龍であり人であり
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「何持ってんだ~??」
皆の元に戻ると丁度洗濯中らしく、いそいそとハクは袖を捲くって洗い物、キジャは洗い終えたものを干している最中。その中、ニコニコと笑みを浮かべたゼノが近寄ってくると不思議そうにルイの手の中にあるものを眺めていた。
「”白龍の鱗”だってさ~」
「売られてたものなんだけど、
キジャなんか知ってる??」
「な…?!」
覗き込んできたゼノに見せるようにルイは手のひらを開いて見せた。それを近づいてきたジェハがヒョイッと鱗を手に取った。そんな彼らを横目にユンが知っていそうなキジャに話を振る。が、キジャは干す手を止めて驚きの声を上げるのだった。
「お前、何自分の鱗売りに出してんだよ」
「誰が出すか!」
「これを身につけたらカタブツになるとか、右手だけデカブツになるとか?」
「おいっ」
彼らのやり取りに対して、同じく手を止めたハクが白い目でキジャを見る。対して、ジェハは手に取った鱗を太陽の日に翳して興味なさげに言う。そんな彼らに対してそれぞれ、全く身に覚えがないキジャは額に青筋を立てて否を唱えていく。
「で??
結局それはどんな使い道があるんだぁ~」
3人のやり取りを眺めていたゼノがクルッと身体を反転させ、ルイに興味津々に尋ねる。その一声でピタッと場が静寂化し視線は鱗を持ってきた二人に集まった。その視線の中、ルイとユンは真顔で答えた。
「それがなんと…」
「恋が叶う鱗らしい」
「「ハハハハハハハハハハハッ」」
急に二人が真顔になるものだから、何を言い出すのかと固唾を呑んで待っていた4人はキョトンとした表情を浮かべる。が数秒後に、言葉の意味を呑み込んだハクとジェハがお腹を抱えて笑い声をあげるのだった。
「なんだその桃色の鱗は」
「そうか、君の鱗は恋を叶えるのかー」
「剥ぐな!痛いわ!!」
ようやく正気を取り戻した二人はニタニタと面白いネタを見つけたと言わんばかりにキジャを冷やかしだす。そして、どれどれとジェハは未だに呑み込めていないキジャの右手を手に取ると鱗をベリッと剥ぐのだった。
「白龍の鱗などとデタラメを!!
神に等しき龍の名を
なぜそのような物を購入したのだ、ユン!!ルイ!!」
「買ってない!買ってない!
そんな胡散臭そうな物、私達が買うわけないでしょ」
「そうそう!
塩を2袋買ったらオマケでもらったの」
痛みに悶絶するキジャが怒りの矛先を向けたのはもちろんルイとユン。だが、二人は決して自ら進んで買ったわけではないと手を大きく横に振るのだった。
「オマケだと?ますます怪しい。」
「要するに四龍にかこつけた恋のお守ってわけだろ?」
「いや、ジェハ…実は…」
「こういうものは女の子が持つべきだよね
“恋が叶う”なんて可愛いじゃないか
…あ、ヨナちゃん」
”オマケ”という言葉に不信感を強めていくキジャ。そんな彼に対して持っている鱗を眺めながらジェハが良い解釈をする。だが、実際はそんな代物ではない。それを知ってるルイが真実を話そうとするのだが、その前にジェハが洗濯物を運ぶヨナに声をかけるのだった。
「ちょっとおいで」
「それお守じゃないんだけど…」
「え…」
「いわゆるホレ薬らしいよ」
ヨナを呼んだジェハは、ルイの言葉に驚きの声を上げる。そんな彼に畳み掛けるように説明書に目を通していたユンが言葉を付け加えた。その二人の言葉をすかさず呑み込んだジェハは鱗を持った手をシュルリと動かして自分に引き寄せるのだった。
「なに?」
「ごめん、間違いだった」
なにか見えた気がするが一体それがなんだったのかわからないヨナは不思議そうに首を傾げる。そんなヨナに何食わぬ顔でジェハが話しかけた。それにヨナはキョトンとしながらその場を立ち去り、彼女を手伝おうとゼノが後に続いた。ニコリと笑みを繕いヨナを見送るジェハの手は無意識のうちに固く握られていた。そんな彼に対して、ルイは軽蔑の眼差しを向け、隣に立っていたハクは静かに彼の強く握られた手を掴んだ。
「なにかな、ハク」
「わかってるくせに」
「ルイの言うとおりだ。とぼけんなよ
今それをパクろうとしただろ?」
「そうだ。そしてホレ薬とはなんだ!?」
まさかのキジャの投げかけ。その言葉を耳にしたルイ、ハク、ジェハは攻防を忘れて、無言でキジャに視線を投げた。
「え…、キジャ正気??」
「ルイ!それはどのような薬なのだ?!」
世間知らずなお坊ちゃんのキジャに対して、ルイが唖然とする。その中、キジャが喰い付くようにルイに詰め寄る。その光景を見て、正気を取り戻したジェハが助けを求めるようにユンの名を呼んだ。
「ユン君~!」
「はーい。ちなみに購入者さんの感想…
片想いの彼に思いきって白龍の鱗飲ませたら、たちまち両想いに♡
友達にもすすめちゃいました(匿名希望・18歳)」
「つーのがホレ薬だよ、キジャ君」
「だからなぜ白龍の鱗だ!」
ユンの読み上げに付け加えるようにジェハはキジャに声をかける。が、キジャには呪い薬の印象が纏わりつき、不愉快だと云わんばかりに憤りを露わにした。
「妙な薬があったもんだ、この国に」
「この分だと緑龍の鱗も売ってそうだね」
「ただの薬か毒薬か媚薬の類か。興味はあるけど…
上手くすれば高く売れそうだから機会があるまで預かっとく。」
説明書に目を通していたユンは考え込みながらも、鱗の有能性を考えて手元に残しておこうと未だに持っているジェハに向かって手を差し出した。責任持って預かると言うユンに、異を唱えるものはこの場にはもちろん誰もいなかった。
「そうだね」
「ユンならば安心だ」
ユンが差し出した手にジェハが鱗を握った手を伸ばす。が、その手は一向に開かれなかった。鱗が握られた手はジェハの胸元に戻される。その行動に隣りに立ったハクが冷たい眼差しを向ける。
「…早く手ェ開けろよ」
「いや、これ麻薬かもしれないよ。僕が確認しよう。」
「もう確認はし終えてるよ」
ジット手元を見つめながら答えるジェハに、魂胆は見え見えだと云わんばかりにルイがため息混じりに害はないことは確認済みだと伝える。そのルイの言葉にハクとキジャの勢いが増す。
「だそうだ!
さっさと手ェ開けろよ」
「いや、ハクは洗濯でもしててくれ」
「やはり危険だ
私が預かろう」
「もー、めんどくさいよ。男だらけの攻防戦…」
「ホントね
できるなら関わりたくなかったよ」
3人の押し問答に、ユンとルイが呆れ顔をする。その中、遂にジェハの本性が現れる。
「だって!せっかく面白そうな物が手に入ったのに!!
使わないなんて愚者のする事!!」
「やっぱり…」
「本音が出たな」
「不埒な」
目をギラギラさせて言い切ったジェハに対して、一同の冷たい眼差しが向けられた。が、その視線に動じるわけがなくジェハはキジャに問いかける。
「キジャ君は使ってみたくないの?」
「使いたいわけがなかろう」
「君の最愛のご主人様に飲ませてみたいと少しも思わない?」
バカバカしいと腕を組み、キジャは誘いを一刀両断する。そんなキジャにジェハは一気に距離を詰める。そして、不敵な笑みを浮かべて彼の耳元で甘く囁くのだった。
「なっ…」
「彼女をその腕で思いっきり抱きしめたいと思わない?」
「きゃーっ」
ジェハの言葉のせいでキジャは顔を真っ赤にして悲鳴を上げる。
「お願いだから抱くなら優しくしてね」
「そうそう
キジャの腕で思いっきりやったらヨナの骨ぽっきりだよ」
そんなやり取りにルイとユンが冷静にツッコミを入れるのだった。