静かな終幕
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南戎の船を沈め、麻薬 を撒き散らした闇商人ヒヨウも一網打尽にしてから数日後、仙水は麻薬 の回収及びヒヨウの残党の取り締まりに追われていた。だが、その中心にはヒヨウを討った人物も船を沈めた英雄達の姿も見られなかった。渦中に今までいなかったかのように突如姿を消したヨナ達は、騒がれてバレることを防ぐために町外れに天幕を張り療養をとっていたのだ。
あの日…
指示を出したリリは水平線を眺め、あの時の事を思い起こしていた。
ヨナ達に私は口を挟む隙さえ無かった…
私の用心棒達は姿を消し、去り際にジュドがウォンを陛下と呼んでいたあれがスウォン陛下…
ジュドが咄嗟に口にした言葉でウォンの正体が高華国の玉座に君臨するスウォン陛下だと流石のリリも気づいた。だが、もう1人の正体はどんなに考えてもわからなかった。
ではあの子は?
水の部族に手を差しのべてくれた赤い髪のあの子は…
モヤモヤとした感情を抱えたまま、リリは水仙の街を駆け走っていった。そんなリリが目指したのは街外れだった。
「リリ!来てくれたの」
リリの姿を捉えた途端、ヨナは嬉しそうに頬を緩ました。そんな彼女にリリは深い溜め息を吐き出しながら彼女に近寄る。
「もう…
ヒヨウはいないんだし、わざわざこんな町外れで寝泊まりしなくても」
「町には兵士がいるし、騒がれると困るから」
「仕方ないわね、はい食料」
「ありがとう、リリ!
助かる〜!!」
やれやれと肩を竦めたリリは抱えていた風呂敷をヨナに手渡した。ドッサリと思いその風呂敷にヨナは目を輝かした。
「それでね、私達…」
「あ、ごめん私町でやる事が山積みなの」
「え…」
「そのうちまた顔出すから!」
「う、うん…」
リリが来たら伝えようと思っていた事を切り出そうとするヨナ。だが、ヨナの言葉を聞きたくないとリリは慌てたように表情を変えると彼女たちに踵を返してしまった。
「…言いそびれちゃった、明後日ここを発つって」
言う隙を与えられなかったヨナはポカンと去っていくリリの背を見つめていた。
「でもリリって水の部族長の娘なんでしょ?」
困ったようなヨナに黙っていたユンは神妙な面持ちで口火を切った。
「あんまり関わらない方がいいんじゃないかな
ただでさえ今回の事であの…リリの用心棒だった人達の正体も知ったと思うし
…まぁ、俺らも初めて知ったんだけど」
「黙っていてごめんね」
しょんぼりとした声音にヨナは申し訳無さそうに目を伏せた。だが、ヨナは伏せていた目を上げて真っ直ぐに前を見据えた。
「でもリリは大丈夫
一緒に闘ってきたもの
わかるの」
そんなヨナの表情に口元を緩めたユンはヨナが受け取った風呂敷に手を伸ばした。
「そっか、じゃあ食事にしようか」
「うん」
そのユンの言葉にヨナは嬉しそうに頷いた。だが、彼の事を思い出したヨナは不安げに調理の支度を始めようとするユンの背に声を掛けた。
「…ねぇ、ユン
ハクの怪我はどう…?」
「腕の傷が少し深いけど任せて、完治させてみせるから」
その言葉に足を止めたユンはヨナに振り返ると、彼女を安心させるように言い切るのだった。その言葉にヨナは強張っていた表情を崩し、柔らかく微笑むのだった。
*****
「ハク…食事だ」
「…ああ」
療養を続けるハクがいる天幕の入り口が開けられる。そこからは器を持ったキジャが覗き込んでいた。キジャに呼ばれたハクは上半身を起こした。そしてハクは器を受け取ると静かに口に運び始めた。その姿をキジャは神妙な面持ちで見守っていた。そのキジャの視線にハクは動かす箸の手を止めた。
「…何?」
「腕が不自由であろう
食べさせてやろうか」
「いらねーよ、つかここまで持って来なくて良いって」
「うむ、次はそうしよう」
キジャの申し出を瞬時に断ったハクは器からキジャに顔を上げた。そのハクはキジャの頬に未だに残るあざに気づいてしまう。ハッと思わず息を呑むハク。そのハクがマジマジと何を見つめているのかとキョトンとしていたキジャだが、ようやく何を見ているのかに気づき彼は頬に手を当てた。
「ああ…これは蚊に刺された
痒くてかなわん」
だが、そのあざはハクが暴れていた時にできたものだった。
キジャは何事もなかったように惚けると、ハクの追求の視線から逃れるようにクルッと背を向け、イソイソと天幕から出るのだった。
そんな彼を出迎えたのは彼と同じように頬にあざがあるジェハとルイだった。
「キジャ君、ほら君の分」
「早く食べないと冷めちゃうよ」
キジャの分の器を手にしたジェハと傍にいたルイは彼に声を掛ける。しかし、キジャは受け取る素振りを見せず黙りと俯いていた。その彼の浮かない顔にジェハとルイはキョトンとした。
「…キジャ??」
「…ハクに」
「「ん??」」
「次はもう止めないと言おうと思ったのだ」
憂いた表情のまま嘆くようにボヤいたキジャの言葉にジェハとルイは息を呑んだ。そんな青褪めた表情の彼らに伏せていた目を上げたキジャは苦笑気味に笑った。
「結局何も言わなかったが…」
そう溢すとキジャは何か思い出すように遠い目をした。
「あの男が先王イルを殺したスウォンだったとは…」
その言葉にジェハとルイはスウォンの顔を思い浮かべ、ハクが醸し出す哀しい殺気を思い起こしていた。
「…僕は余計に引っかき回してしまったかな」
「そんなことはない…
あの時は…あれが最善の選択だった」
誤魔化すようにおどけてみせたジェハの言葉にルイは間違ってないと彼に寄り添うように彼の手を軽く握った。だが、そのルイも隠しきれないくらい暗い表情を浮かべていた。
多少なりとも彼らは罪悪感を覚えている…
そんな彼らの心情を察したキジャは真っ直ぐ紺碧色の眼差しを彼らに向けた。
「そなたらが守ろうとしたものもわかっている」
「ありがと…キジャ」
キジャのその言葉に彼らは目を伏せると切なげに微笑んだ。
あの日…
指示を出したリリは水平線を眺め、あの時の事を思い起こしていた。
ヨナ達に私は口を挟む隙さえ無かった…
私の用心棒達は姿を消し、去り際にジュドがウォンを陛下と呼んでいたあれがスウォン陛下…
ジュドが咄嗟に口にした言葉でウォンの正体が高華国の玉座に君臨するスウォン陛下だと流石のリリも気づいた。だが、もう1人の正体はどんなに考えてもわからなかった。
ではあの子は?
水の部族に手を差しのべてくれた赤い髪のあの子は…
モヤモヤとした感情を抱えたまま、リリは水仙の街を駆け走っていった。そんなリリが目指したのは街外れだった。
「リリ!来てくれたの」
リリの姿を捉えた途端、ヨナは嬉しそうに頬を緩ました。そんな彼女にリリは深い溜め息を吐き出しながら彼女に近寄る。
「もう…
ヒヨウはいないんだし、わざわざこんな町外れで寝泊まりしなくても」
「町には兵士がいるし、騒がれると困るから」
「仕方ないわね、はい食料」
「ありがとう、リリ!
助かる〜!!」
やれやれと肩を竦めたリリは抱えていた風呂敷をヨナに手渡した。ドッサリと思いその風呂敷にヨナは目を輝かした。
「それでね、私達…」
「あ、ごめん私町でやる事が山積みなの」
「え…」
「そのうちまた顔出すから!」
「う、うん…」
リリが来たら伝えようと思っていた事を切り出そうとするヨナ。だが、ヨナの言葉を聞きたくないとリリは慌てたように表情を変えると彼女たちに踵を返してしまった。
「…言いそびれちゃった、明後日ここを発つって」
言う隙を与えられなかったヨナはポカンと去っていくリリの背を見つめていた。
「でもリリって水の部族長の娘なんでしょ?」
困ったようなヨナに黙っていたユンは神妙な面持ちで口火を切った。
「あんまり関わらない方がいいんじゃないかな
ただでさえ今回の事であの…リリの用心棒だった人達の正体も知ったと思うし
…まぁ、俺らも初めて知ったんだけど」
「黙っていてごめんね」
しょんぼりとした声音にヨナは申し訳無さそうに目を伏せた。だが、ヨナは伏せていた目を上げて真っ直ぐに前を見据えた。
「でもリリは大丈夫
一緒に闘ってきたもの
わかるの」
そんなヨナの表情に口元を緩めたユンはヨナが受け取った風呂敷に手を伸ばした。
「そっか、じゃあ食事にしようか」
「うん」
そのユンの言葉にヨナは嬉しそうに頷いた。だが、彼の事を思い出したヨナは不安げに調理の支度を始めようとするユンの背に声を掛けた。
「…ねぇ、ユン
ハクの怪我はどう…?」
「腕の傷が少し深いけど任せて、完治させてみせるから」
その言葉に足を止めたユンはヨナに振り返ると、彼女を安心させるように言い切るのだった。その言葉にヨナは強張っていた表情を崩し、柔らかく微笑むのだった。
*****
「ハク…食事だ」
「…ああ」
療養を続けるハクがいる天幕の入り口が開けられる。そこからは器を持ったキジャが覗き込んでいた。キジャに呼ばれたハクは上半身を起こした。そしてハクは器を受け取ると静かに口に運び始めた。その姿をキジャは神妙な面持ちで見守っていた。そのキジャの視線にハクは動かす箸の手を止めた。
「…何?」
「腕が不自由であろう
食べさせてやろうか」
「いらねーよ、つかここまで持って来なくて良いって」
「うむ、次はそうしよう」
キジャの申し出を瞬時に断ったハクは器からキジャに顔を上げた。そのハクはキジャの頬に未だに残るあざに気づいてしまう。ハッと思わず息を呑むハク。そのハクがマジマジと何を見つめているのかとキョトンとしていたキジャだが、ようやく何を見ているのかに気づき彼は頬に手を当てた。
「ああ…これは蚊に刺された
痒くてかなわん」
だが、そのあざはハクが暴れていた時にできたものだった。
キジャは何事もなかったように惚けると、ハクの追求の視線から逃れるようにクルッと背を向け、イソイソと天幕から出るのだった。
そんな彼を出迎えたのは彼と同じように頬にあざがあるジェハとルイだった。
「キジャ君、ほら君の分」
「早く食べないと冷めちゃうよ」
キジャの分の器を手にしたジェハと傍にいたルイは彼に声を掛ける。しかし、キジャは受け取る素振りを見せず黙りと俯いていた。その彼の浮かない顔にジェハとルイはキョトンとした。
「…キジャ??」
「…ハクに」
「「ん??」」
「次はもう止めないと言おうと思ったのだ」
憂いた表情のまま嘆くようにボヤいたキジャの言葉にジェハとルイは息を呑んだ。そんな青褪めた表情の彼らに伏せていた目を上げたキジャは苦笑気味に笑った。
「結局何も言わなかったが…」
そう溢すとキジャは何か思い出すように遠い目をした。
「あの男が先王イルを殺したスウォンだったとは…」
その言葉にジェハとルイはスウォンの顔を思い浮かべ、ハクが醸し出す哀しい殺気を思い起こしていた。
「…僕は余計に引っかき回してしまったかな」
「そんなことはない…
あの時は…あれが最善の選択だった」
誤魔化すようにおどけてみせたジェハの言葉にルイは間違ってないと彼に寄り添うように彼の手を軽く握った。だが、そのルイも隠しきれないくらい暗い表情を浮かべていた。
多少なりとも彼らは罪悪感を覚えている…
そんな彼らの心情を察したキジャは真っ直ぐ紺碧色の眼差しを彼らに向けた。
「そなたらが守ろうとしたものもわかっている」
「ありがと…キジャ」
キジャのその言葉に彼らは目を伏せると切なげに微笑んだ。