龍であり人であり
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「私はそんな姫様に
「全くないと言いきれる?」
「当たり前だ。姫様は四龍の主たる尊き御方。
そのような邪念は罪だ!!」
「龍だって能力がなければただの
ヨナちゃんも勿論ただの
恋する事を誰が止められる?」
正気を取り戻したキジャとジェハによるやり取りが続く。それを遠い目で眺めていたユンが呆れながら口を開く。
「もっともらしい事言ってるけど、ホレ薬使おうとしている時点で外道だよね
だから、ルイに…」
ルイに気持ちを気づいてもらえないんだよ
「私??」
勢い有り余って口を滑らせたユンは、ハッと目を見開き慌てて口を噤ぎその先の言葉を喉に押し込めた。対して、ユンの口から己の名前が出てきたことにルイは不思議そうに目を瞬かせた。だが、ルイの疑問を答えるような野暮な者はこの場にはいなかった。
「こんなの退屈しのぎの
僕が本気で使うわけがないじゃないか
ハクが要るならあげるけど」
「ばーか
てめぇと一緒にすんな」
ヘラっと笑みを浮かべつつジェハは大げさに肩を竦めてみせた。そして、横目でハクの姿を捉えると彼を試すような口調で話題を振る。が、既に洗濯作業に戻っていたハクは全く動じることをせず洗濯板に向けて思い切り服を擦り付ける力を込めるのだった。
一方、口ではそう言っているものの何をしでかすかわからない彼に向けてユンはジト目を向ける。
「成分が分からないから人に飲ませちゃダメだよ」
「じゃ、毒味しようか」
ユンの言葉に対して、ジェハは表情を変えずに淡々と口にする。その毒味が当たり前と云わんばかりの行動にユンは驚き固まる。そのユンの視界の端で濃紺色の髪が揺れた。
口元に持っていこうとしたジェハの腕は、近寄ってきたルイにより妨げられる。
「毒味なら私がやる」
「だーめ」
バシッと腕を掴んだルイはジェハを見上げる。が、ルイの申し出はあっさりと断られた。柔らかい声と共に軽やかに掴んだ手が離される。
僕がいないならまだしも
僕がいる目の前で危険な真似をさせるわけがないじゃないか
「あ...」
「んー…甘くて砂糖菓子みたい」
離された手を啞然と眺めるルイの目の前でジェハは躊躇なくペロッと鱗を舐めるのだった。
「ど…どう?」
「別にどって事ないね。商人のいたずら…」
不安そうに表情を曇らせてユンが尋ねる。が、特に何も至った変化がみられないと分かると面白くないと言いたげな表情を浮かべてユンに鱗を返そうとする。が、その時突如体調に変化が起こるのだった。
ドクッ!!
「うっ…ぐあ…っ」
心臓が大きく脈を打つ
ジェハは身体を流れる血液の熱さに大きく目を見開くと、頭を押さえながら膝をついてしまうのだった。
「ジェハ!!」
「やはり毒か!?」
血相を変えてルイは慌てて倒れたジェハの傍に屈みこんだ。その反対側に同じく近くにいたキジャが屈みこむと、ゆっくりとジェハを抱き起こした。
「気をしっかり持て。今ユンが解毒剤を…」
そのときジェハがゆっくりと瞼を開ける。ふわふわとした心地の中、桔梗色の瞳にまず映ったのはキジャだった。
「よかったぁ〜
目を醒ました」
「ジェハ、大丈…」
ホッと安堵するルイにキジャ。だが何か様子が違うようなと思う矢先、ジェハの長く細い指がキジャの頬にそっと触れるのだった。
「僕の嫌いなもの…」
「は?」
「掟…鎖…」
「なに?」
「四龍…」
「おい…」
「だから君も嫌いなはずなのに…」
みるみるうちに体勢が逆転。いつの間にかジェハが呆気にとられるキジャを押し倒し馬乗りになっていた。
「なぜかな…君の存在は僕の心をかき乱す…」
「ユン!ルイ!
ジェハがもう手遅れだ!!」
己を見下ろす桔梗色の眼差しは、獰猛獣のようにギラギラと光っていた。キジャは思わず助けを求めようと悲鳴を上げる。が、当然彼を助けようと手を貸し出すものは誰もいなかった。
「大丈夫。割といつも手遅れだから」
「ホントにホレ薬だったんだ」
ユンはこの光景に対して遠い目をしながらも手を忙しなく動かしメモを取る。ルイはこの光景にただただ目を丸くして驚くばかり。一方でハクはというとどうでもいいと云わんばかりに洗濯の作業に戻っていた。
「キジャー!!
ジェハは今ホレ薬効いてるから」
「何!?」
「テキトーに気をつけてねー」
「ちょっと待てーっ」
大の男に言い寄られるキジャに向けてユンは声をかける。そんなユンに対して、首元に埋もれてくるジェハを邪険に思いながらもキジャが必死に手を伸ばし引き留めようとする。が、当然ユンが手を貸すことはしなかった。
「ルイ~~!!
この相棒をどうにかしてくれ!!」
「ん~…ムリ!」
金切声を上げてキジャがルイの名を呼ぶ。が、当の本人はニッコリと笑みを浮かべてキジャを突き放す言葉を突きつけるのだった。
「ええい、やめんか!」
もうこうなったら実力行使。キジャは右手を勢いよく振り上げた。それに対してジェハは、飛び上がって躱し軽やかに着地するのだった。そして、着地した反動を使ってキジャに向かって飛び掛かる。それに応じるようにキジャは右手で対抗しようとする。が、一戦交える展開にはならなかった。
「なーんてねっ!!ふはははははははっ」
ジェハは軽やかにキジャの脇を素通り。楽し気に笑い声をあげてピョーンと飛び跳ねてその場を離れていくのだった。
「ホレ薬は本物だ。頂いてゆくよ♡」
「あのヤロウ、正気に戻りやがった」
「少量舐めただけだとすぐ戻る、と」
「ホントちゃっかりしてるよね、ユンは」
一行を出し抜いたジェハは軽く片目を瞑って見せた。そんな彼が正気に戻ったのは明白。遠くなっていく彼の背にハクが洗濯物を絞りながら鋭い一声を吐き捨てる。対して、ユンは動じることなく一連の起こった出来事を残そうと手を動かしていた。そんな彼の探求心旺盛な行動にルイは半笑いしていた。
そんな中、ジェハが跳んで行った先を睨んでいたハクがあることに気づく。気づいたハクは慌てたようにガバッと立ち上がるのだった。
「急げ!!あっちには姫さんがいる!」
「追え!!
打ち落とせ~!!」
ハクの一声にハッとしたキジャが目くじらを立てて奇声を上げる。そんな二人を先頭に4人はジェハの後を追うのだった。