静かな終幕
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「良かったの?ヨナ??」
その次の日、再び食材を届けに来たリリとあっさりとした別れをしてしまったヨナにルイは不思議そうに尋ねた。その問いにヨナは淋しげに微笑んだ。
「えぇ…
だって、リリは忙しそうだから」
「ヨナの本心は??」
「…このまま別れるのはちょっと淋しい」
ヨナの心情をわかりきっているルイは引き下がることなく、ヨナの本心を探りに掛かった。その言葉に、暫く考え込む素振りを見せたヨナは目を伏せると、ポツリとか細い声で呟いた。その言葉にルイは満足げに口元を緩めた。
「じゃあ、今夜は宴でもする?
まだやってないし?」
「え…でも…」
「いいじゃないか
折角の記念日なんだから」
思っても見なかった提案にヨナは目を見開くものの飛びつくことはなかった。その未だに渋るヨナの肩に手を置いたジェハが柔らかく微笑んでみせた。
「それに次いつ会えるかわかんないよ…」
「…確かに
それもそうね…」
ジェハの鋭い指摘にヨナはウッと言葉を詰まらせた。次いつ水の部族を訪れるのかわからない。それに仮に訪れてもリリと会える保証はないのだ。
「宴するのは構わないけどさ!誰が準備するわけ?」
その時黙ってやり取りを見守っていたユンが口を挟んだ。その言葉に3人は一斉にユンに意味ありげな視線を投げた。その視線にユンは深いため息を吐いた。
「…ちゃんと皆手伝ってよね」
「「「もちろんです!!」」」
「で?誰が誘いに行く?」
「それは私達に任せて!」
その言葉にルイは胸を張って答えると、横にいるジェハに「ねぇ?」っと視線を送った。それにジェハはわかっていたように小さく頷いてみせた。
「ルイを抱えて僕が跳んで探してくるよ」
「じゃ序でに食料の調達も…」
急いで支度を始めようと動き出す中、橋を渡ってコチラに駆けてくる見覚えのある3人に気づいたヨナが嬉しそうに声を上げた。その声に一同は手を止めて駆け寄ってきたリリ達を出迎えた。
「リリ!
アユラ!テトラも!!」
「お久しぶりです、皆様
リリ様が大変お世話になって」
「「いえ、こちらこそ」」
だが、久しぶりの再会の早々にアユラとテトラは地面に座り込むと深々と頭を下げた。その対応に困惑しながらもユン達は彼女に頭を上げるようにお願いした。
「会えて嬉しい」
「丁度リリちゃんを探しに行こうとしてたんだよ」
「良かったよ、入れ違いにならなくて済んで」
その言葉にリリはどうして?と不思議そうに息を呑んだ。そんな彼女にヨナは微笑んだ。
「あのままお別れも淋しかったから今夜は一緒に食事でもって」
「ヨナ…」
まさかそんな事を考えてくれていたなど思っていなかったリリは嬉しそうに頬を染めた。だが、さらっとそんな事を言うヨナにうだうだ考えていた自分が馬鹿らしくなりその鬱憤をぶつけるようにリリは彼女に詰め寄った。
「あんたが言ったんじゃない“じゃあ元気で”って!!」
「え?」
「けろっと淋しいとか言わないでっ!
『何か問題でも!?』みたいな顔してムカつくのよっ!!」
「え?」
罵声を浴びせられたヨナはキョトンとしていた。そんな2人のやり取りを周囲は微笑ましげに眺めていた。
「もしよろしければコチラを使ってください」
「私達からのささやかなお礼という名の差し入れです」
そのやり取りを横目にテトラとアユラは抱えていたものをユンに差し出した。その量の多さにユンは目をキラキラと輝かした。
「うわぁ!助かる!!」
「良かった…
これで食材の調達もいらなくなったね」
「うん!
ありがと、テトラ、アユラ!!」
そして早速差し入れの食材を元にユンは調理を開始した。
「エビカニハマグリ~」
「リリちゃん達がたくさん差し入れしてくれたからね」
「こんな豪華な食事いつ以来だろ?」
「まあ、お上手だこと」
「豚肉とねぎの焼うどんだよ」
「ちょっと待って!
それなら華醤油を入れてっ
水の部族定番のピリ辛香辛料よ!
絶対合うから!!」
「わかった、ひとっ跳び買ってくるよ」
「こうなると汁物が欲しいですわね」
「水餃子の汁物は?」
「あらいいわね、アユラ
水の部族名物水餃子作りましょうか」
「「それ美味しそう!教えてっ」」
こうして一同の目の前に豪勢な料理が出来上がり並べられた。それを目の当たりにした一同は目を輝かせた。
「豚肉とねぎのピリ辛うどんうまうま!水餃子とろっとろ~」
「キジャ君
カキは襲いかかったりしないから」
ゼノとシンアはガツガツと料理を美味しそうに食べ始める。その脇では神妙な面持ちでキジャが器に乗っているカキとにらめっこしていた。そんなキジャを覗き込んだジェハは呆れた眼差しを向けた。
そんな中、感激して目に涙を光らすのはユンとルイだった。
「こんなに…っ
労せず美味しい物にありつけるなんて…っ」
「ホントね…ッ
今日は味わって食べましょ…」
「うん、そうだね…」
「普段どんな食生活してんのよ…」
有り難いと感激しながら食べ始めるユンとルイに傍にいたリリは怪訝な眼差しを向けていた。