阿波の海賊
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「さ・て・と…」
情報収集のために街に繰り出していたルイは眼光を光らせた。クムジが差し向けた7隻という普段よりも多い数を目の当たりにした一行はその後作戦会議を開いた。
今回は、クムジにとって大事な取引が直近に控えていると睨んだのだ。そしてこの取引には必ず頭であるクムジが表に現すはずだ。クムジを落とせば腐った阿波の街を救える。長年の悲願の達成のためにもルイは今まで以上に気合いを入れて聞き込みを開始する。
クムジのお得意様の戎帝国に対する人身売買の商品を手に入れるために重要なのは上玉の女性を引き寄せるためのカッコウとなる餌…
「ねぇ?ちょっとそこの君…」
ルイは若い女性をターゲットにして巷で話題になっていることを尋ねていった。
「最近、割のある仕事があるお店があるって女子たちの中で話題になっているわ」
「へぇ〜!
そのお店の名前ってわかる?」
女性達に笑顔を振りまき礼を述べ彼女たちに別れを告げ背を向けると、ビンゴとルイはほくそ笑んだ。このお店から求人がいつまでなのか尋ねれば取引日時がわかるはずだ。ルイは早速そのお店がある場所に移動した。
「へぇ〜立派なタチ構え…」
お目当てのお店をルイは路地裏からそっと覗き見した。門前だけみれば立派でいかにもいい仕事をさせてくれそうなお店だ。だが実際、一度入れば人身販売収容所の入り口だ。クムジの息がかかったものに品定めされて選別されていく。
想像しただけで悍ましいとルイは翡翠色の眼差しを細めた。そのルイの殺気立つ背に外套を纏った少女が声をかけた。
「……ルイ??」
「…!?ヨナ!!なんでここに?」
ビクッと体を震わしたルイは背後を向く。するとそこにはいるはずがいないヨナがいてルイは驚きの声を上げた。
「ちょっと、僕は無視かい?」
「ごめんごめん
目に入らなかったよ…」
だが、その場にいるのはヨナだけではなく彼女の背後にはジェハがついていた。彼のため息混じりの言葉にルイは平謝りをした。実際、目に入っていたがジェハが情報収集に来ることは知っていたためあえて触れなかったのだ。
「どうやらここで間違いないみたいだね…」
「そうだね…って…
どうしてヨナがいるの?」
「連れてきてもらったの!!」
「危なくないかい?」
「僕がいるから平気さ」
ヨナは役に立つために色々な場所を転々としていたのだが何もすることがなく右往左往していたのだ。その様子を見かねたジェハが情報収集に同行させたのだ。そして彼らは実際にこのお店に入った少女から証言を得てここに来ていたのだ。
「私もね役にたちたいの!!」
「……そっか」
ジェハの言葉を聞いても納得する素振りを見せないルイにヨナは真っ直ぐな紫紺色の眼差しを向けた。その信念が昔の己に重なってみたルイは困った表情を浮かべた。
「じゃあ、ジェハから絶対に離れちゃダメだよ」
「…わかってるわよ!!」
ルイは柔らかくヨナに微笑んだ。その言動にヨナは子供扱いした気分に陥って思わず頬を膨らませた。そんなヨナの様子にルイは小さく笑いヨナから視線を外すと、切り替えるように真剣な表情を浮かべるのだった。
「さて…聞き出したところだけど…」
「残念なことに僕とルイは顔が割れているし指名手配中…」
「じゃあ私が!!」
「珍しい赤髪を持つヨナは目が付けられる可能性があるから危険だから却下ね」
うーんと3人は頭を捻らした。どうやって店の前に佇む店員らしき男性から働き手の募集の期限を聞こうかと。
「まぁ、僕に任せて…」
あることを閃いたジェハがそう言うと路地裏から出た。そしてジェハは通りかかった人物に一声かけ始めていた。
「…早速、ヨナから離れてるけど…」
言ってくれれば自分がやったのにとルイは頭を抱えこむ。その横ではヨナが小さく笑っていた。
「ルイだからじゃない?」
「と、言うと?」
「ルイだから私のことを任せて行ったのよ!
信頼されてるのね!!」
そっか…ヨナのような第3者から見たらそう見えるのか…
ルイは思わぬ視点からの指摘に目を見開いて驚いた。
「…信頼得てるのかな?」
「え??」
俯いたルイの口から出た声は悲壮感を滲ませていて、逆にヨナが驚きの声を上げた。触れてはいけないことに触れてしまったのかと動揺するヨナにルイは気づくことができなかった。
「聞き出してきたよ…って
なんでこんなに重たい空気になってるの?」
もちろん戻ってきたジェハはさっきと違う雰囲気に驚きの声を上げる。その声にハッとしたルイは苦笑いを浮かべた。
「ジェハの気の所為じゃない?
で?どうだった?」
「明後日午後までらしいよ」
ジェハの答えにヨナが不思議そうに口を開いた。
「どうやってジェハは聞き出したの?」
「ここで働きたいという若い美女がいるんだが、いつまで募集しているのか?って聞いてもらったんだよ」
ヨナの問へのジェハの説明が終わったのを確認すると、ルイは目を光らせて、ジェハと目を交わせあった。
「さて、募集が明後日午後ってことは…
決行日は…」
「「明後日の夜」」
「凄い!!息ピッタリ!!
でもどうして二人はそう思ったの??」
ジェハとルイの推測の日程が一致する。この息ピッタリな二人の判断材料が気になってヨナが興味津々に尋ねた。そんな彼女に、ジェハは意地悪そうな笑みを浮かべて問いを問いで返した。
「どうしてだと思う?」
「コラ…
ヨナに意地悪しちゃダメだろ…」
ニヤリと笑うジェハの後頭部に軽くルイは拳を落とすと、ヨナに微笑みかけた。
「クムジは欲深い男なんだ...
だから、あの男はいい商品が手に入るようにギリギリまで待つはず。
そして船が出るのは日が落ちた夜中。
この2点から推測したのさ」
「ジェハと違ってルイは優しいわね!」
「ちょっと、僕がいつヨナちゃんに意地悪したの…」
「どうやら無自覚らしいね」
抗議の声を上げるジェハに、ルイはヤレヤレと肩を竦めて見せるのだった。