爆発する感情
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「ふぅ〜、やっと終わったね」
「流石に疲れたよ」
乱戦が終わり静まり返った甲板でジェハとルイはホッと息を吐きだしていた。が、唯一ハクだけは仙水の方を鋭い目つきで眺めていた。
「「…ハク??」」
呼ばれたハクはハッと現実に引き戻された。そのハクを心配するようにジェハとルイが顔を覗き込んでいた。
「どうしたんだい?」
「めずっらしい…
もしかして疲れた??」
「嫌な予感がする
すぐに姫さんとこに戻るぞ」
ちょっとからかおうと思った2人はノッてこなずに踵を返したハクをマジマジと眺めてしまう。そして2人は困惑しながらも顔を見合わした。
「………」
「………」
嫌な予感がする…
両者がハクに対して感じたことは同じだった。今の彼を野放しにしておくのは危なっかしい。ちょっとでもキッカケがあったら暴れだしそうな勢いだ。そのトリガーは間違いなく”彼”であろう。
「どーする…」
「とにかくハクを追いかけよう」
このままだと必然的に”彼”とハクが対面するのは時間の問題であろう。どうしたものか…。だが、考える暇はない。2人は慌てたようにハクを追いかけてユン達の待つ船へ飛び乗った。
一方、ヨナたちは襲撃に会いながらも撃退しつつ港付近を捜索していた。付近には沖合の異変に気づいた民衆がごった返していた。その中を歩いていたヨナは自分に向けられる殺気に大きく目を見開いた。
殺
殺す
絶対に…殺す
アンタの顔忘れない…
怨念のように脳裏に警告が響き渡る。それにヨナは動くことができなかった。
「娘さん!!」
少し遅れてゼノが彼女の名を呼ぶ。そしてゼノは近づく殺気から彼女を守ろうとヨナの背後に立った。そのゼノの前方には身を屈めて剣を構えて勢いよく近づくヒヨウの姿があった。
ニヤリと笑うヒヨウの不敵な笑み。ヨナは恐怖のあまりゼノの背にしがみついた。
ゼノ!!
ゼノが一突きされてしまう。その光景を見たくなくてギュッとヨナは目を閉じた。だが、恐る恐る目を開けたヨナの視界に映ったのは全く別の光景だった。
庇うゼノの前に大きな背中。
2人を庇うようにヒヨウとの間に立っていたのはハクだった。
ヒヨウが突き刺した剣は咄嗟に庇ったハクの左腕を貫いていた。そのハクは痛みに声を上げることも表情を変えることなく目の前のヒヨウを形相な顔で睨み返していた。
「な…
う…動かない」
剣を止められたヒヨウは突き刺さった剣を抜こうと藻掻く。が、一向にその剣は全く動く気配がなかった。
「ど…退きなさいよ」
「私は…
その女に用があるんだからぁ!!」
癇癪を起こしたヒヨウは叫び散らす。が、無表情で見ていたハクは無言のまま目の前の男の頬に拳を勢いよく振り下ろした。
「……」
ヒヨウはその一撃で気を失い倒れ込む。が彼のことなど端から眼中になかったハクは興味なさげに彼に背を向けた。そして、彼はある人物に向き直ると無言のまま突き刺さったままの剣を引き抜いた。刺し傷からの夥しい大量の出血。その出血の多さに不安になったヨナは声を掛ける。が、今のハクにはヨナの言葉は届かなかった。ヨナに振り返ることなく、ハクの殺気立った青藍色の眼差しは目の前の男を射抜いていた。
「ス…ウォン…」
……ヨナ姫に聞いてみるといい
その目で王の死を確かめられたのだから
憎き相手スウォンを捉えた瞬間に怒涛の勢いであの時の記憶がハクの脳裏で駆け巡る。その記憶が更にハクの怒りを増させていく。押さえられない憤りを目の前の彼にぶつけるかのように彼の名を震わした声で呟いたハクは、一歩一歩足を踏みしめ前に歩き始めた。そんな彼を見てスウォンと共にいた部下が剣を構えて立ちふさがった。
「ま、待て…
止まれ!!
それ以上進むのは許さん!」
声を震わせながらも彼らは警告をする。しかし、ハクが歩む歩は止まらなかった。
「…止まれと言っている!!」
声を荒げて1人がハクに剣を振り下ろす。が、その剣は呆気なく避けられて彼は強烈な一撃を頬に喰らうのだった。その一打で彼は吹き飛ばされて近くにあった建物の壁に激突しズルズルと力なく地面に座り込んだ。
「き…貴様っ!!」
それを見たもう1人が横から斬りかかる。しかし、その彼の一手はハクの手により止められた。彼の手を右手で掴んだハクはそのままその手に力を入れていく。
ミシ…ミシ…
「やめ…」
本来なら聞こえるはずがない骨が軋んでいく音が彼の恐怖心を煽った。抵抗しようにも彼の手から逃れれず恐怖で蒼褪める男。だが、ハクは気にする素振りを見せることなくそのまま彼の手を握りつぶした。
ゴキッ
「うわぁあああああ」
手の骨を砕かれた彼はその手の痛みに絶叫を上げてしゃがみこんだ。そんな彼に目をくれることなくハクは前へ歩き出そうとする。しかし、そのハクの目の前には両手に剣を携えたジュドが立ち塞がっていた。
風を切り裂くうねり音を上げてジュドはハクの胸を真横に切り裂いた。その途端ハクの胸元から血しぶきが噴き出した。その光景に、ヨナとユンが青ざめた表情で彼の名を叫ぶ。しかし、ハクはその一撃で倒れることはなかった。
よろめくこともなく、斬られたことが嘘のように立ち続けるハクはギラギラとさせた青藍色の双眸でジュドを射抜いた。
そのハクの立ち姿に目を見開くジュドにハクは無言のまま彼の腹部を蹴り上げた。
ドッ!!
その一蹴りの衝撃で鮮血を吐き出すジュドをハクは握りしめた拳で殴り飛ばした。飛ばされたジュドは壁に勢いよくぶつかると衝撃のあまり再び吐血をして地面に力なく倒れ込んだ。
それを確認することもせずハクはゆらりと憎き相手に歩を進めた。ポタポタと刺し傷から流れ落ちる血がハクの進んだ地面に赤い斑点を残す。
普通の人ならば大量の出血で倒れているはずであろう重症にも関わらずハクは前へ歩き続けた。スウォンへの憎き感情が彼を駆りただせていた。そしてハクはスウォンに向けて勢いよく拳を振り下ろした。
が、それは慌てて到着した者達の手により止められた。
1人はハクが殴ろうとした相手を守るように両手を広げて
もう一人は勢いよく振り下ろそうとしたハクの腕を掴んで