現れたのだった。
「ククク…なるほど…
上物揃いだ。まだまだ阿波も捨てたもんじゃないな」
部屋の前にたった男…ヤン・クムジは顎に手をやり部屋にいる女を舐め回した。
「クムジ様!どういう事ですか?
私達仕事が頂けると聞いてここに…」
「仕事はある。楽しい仕事が嫌というほどな。
お前達は明日の夜までここで待機していればいい。」
中にいた女がクムジの姿を見てすがるように声を上げる。が、クムジはその反応に小さく笑うのだった。
「二人共、身を縮めて」
「そうだね
今は目をつけられないように大人しくしてるのが無難だね」
ユンとルイはなるべくクムジの視界に入らないことを願いながらヨナとともに息を顰めた。このままこの部屋をなるべく早く立ち去ってくれと。だが、現実はそう上手くは行かなかった。なんと、クムジは突然部屋の中に足を踏み入れるとヨナの髪を掴んで自分に引き寄せたのだ。
「赤い髪…なるほど、珍しいな。」
「う…」
前髪を掴まれて無理やり立たされたヨナは悲痛の表情を浮かべた。そのヨナにグッとクムジは顔を近づけた。
「ククク、顔もなかなかの美形。これは高く売れそうだ。
いや…少々売るのが惜しくなった。
これだけ上物が揃っていれば、一人くらい俺のものにしたところでそう損にもなるまい…」
クムジの言葉にルイとユンは息を呑んだ。このままだとヨナが連れて行かれてしまうと。ユンは無意識の内にスッと立ち上がった。
「クムジ様!
そ、そんな女より!私の方がきっとご満足頂けますわ」
「ほぉ…」
「そんな女ほっといてどうか私をお側に…」
ユンは自分自身に自問自答しながらも演技を続けた。例え危険だろうと、これでヨナが助かるならと。
「…そうだな、お前もなかなかの上玉だ。だが、」
クムジはそう言いながらユンに近づくと彼の顎に手を添えて顔をまじまじと見る。
なんとかなるか…
ユンがそう思った矢先に彼は腹を思いっきり蹴り飛ばされるのだった。ユンはその衝撃で吐血し、床に崩れ落ちると腹を抱えて咳き込んだ。ルイはハッと顔を青ざめて苦痛に表情を歪ませるユンに駆け寄った。
「俺が楽しんでる時に口を挟む図々しい女は大嫌いなんだ。」
「クムジ様…商品に傷が…」
「口を…挟むなと言ったはずだ!!」
背後に控えていた男が心配して口を開く。が、それはクムジの気に触り彼は床にはたき落とされるのだった。
「いいぞ、女は従順で黙って震えているのが一番だ。
この赤毛の女のようにな…」
クムジは愉快げに自分が掴んでいるヨナをほくそ笑みながら見た。だが、そこにいたのはか弱く震える少女ではなかった。ヨナは強い目で大切な仲間を蹴り飛ばしたクムジを睨みつけていたのだ。恐れを感じたクムジは手を震わせながらヨナを投げ飛ばした。こんな小娘に対して己が恐怖を抱くのかと自問自答したクムジの脳裏である人物のことが浮かび上がった。
「…娘、お前は阿波の人間か?」
「…はい。」
「その昔…一俺は俺は緋龍城にてお前と同じ赤い髪を見た事がある。一瞬だけ…遠くから陽の光に反射するその髪の女の名は…ヨナ姫。
年の頃ならお前と同じくらいだ。
まさかお前か…ヨナ姫か?」
ヨナは動揺しながらも顔に出すことなく両手を優雅につくとクムジに頭を下げた。
「…私は阿波の貧しい商人の娘。
ここで新しい仕事が頂けると聞いて参りました。
赤い髪のお姫様は存じ上げませんが、クムジ様のお仕事で赤い髪の姫となった方が都合がよろしければヨナ姫と名乗らせて頂きます。」
そのヨナの咄嗟にとった行動が彼女自身を救った。クムジは床に両手をつけ頭を下げるヨナを見て鼻で笑った。
「…戯れが過ぎたな。
ヨナ姫がこんな所でそのように自尊心のかけらも無く、仕事探しなどする訳がない。
お前のような娘が姫なものか。
第一…あの姫は従者に連れ去られ殺されたと聞く。
お前のような下賤の者は知らんだろうがな。」
クムジはそう吐き捨てると部屋を後にするのだった。