龍であり人であり
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「あれ?なんでこんなところに…」
ルイは不思議そうに年輪に置かれた筒を手に取った。マジマジと見る筒からは甘い香りが漂う。その香りは真昼間に嗅いだ匂い。ルイはたまらず眉間に皺を寄せた。
やっぱりあれは嘘か…
瞬時にルイはこの筒の中にある液体はジェハが用意したホレ薬入りの液体だと把握したのだった。
誰にも気づかれないように急いで処分しないと…
そうルイが思っていた矢先、喉を渇かしたキジャが通りかかるのだった。
「ん、ルイではないか
その筒はなんだ?
何やら良い香りがするな」
「こ…これは…」
「すまぬが一口だけ貰えぬか?」
「あ…ちょ!!待った!!」
キジャの登場に顔を引き攣らせるルイ。そんな彼女を他所にキジャは喉の渇きを潤すためにルイの手元にある筒を搔っ攫い液体を口にしてしまうのだった。
「あっちゃ~」
思わずルイは頭を抱えた。そのルイをキジャは熱が籠った眼差しで見つめるのだった。
「…ルイ」
凛としたキジャの声がいつもと違うように聞こえてルイはビクッと身体を震わした。そんな彼女にゆったりとした足取りで近づいたキジャは壊れ物を扱うようにそっとルイの頬に手を伸ばした。
「そなたはホントに魅力的な女性だな」
スゥッと細まった紺碧色の瞳にルイは射竦められ、まるで時が止まったかのように身体を動かせなかった。そんな彼女の肩元にキジャの左手が伸ばされる。
パサリ
薄紫色の紐が取られ、一括にされていた濃紺色の髪が靡いた。元々艷やかなルイの髪。だが、月光に照らされた濃紺色の髪は幻想的で一層美しく見えるのだった。
「とても美しいな
凛々しくて勇ましいルイの美しさに
私は思わず見惚れてしまう」
キジャはゆっくりと右手を大きくしルイの腰に己の手を回し抱き寄せた。
誰かを想い心痛め
そんな誰かの為に躊躇なく手を差し伸べる
だが、自己犠牲を厭わない彼女は傍から見ていて危なっかしい
そんな彼女はヨナと同じように己の手で守ってやりたい存在なのだ。
「そんなルイを
私に守らせてはくれぬか?」
「...キジャ」
ルイは彼の名を紡ぎ目尻を下げた。
「ありがとう
でも、私は守られるだけは嫌」
ルイはキジャをまっすぐ見つめてきっぱりと言い切った。その言葉にキジャは動揺で瞳を揺らした。そんな彼の右手にルイはそっと触れた。
「そんな顔しないで」
「わ...私は...ただ!!」
切羽詰まった声を上げるキジャにルイは柔らかく微笑んだ。
「私にも守らせてよ
キジャの背中」
「え...それって...」
キジャは驚きの提案に瞳を瞬かせる。そんなキジャにルイは今更な気がするけどと半笑いした。
「まぁと言っても今更だね
もう既に背中預けちゃてるしね」
「...ルイ!!」
キジャは嬉しさのあまりルイを思い切り抱きしめた。
「ちょ!!」
「私は嬉しいぞ!!
ルイが少しでも心を開いてくれた気がして」
「キジャ...
くっ...苦しい」
ギブとルイは悲痛な声を漏らしてキジャの背中を叩く。それでも尚離してくれない。その状態にルイは耐えきれず思わず
「グァ!!」
「苦しいって言ってるでしょ!!」
ルイは息を整えながら吹っ飛んだキジャに叫んだ。対して、ふっとばされ木の幹に叩きつけられたキジャは目を白黒させて呆けていた。
「…キジャ??」
「私は今…何をしていた…」
「あ…良かったぁ〜
正気に戻ったんだね」
キジャの様子に、ホレ薬の効果が切れたことを理解したルイはホッと胸を撫で下ろし安堵した。対して、キジャはようやく先程の行動を思い出すと、一気に顔を赤面。そして慌てて赤くなった顔を大きな手で隠すのだった。
「うわぁ〜!なんという失態!!
忘れてくれ!!ルイ!!」
「えぇ〜
ど〜しよっかな〜」
ルイは筒の中に残った液体を破棄しながらおどけてみせる。そんな彼女にキジャは詰め寄るが、ルイは笑いながら華麗に躱していくのだった。
*****
「そーいえば、昨晩
白龍と姉ちゃんが逢引してた」
昨晩の出来事は二人の間で留めようと互いに決めあった矢先。翌朝、見事に晴れやかに笑うゼノの一声により二人の思惑は崩れた。
「「逢引?!」」
「どういうこと?!」
ユンとハクが”逢引”という言葉に目を丸くして驚き、ヨナが興味津々で顔を強張らせたルイとキジャに詰め寄るのだった。
「ゼノ!!
お…お主…どこから見ていたのだ」
「白龍が姉ちゃんを抱き寄せているところからだな」
「もう本当…穴があったら埋まりたい」
喉を鳴らして笑うゼノの一声により、昨晩の情景を思い起こしてしまったキジャは赤面させ身体を丸めてしまう。そのやり取りにルイは大きくため息を吐くと誤解を解こうと昨晩の出来事を簡潔に説明するのだった。
「で?
白蛇に口説かれた感想は?」
「そりゃあ、ドキドキしたよ
キジャって綺麗な顔立ちしているからさ
あんなふうに口説かれたら世の女性はイチコロだよ」
ホレ薬のことを知ったヨナは驚きで目を丸くする。そして、未だに蹲るキジャの様子を心配して彼の元へ。対して、ハクは疲労を滲ませるルイに口を開く。その声に反応してルイはハクに視線を向けるが、口元を吊り上げて楽しんでいるハクの様子を見て困ったように眉を顰めるのだった。
「へぇ〜そうか」
「それにちゃんと口説かれるのは初めてだしね」
「タレ目に口説かれたことはねぇーのか?」
「え??」
突然のジェハの名の登場にルイはキョトンとする。が、その数秒後に「ないないない!!」と笑い声を上げて必死に大きく手を横に振って否定するのだった。それに今度はハクの思考が固まった。
アイツ…意気地なしすぎだろ…
唖然としてしまうハク。だが、頭の片隅ではルイに関しては異常に弱気なジェハが口説いているわけがないと内心呆れながら納得していたのだった。
「ふーん…
だったら今度は俺が口説いてやろうか?
情熱的にな」
座り位置を変えて擦音を立てたハクが横にいるルイの耳元に低く掠れた声で甘く囁いた。だが、ハクの予想に反してルイは動じることなく代わりにハクの後頭部を小突く。
「いって」
「アンタが口説く相手はアッチでしょ」
「あぁ…そうだな」
ため息混じりにルイはキジャのもとに屈む赤髪の少女を指差す。その指を追い視線をハクは投げると遠い目をするのだった。
「それにしてもどうしてあのホレ薬って白龍の鱗だったのかしら?」
「そうなんです
神聖なる龍を妙な薬の名などに使って
許せませんっ」
クルッと顔を二人に向けたヨナが不思議そうに首を傾げる。その一声にガバっと勢いよくキジャが立ち上がる。そして、憤りを露わにするのだった。
「っーか、白蛇
お前くれぐれも昨晩の出来事タレ目の耳に入れるんじゃないぞ」
「なぜだ??」
「ジェハにとっては刺激が強すぎる話だからだよ」
ハクの釘を刺す一声にキジャが首を傾げる。そんな彼にユンが面倒くさそうに口を開くのだった。
「ゼノも
安易に喋るの禁止ね」
「わかってるわかってる」
そしてユンは一番口が軽そうなゼノに釘を刺す。それにゼノはニコニコしながら笑って答えるのだった。
「おおーっ、白龍様っ!
お懐かしゅうございます。
私は白龍の里より各地に派遣された情報屋兼商人です
え?白龍の鱗?
ああ~あれは長老が開発されたんですよ
縁談がなかなかまとまらない白龍様に飲ませる目的で」
「……」
夕方。ようやくホレ薬の効果が切れたシンアとアオが正気に戻ったことでジェハは長い鬼ごっこから解放された。グッタリとやつれた表情をするジェハと事情を把握していないシンアとアオを引き連れ一行は白い鱗を貰ったおばあさんのもとを訪ねていた。そのおばあさんは、キジャの姿を確認すると嬉しそうに頬を緩めた。そんな彼女からもたらされた衝撃の事実。キジャを含めて一行は衝撃のあまり絶句するのだった。