爆発する感情
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「ねぇ、ちょっと借りていいかい?」
「えぇ…構いませんよ」
出発した船でルイは水の部族兵から弓一式を受け取っていた。受け取ったルイは船頭に上がると、おもむろに遙か遠くの船の影を目掛けて弓を引いていた。
「いっ…一体何を!?」
「まぁ見てなって…
恐らくこの中で誰よりも僕の弓の腕は立つからさ」
軽く笑ったルイが引く矢尻には赤く燃える炎が点火されていた。その弓をルイは迷いも躊躇もなしに放った。その弓は勢いを失って海に落ちるどころか、グングンと勢いを増して遙か遠くの船へと真っ直ぐに飛んでいくのだった。
*****
「カザック様!!」
「何だ」
「…帆がッ!!」
「なんだ…騒々しい」
「帆がッ!!
帆がッ!!燃えています!!」
「なぁ!?なんだと!!」
カザックはその報告に飛び跳ねるように立ち上がる。そして周囲を囲む船隻を見上げた。すると、そこにあるはずの帆がメラメラと赤く燃え上がっていた。
「今すぐ消せ!!」
「やっ…やってます!!ですがッ!!」
「…なんだ!!」
「火矢が続々と…」
「はぁ?何を言っておるのだ
矢に狙われるなどあるわけがなかろうが!」
「でッ…ですが!!
今もなお!!」
そう言っている傍らでカザックらが乗っている船の帆が大きな音を立てる。その音に互いに顔を見合わした2人は恐る恐る視線を上に上げる。そして、その光景を目の当たりにした2人の顔から血の気が失せていった。そんな2人の目の前でどこからか勢いよく飛んできた火矢が帆を射抜いていく。そして、風に揺られる帆が赤く燃え上がり黒く焦げていった。信じられない光景。だが、現実を突きつけるように鼻につくのは焦げ臭い匂いだった。
「あ…あああああのっカザック様!!」
「今度はなんだ!!」
青褪めた表情のままカザックは、悲鳴に近い声が上がった後方を振り向く。するとそこにはどこから現れたのかわからない二人組がいた。
深緑色の長い髪を後ろで一括りにしている青年が、白髪の青年をおぶっている。その光景に緊急事態にも関わらず拍子抜けしてしまった。
「え…何?お前達どこから入って来た?」
「それ以上になぜおんぶ?仲良し?」
「僕ももっと美しく登場したかったよ…」
そのツッコミに対してジェハはげんなりとした表情で嘆いた。そんな中、彼らがどうやって船に上がってきたか目撃していた者はガクガクと身体を震わして口を開く。
「こ、こいつら向こうの船から飛び移って…」
「嘘つけ
飛び移れるか」
そんなやり取りを繰り広げる最中、彼らの頭上に影が掛かる。その急な影に不思議に思って一同は顔を上げる。すると宙には潮風で濃紺色の髪を靡かせる1人の青年がいた。彼は両手で膝を抱えるとクルクルと宙を回りながら華麗に侵入者の彼らの傍に着地をした。
「…なっ、なんだ!?お前は!!」
「どっからやってきた!!」
「おっまたせ〜」
形相な顔で睨みつける彼ら。だが、ルイは気にする素振りを見せることなくジェハとキジャに笑いかけた。
「…僕もルイみたいに華麗に登場したかった」
「別にその登場の仕方も目立ったんだからいいじゃないか」
「…ルイ
流石の私も…ちょっと」
「え?キジャも!?
まぁまぁ肝心なとこそこじゃないから」
「「そういう問題じゃない!!」」
「おい!だから…ッ!!」
敵陣の中にいるとは思えないやり取りを繰り広げる3人。そんな彼らに額に青筋を浮かべたカザックがいい加減にしろと叫ぶように声を荒げた。
「え?どこからって??
あそこからだよ??
見えない??」
その声にようやく振り返ったルイがキョトンとしながらある一点を指差した。その指差す方へ一足先に視線をやっていた部下がカザックを呼ぶ。
「カザック様、あれを…」
「ん?」
それでようやくカザックは海へ視線をやった。するといつの間にか船が隣接されていた。そこにいたのは漁師でも水の部族の兵士でもない。船に乗って得物を構える彼らにカザックは後ずさりした。
「あ、あれは兵士でも漁師でもないぞ!?」
「「海賊だよ」」
そんなあたふたし始める彼らに宣戦布告をするかのように妖艶の笑みを浮かべたジェハとルイは口を揃えて久々の言葉を紡ぐのだった。