龍であり人であり
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「白龍の鱗を水に溶かして…
ふふふっ、若者をからかうのは年上の特権♡」
緑が生い茂る森の中。1人、皆を出し抜いたジェハは愉快気に水を入れた筒に白い鱗を落とし溶かしていた。
「……」
が、ふと真顔になるとジッと筒の中の液体を眺める。
ルイに飲ませたらどうなるだろうか…
魔が差したような考えにジェハは、ハッと正気に戻ると大きく首を横に振った。
何を考えてるんだ、僕は
こんなものを使ってルイの心を掴んでも意味ないじゃないか
そんなまがい物を望んでるわけじゃない
すぅっと筒を持って立ち上がるジェハは、クスッとルイのことを思い浮かべて笑みを浮かべるのだった。
まぁそれ以前に飲ませようとしたところで
ルイには勘付かれて没収されそうだね
ホレ薬の存在を認知していないならまだしも、こういう件に関しては鋭いルイはこの手は通じない。それをわかっているジェハは早々に標的を別の者へ切り替えるのだった。
「おっ、ヨナちゃん発見♪」
目的の人物を見つけジェハはニッコリと笑みを浮かべる。そして、ジェハはヨナに手渡そうと無邪気な笑みを浮かべて地面に舞い降りるのだった。
「ヨーナちゃん!」
「えっ?」
「喉渇いてない?」
「きゃ…ジェハ!?危ない!!」
だが事態は思わぬ方向へ動くのだった。
*****
うわぁあああああ!!!
森の中で、ジェハの悲鳴が木霊する。それは彼の姿を探していたルイ達の耳にも入ってくるのだった。
「…?!?!」
「
「姫様っ」
一体なにがあったのだろうか?
緊張感張りつめる一行。その彼らの目の前にゆったりとした足取りでジェハが現れた。
「ジェハ、何があったの?」
「ヨナちゃんの所に行ったら
彼女…
弓の練習しててね」
「射られたか??」
「いや
矢は華麗に避けたよ
盲点だったのはその先」
ジェハは淡々とあった出来事を語り始めた。
ヨナの元に駆け寄ろうとしたその時は、丁度ヨナが弓を放ったタイミングだったのだ。その弓はジェハに向けて勢いよく飛んでいく。それを見て瞬時に状況を把握したジェハは右側に上半身を傾けて矢を避けるのだが、足を滑らし筒を手放してしまうのだった。その筒の向かう矛先には丁度シンアとアオがいたのだった。
「というわけで、仮面男とリス一匹が美しい僕の虜になってしまったよ」
キランッと言うジェハの頭にはアオが鳴き声を上げてしがみつき、背後の木の幹からはシンアが顔を覗かせていた。
そのシュールな光景にハクとルイは遠い目をする。
「「おめでとう」」
「ありがとう!
じゃなくて、助けて!」
「自業自得ね」
ジェハは切羽詰まった声を上げて助けを求めた。が、ルイは冷たい一声で一蹴するのだった。そんなルイに詰め寄るようにジェハは声を張り上げた。
「だってルイ!!
彼ずっと近づくでなし遠ざかるでなし一定距離を保ってじっと見つめてて怖いよ!!
なのにリスは常にゼロ距離だよ!!」
「今モテ期なんだと思えばいいよ」
珍しく焦った声を上げるジェハに対して、ユンはポジティブな言葉を掛ける。が、それに対してジェハは小さくため息を溢した。
「僕の恋は踏まれても蹴られても追いかける主義
追いかけられると冷める」
「なんて迷惑な変態だ」
ハクがジェハに白い目を向ける。
こんな奴に惚れられるなんて大変だな
そして、想いを寄せられているルイを秘かに憐れむのだった。
「ホレ薬は?」
「全部彼にぶちまけちゃった」
「もう何やってんのさ
成分分析して戦闘に使おうと思ってたのに」
肝心な代物は?とユンがジェハに尋ねる。が、筒に入っていた液体はシンア達に全てぶちまかれてしまっていた。その事実を知ったユンは目尻を吊り上げた。
その彼が発した本心に対してルイとハクが驚きの声を上げるのだった。
「ごめんね」
「ユン、そこ?!」
「お前どんな闘い方するつもりだ」
そんな彼らは気づくことができなかった。クルリと身体を反転させて背を向けたジェハがニヤリと不敵な笑みを溢していることに。
*****
「なーんてね
実はまだ残ってたりして」
再び1人になったジェハは、まだ隠し持っていた残りの鱗を再び水に溶かしていた。
「どう使おうか。
あのハクのすました顔が崩れる所なんかイイな。
ぜひ見たい」
ホレ薬を飲ませたハクのことを想像しながら愉しげに歩くジェハ。だがその背後にはもちろんシンアがいた。遠くの木の幹に影を潜めていたシンアだが、ゆっくりと確実にジェハに近づいていたのだ。それを感じ取ったジェハの額には冷や汗がジワッと出ていた。ジェハは身の危険を感じてシンアから後ずさりする。
「なっ、なんだいシンア君っ」
「甘い匂い…」
「え…?」
グッと顔を近づけてくるシンアのボソッと呟かれた一声にジェハはハッとする。
ハッ!そうか、ホレ薬の香り…
が、実際には元凶がわかってもこの事態を回避するすべはない。
ホレ薬の香りに誘われるようにジェハに顔を寄せてくるシンアに対してジェハは叫び声を上げた。
「わーっ、シンア君
待って待って!
君とは友達でいたいんだっ!!」
この状況を脱しようとジェハは、シンアから逃げようと跳びあがる。だが案の定シンアは追いかけてくる。そして、2人が消えた場にはジェハが秘かに作ったホレ薬入りの水が入った筒が残されるのだった。