黒幕との鉢合わせ
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「ヨナ!!」
熟睡し目を醒ましたルイは、ジェハを伴い隣室の襖を勢いよく開けた。すると、そこには傷口に薬を塗ってもらっているヨナがいた。
「ルイ!!」
振り返って大きく目を開いたヨナは立ち上がろうとする。が、それを薬を塗っていたユンが制した。
「ヨナ、動かないで」
「...ルイは動いてるのに?」
「ルイの生命力が異常!!
普通なら有り得ない!!」
バサッとユンは切り捨てる。その言葉にムスッとしながらもヨナは大人しく留まった。そんな彼女にルイは駆け寄り、傍に屈んだ。
「ヨナ...
ゴメン...ゴメンね
守りきれなくて」
「何謝ってるのよ
ルイはちゃんと守ってくれたわ」
「で...でも...」
納得行かないと渋るルイにヨナは真っ直ぐ視線をそらさずに言い切った。
「これは私の傷よ
ルイが気負う必要はないわ」
私が選んだ道だから
私がこれから歩んでいく道だから
「ねぇ、ルイ見てくれた?
私の剣が通用したのよ
ハクやルイに教えて貰ったお陰よ」
誇らしげに嬉しそうに話すヨナ。そんな彼女の様子に、ルイは毒気を抜かれてしまい微笑ましげに目を細めて相槌をするのだった。
「ハク、何食べてるんだい?」
「煎餅」
楽しげに話し始めた二人を横目にジェハはボリボリと音を立てて咀嚼するハクの隣に腰掛けた。そんな彼に対してハクは、テメェも食うか?と呑気に足元に置いていた煎餅を差し出した。それに呆れながらもジェハは受け取るのだった。
*****
「姫様、只今戻りまし…」
「お帰りなさい」
「あっ…キジャ!」
「ルイ!目を醒ましたのかっ…」
勢いよく襖を開けて顔を覗かせたのはキジャ。そして彼は元気そうなルイの姿を見て嬉しそうに目を瞬かせた。だが、目の当たりにした光景に徐々に彼は顔を真っ赤に染めた。
「も、申し訳ありません!
すぐに退出しま…」
「おっ、姉ちゃん!元気そうで良かった!
娘さん!入っていい??」
「いいわけあるか!!」
「いいわよ!
なにかわかった?」
実はね!っとキジャに遅れて顔をのぞかせたゼノはズカズカと室内に足を踏み入れた。そんな彼に叫び声を上げながらキジャは恐る恐る室内に足を踏み入れた。
「もう動いてよいのか?」
「うん、十分休んだから平気よ」
「姉ちゃんはもう薬塗ってもらったのか?
塗ってないならゼノが薬塗ってあげる」
「もうとっくのとうに塗った」
「ちなみに僕が包帯を…」
「控えんか、そなた達っ」
目の前で繰り広げられるやり取りにキジャは1人顔を真っ赤にして手で覆い隠した。
そんなやり取りを横目にハクが話を進める。そのハクの視線はヨナの方向に向いていて、それを今更気づいたヨナは頬を染めて毛布を手に取り隠した。
「それよりヒヨウの居場所は?」
「水麗で捕えたヒヨウの部下に吐かせたところ、奴は四泉の他に仙水でも幾つかの店を持っていてそこを拠点に…」
「ハク、向こう向いてて」
「別に色気ねぇ姫さんの身体なんか今更さら…」
ハクの視線に耐えきれずヨナは声を上げる。が、何を今更とハクは一向に逸らすことをしなかった。そんな彼の頭上にルイが拳を落とす。
「向こう向きなさいよ、バカハク」
「向いてて」
「そうだ、全員向こうを向け!!」
2人の言葉に続けて、胸を張ったキジャが声を大にした。それに渋々とハクは視線を外した。それを確認すると落ち着いたヨナはホッと胸を撫で下ろした。
「ねぇ、仙水ってどんな所?」
「ここと同じ港町だよ。
昔は美しい観光地だったんだけど、今は…」
「ヨナ…」
説明をしていたジェハの言葉の途中で、部屋の外にいたシンアが入ってくる。その声に振り返ったヨナは彼の後ろにいたリリの姿に目を瞬かせた。
「リリ!!」
「…傷の具合は?」
「大したことないわ」
「貴女は??」
「もう大丈夫よ
お気遣いありがと、リリちゃん」
2人揃ってケロッとしていて平気そうに微笑む彼女らにリリはあの惨状を思い出し顔を歪めた。
「というか貴女、女だったのね」
「……」
「見事に騙されたわ」
そういえばとリリが棘のある言葉を投げた。それに言い返す言葉が見当たらずルイは苦笑した。
「ゴメンね、嘘ついてて
それより、テトラさんどう?」
「テトラは今絶対安静
でも貴女のお陰で一命はとりとめたわ」
「そう…良かった」
ホッと胸を撫で下ろしたルイとヨナ。そんな彼女らを横目にリリは俯きげに言葉を付け足した。
「その事なんだけど、テトラを水呼で…
あ、私の家は水呼にあるんだけど、そこで休ませようと思ってるの」
「水呼の都…確かにその方が安全ね」
その言葉にヨナは顎に手を置いて考え込んだ。大して、”水呼の都”に疑問を抱かないヨナ。それに対して、ユンとルイは”水呼の都”が出てきたことに、お金持ち!!ッと大きく目を見開いた。
が、すぐに立て直したユンはそういえばと口を開いた。
「水呼の都といえば水の部族領
沿岸部がこんな状態なのに部族長は何をしているんだろう」
その言葉にリリは表情を曇らせて肩を震わした。だが、そんなリリに気づくことなく一同は話を進めていく。
「アン・ジュンギ将軍…
どうしているかは知らんが、冷静で慎重な人物だ」
「相手は戒帝国
ハクが言うような人物なら、迂闊に動かないでしょうね」
「だが自分の部族がこの様な目に遭っているのに」
彼らの話が、近くで聞いているはずなのに小さく聞こえる。リリは強張った表情のまま俯いていた。そんなリリは、ヨナに呼ばれたことで顔を上げた。顔を上げたリリが見たのは真っ直ぐな紫紺色の眼差しだった。
「リリ…私達は仙水に行くわ」
「仙水へ?」
「ヒヨウは四泉の他に仙水でも商売をしているらしいの」
「確かに仙水の沿岸部も治安が悪くて商売が出来ないと聞いたわ
あの男が仙水に…」
「きっと四泉並かそれ以上にナダイの被害は広まっているでしょうね」
遠い目で嘆くようにボヤいたヨナは、スゥと眼差しをリリに向けた。
「何としてもヒヨウを止める
それを水の部族を救う第一歩としたい」
そう告げたヨナの決意が籠もった強い眼差しにリリは何も言い返すことができなかった。そんな彼女の心情を知らないヨナはフッと頬を緩めるとリリに柔らかい笑みを向けた。
「だからリリ、ここでお別れね
大丈夫、必ず彼らを水の部族から追い出す
リリは早く安全な所へ
今まで危険に巻き込んでしまってごめんね」
その言葉に、リリはハッと息を呑む。
”安全なところへ”
何を言ってるの?
私も、貴方達と一緒に戦う!!
本当はそう言いたいのに…
リリは喉の奥でつっかえて言葉に出せないことに、不甲斐ないと1人悔しそうに俯いて拳を握りしめたのだった。