爆発する感情
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「ハク」
警戒しながら海を眺めていたハクは名を呼ばれ振り返る。すると、ユンを抱えて舞い降りてきたジェハの姿と彼らの後を追って懸命に走ってくるキジャの姿を捉えた。
「戻ったか」
「やあ、盛り上がってきたじゃないか
また暴れ時かな」
だが、その一行の中にヨナの姿が見当たらない。すかさずハクはそのことを追求した。
「…姫さんは?」
「途中でリリに会ってね
船を集めてくるって別行動中」
ジェハの背から降りたユンが簡潔に事情を話した。
別行動なのはわかった。だが、戦力がこっちに固まりすぎていて腑に落ちないとハクは声を上げた。
「ちょっと待て
タレ目も白蛇もこっちに来たのか」
「リリちゃんには腕の立つ用心棒がついてたみたいだし、僕らはあの船隊を相手にしなきゃならないからね。」
「用心棒?よく知らん奴が信用出来るか
俺が行って…」
ジェハの言葉に眉間に皺を寄せたハクは、誰も行かないなら俺がとヨナの元に向かおうとする。しかし、踵を返したハクの耳に力強い一声が入る。
「信用出来る」
それにピタッと足を止めたハクは背後を見る。
「ゼノが黄龍の名にかけて守ると言った
だから大丈夫だ」
その言葉にハクはヨナの元に行くのをやめる。が、よくよく見たらもう1人いないことにハクは気づいた。
「おい
ルイの姿もみえねーが…」
「あぁ
ルイなら一足先に交渉に行かせたよ」
「交渉??」
首を傾げるハクにジェハは小さく笑みを浮かべた。
「船を沖合に出してもらう交渉さ
こういう話において、ルイの右に出る者はいないからね」
そう言うとジェハは海に背を向けた。
「さて、僕とユン君も話をつけに行ってくるよ」
そして、再びユンを背に乗せたジェハはルイに合流するために跳びあがった。
*****
「…おい、本当にそいつらを船に乗せるのか?」
「「もちろんさ!」」
漁師に話をつけてくると飛び出した一行が戻ってきたのを確認した途端、ハクはたまらず引き連れてきた者達を見て半信半疑で尋ねた。が、その言葉にジェハとルイは爽やかな笑みで言い返した。
「ハク…見縊ってはいけないよ
彼女達は伝統ある仙水の海女ちゃん達さ」
「「「「よろしく~♡」」」」
彼らが連れてきたのは仙水の海女。それを見てハクはげんなりと呆れた表情を浮かべる。
「集団見合いなら後にしろよ」
「やだな、ハク
僕の企みじゃないよ」
「こんな緊急事態に茶番を繰り広げるわけがないだろ…」
ほくほくと嬉しそうな満面の笑みを浮かべながらもジェハは否定し、その横では心外だとルイが深い溜め息を吐き出していた。それにわかっているとハクはジェハを放置して疑問をぶつけた。
「リリの用心棒って奴が海女を船に乗せろって言ったんだろ
…一体どういう奴だ?」
「んー…」
その言葉に瞬時に真面目な表情に戻したジェハが顎に手を置き考え込む姿を見せた。そしてジェハはスウォンのことを思い浮かべつつ言葉を選びながら感じたことを伝えていった。
「何ていうか指示に無駄が無いんだ
あれは命令し慣れてる感じだね
信頼出来ると思ったのは僕らの勘だよ」
「大丈夫だよ、ハク
自分で言うのもなんだけど…
信頼できるか否か判断する目は誰よりもある自信がある
だから、僕らの勘を信じて構わないよ」
未だ納得がいかなそうな表情のハクに、ジェハとルイは柔らかく微笑んでみせた。その言葉にハクは真っ直ぐ彼らを見据えたまま黙りこくった。
そんな彼らの背後からぞろぞろと集団がやってきて、恐る恐る声を掛けるのだった。
「あの…貴方達はリリ様のお知り合いですか?」
「え…そうだけどあんた達は?」
不思議そうに振り向いたユンが尋ねる。その問いに対して彼らは一同が驚くような所属を名乗るのだった。
「我々は仙水の駐屯兵団です」
「えぇっ!?」
予想を遥かに超えた言葉にユンは驚きの声を上げる。それにハクらは一体どうしたと振り向いた。
「これよりあの船隊を撃退すべく出航します
戦闘の際は貴方方の指示に従えとリリ様より仰せ付かりました」
「リリが!?兵を動かすなんて…
リリって何者?」
意表を突かれたユンは、リリの正体を勘ぐり始める。そんなユンの隣に立ったハクは疑いの眼差しを向けた。
水の部族長、ジュンギ将軍の教育のたわものか水の部族の兵士はキチッとした服装をしていた。だが、今目の前にいる彼らは同一人物らとは思えないほどボロボロの服装をし、古びた得物を携えていたのだ。
「お前ら、本当に水の部族の兵士か?」
「あ、これは…」
彼らは己達の装いに苦笑を浮かべた。どこからどう見ても、兵士というよりゴロツキにしか見えないのだ。
「賊を装えと言われたものでして...」
スウォンが考えたのは、賊を装って船隊を追い返す策。水の部族が軍を動かしたとなると南戎に戦の大義名分を与えてしまうのを防ぐためにゴロツキに扮するようにお願いしていたのだった。