黒幕との鉢合わせ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「…ヨナッ!!」
逃げるではなく戦うという選択をしたヨナの姿を横目に捉えたルイは、切羽詰まった声で彼女の名を呼んだ。そして、すぐに助太刀しようとルイはもう片方の手で暗器を取り出そうとする。が、それを目の前の男は許さなかった。
「...ック」
「よそ見するなんて余裕綽々だなぁ〜
そんなことしてると足元掬われるぜ!」
ニヤリと笑みを浮かべた男はルイの足を払おうとする。が、瞬時に対応したルイはそれを飛んで回避し距離を取った。
これじゃあヨナのもとに行けない
ルイは軽く舌打ちをした。
今のヨナが立ち向かって勝てる可能性は限りなく低い。急いで目の前の男を倒さねばとルイは短剣を持ち直した。
「こねぇーならこっちからいくぜ!」
「誰が行かないって言った...」
雄叫び声を上げて剣を振り上げる男に、目を細めたルイは地を這うような低い声を出す。そのルイの左手からはいつの間にか暗器が消えていた。暗器が投げられていた、それを男が気づいたのは振りおろそうとした剣と暗器がぶつかり高い金属音が鳴った時だった。
「...脇がガラ空きだな」
その異様に近い声に男は顔を引つらせて視線を下に向ける。すると、ついさっきまで離れた場所にいた相手が懐に潜り込み、不敵な笑みを浮かべていたのだ。
懐に潜り込んだルイは、ニヤリと笑うと容赦なく剣先を振り上げた。途端に斬った場所から血飛沫が噴き出した。ルイは痛みで悶絶する男を冷酷な目で見下ろしながら、顔に飛び散った血を手の甲で拭った。
そんなルイを他の男達が取り囲む。それを視界に捉えたルイは額に脂汗を滲ませながら、汗ばんだ手で剣を握り直し再び構えた。
早く!!ヨナのもとへ!!
焦る気持ちをなんとか押し止め、ルイはがむしゃらに剣を振り続けた。
一方、ヨナは剣を受け止めたものの耐え切れず弾き飛ばされていた。
「や…やめなさい…あんたじゃ無理よ…っ」
それでもヨナは震える足で立ち上がると剣を構えた。逃げず襲ってくる男の剣を受け流し始めた。
「リリっ、私から離れないで!」
ヨナはリリを守りながら襲いかかってくる剣を受け流した。
凛々しい横顔を見てリリは息を呑む。
「小賢しい!!」
ヨナの姿に焦燥感と苛立ちをつのらせた男は、言葉と剣に感情を乗せ畳み掛けていく。その手数が増え増々重くなっていく剣を必死に受け流していたヨナは顔を歪ませた。
「何を守れる気でいる!?
先刻から俺の一撃を受けるだけで精一杯のくせに。
勝敗の帰趨は明らかではないか!」
「…くっ
確かに私は強くない…
でもあなたの剣は鈍い
私はあなたの百倍速くて重い剣を知ってる」
ハク、教えて…
力の無い私が力の勝る者に勝つにはどうしたらいい?
ルイ…
どうすれば貴女のように守ることができるの?
ハク、いつかお前の隣で闘えるくらい強くなるには
どうしたらいい?
剣同士がぶつかりあい鈍い金属音が響き渡る。その時、必死になっていたヨナの脳裏にまるで彼女を導くようにハクの声が響いた。
脇がガラ空きだ
蹴りが来るぞ
姿勢を低く
蹴りを避けきったら軸足を叩け!!
その脳裏に響き渡った言葉の通り、ヨナは動いていく。そして、姿勢を屈めて避けたヨナは剣を高く振り上げ、男の左足へ振りぬくのだった。
「ぎゃぁぁ!!足が…ッ」
切られ態勢を崩し床に倒れ込んだ男は、手に持っていた剣を手放すと膝を抱えて呻き声を上げた。そんな彼にヒヨウは小さく舌打ちをする。それを脇で見ていた別の男は、ゆっくりと剣の鞘を抜いた。
一方、目の前の敵を倒したヨナは疲労困憊。床に刺した剣を杖代わりに膝をついたヨナは懸命に息を整えていた。そのヨナの背後には不気味な影が忍び寄っていた。
彼が持つ剣が振り上げられる。それを横目に捉えたルイは襲いかかってくる剣先を押し切り跳ね除けるとその勢いのまま彼女の元へ駆け出した。
「ヨナ!!」
ルイの切羽詰まった声にビクッとヨナは顔を上げた。その時既に目の前で彼女目掛けて剣が振り下ろされていた。
斬られる…ッ!!
そう思ったヨナは恐怖で目を瞑る。が、一向に鋭い痛みは襲い掛かってこなかった。ヨナは恐る恐る目を開ける。すると、彼女の目の前に大きく映ったのは、ルイの背中だった。だが、彼女の左脇腹周囲の衣服が真っ赤に染まっており、そこからポタポタと血が流れていることに気づき、ヨナは目を大きく見開いた。
「ルイ!!」
「…だっ、大丈夫?ヨナ」
呼ばれた声に反応してルイが、チラリと背後にいるヨナに視線をやる。その少し身を振り向かせたルイの姿にヨナは表情を青褪めた。
「…ッ!!その傷…ッ」
息を呑んだヨナの瞳に映ったのは、裂けられた服の隙間から覗く白い肌に横一線につけられた大きな切り傷。そこから夥しい量の血が流れ落ちていた。
「あぁ…これね…
ちょっとヘマしちゃってさぁッ!」
自嘲気味に笑ったルイは、受け止めていた剣を跳ね返すと、勢いそのまま目の前の男を斬り捨てた。
「…ッ!!」
斬られた箇所はドクドクと脈を打つように熱を持つ。止めどなく流れる血がどんどんルイの体力と意識を奪っていく。が、ルイは大きく息を吐き出して虫の息をしつつもヨナの前で立っていた。が、ルイの身体はフラッとふらつき床に倒れてしまう。
「…ッ!!ルイ!!」
あぁ…最悪…
指一本すらマトもに動かせないや
薄れていく意識の中、ルイは自分の身体を抉るように投げつけられた刃先に筋弛緩作用の毒が塗られていたことを悟った。
そしてあの時、ヨナの元に駆け寄るのが必死すぎて背を向けた敵への注意を疎かにした自分をルイは激しく呪った。
その動けないルイは意識が落ちていく中、絶対に回避したかった光景を目の当たりにしてしまった。
恐怖で動けないリリを庇って覆いかぶさったヨナの背中に剣が振り下ろされる
大きく斜めに斬られた箇所からは、血飛沫が飛び散った
その一瞬の映像は、彼女の罪悪感を更に膨らませた。