その背には
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夜が更け皆が寝静まった夜。
ルイは隣の布団で寝ているはずの人影を求め部屋を抜け出していた。
ほっとけばいいもののほっとけない自分に自嘲しつつルイは横目に見ると宿の庭が広がる外廊下を歩いていた。そして、ルイのお目当ての人物はすぐに見つかる。縁側に座り、皆の前にいる時とは打って変わって静かな彼の後ろ姿は哀愁感が漂っているふうに見えた。そして、月明かりに照らされて銀色に輝く後ろ姿が更にそれを助長させていた。
ルイは気配を消して物音をたてずにそっと彼の背後に回り込むと、自分よりも数回り大きい背に抱きつくと、彼の肩元に顔を埋めた。
「…ルイ!?」
「なぁーにやってるの?ジェハ??」
不意に来た温かい温もりと香りにジェハは身体を強張らせて息を呑む。そんな彼の反応を愉しむようにルイは肩元からジェハの顔を覗き込んだ。
濃紺色の髪を下ろし、浴衣を着ているルイは色っぽく見えるのに加えて、月の光を受けた彼女はとても美しかった。このまま見つめていると目に毒だとジェハは苦笑した。
「ちょっと良い月夜だから眺めてただけだよ
そういうルイは??」
「誰かさんが心配で放っておけなかっただけ…」
ルイはそう言うとジェハの背から離れて彼の隣に腰掛けた。そのルイをジェハは頬杖して見上げた。
「なに?僕を諌めてくれるの??」
「余計なお節介だった??」
「全然」
ルイの返しにジェハは頬を緩めるとそっとルイを抱き寄せた。
「なんでルイにはバレちゃうのかな〜」
「そりゃあ長年ずっと生活してきたからね
ちょっとした表情の変化が嫌でも目につく」
大きく息を吐き出しながら発した弱々しいジェハの言葉にルイは懐かしそうに目を伏せて答えた。出会って13年だ。一緒に生活して苦楽を共にしてきた。楽しいことも悲しいことも分かち合ってきた。だからこそジェハのちょっとした表情の変化に気づいてしまう。繕っている仮面の下に隠しているものを。と言っても注意深く見ていないとそんな些細な変化に気づけないのだが。
「ちょっと言葉に棘があるのは気の所為??」
「だって、ジェハはいつも隠すから」
「そういうルイだって人のこと言えないでしょ」
拗ねた声を漏らすルイに今度はジェハが苦笑いする。その言葉にルイは言い返す事ができず視線を泳がして愛想笑いを浮かべ、誤魔化すように空を見上げるのだった。
「ホントに良い月夜だね
こういう日に美味しいお酒飲めたらもっと良いのに…」
「さり気なく今はぐらかしたよね?ルイ…」
「よぅ!!奇遇だな。眠れねぇーのか?」
湿った空気を弾き飛ばすくらいの調子いい明るいルイの声に、話題を逸らされたジェハは物言いたげな眼差しを向けた。
そんな二人の元にたまたま偶然ハクが通りかかる。そしてルイの声が耳に届いていたのか、助け舟を出すように持っていた酒瓶を二人に見えるように持ち上げるのだった。
「婆さんに貰ったんだ。なんならお前らも一杯やるか??」
そのハクからのお誘いにジェハは目を見開きジッと彼を見た後、目を伏せてフッと小さく笑みを零すのだった。その隣では嬉しそうにルイが頬を緩ましていた。
「珍しいねハク
君からお誘いなんて
湯あたりでもしたのかな?」
「ぬかせ…」
ジェハの軽口にハクは虚を突かれるもののニヤリと口角を上げるのだった。そんなハクの腕をルイがこれでもかと引っ張った。
「ほらほら!!
ハクも座った座った!!」
「…おい!焦るなって!!」
引っ張られ身体をふらつかせながらもハクはルイの隣に腰掛けた。そして予め用意していたのか3つのお猪口に注いで渡していく。
「じゃ、乾杯っと」
「なんでお前が仕切ってんだよ」
「まぁまぁ細かいことは気にしない!」
怪訝な表情を浮かべるハクの肩をルイは軽く叩きながら笑い飛ばす。その二人の軽口を横目にジェハはクスッと微笑みながらお猪口に口をつける。不思議と二人の仲睦まじい姿に抑えきれないドス黒い感情が沸き起こらなかった。ハクがヨナに気があるのを知っているからなのかそれとも違うふうに見れただけなのか。
でも、やはり彼との距離が近すぎやしないかとジェハはさりげなくルイを己に引き寄せた。
「ちょっとルイ
ハクばかりじゃなくて僕も構ってよ…」
「あ…ごめんごめん」
「おやおや嫉妬ですか?お兄さん」
いきなり不意打ちを喰らい、間近に映る端正な顔立ちにルイはドキリとしながらも平謝りする。そんな二人の様子を愉しげに見ながらハクは口角を上げて軽口を言った。その言葉にジェハは言い返すことをせずに肩を竦めてみせた。
「なにを冗談を言ってるんだい?
僕がそんな美しくないものを…」
「まだ白を切るか…」
「違うよ、ハク
ただジェハは寂しいって思ってるだけだし
なにより嫉妬する理由がないじゃない??」
ジェハの惚けたふりに対してハクが唖然とし、ルイは違った解釈でハクを諌める。そのルイの反応に二人は揃いも揃って溜息を吐くのだった。
*****
「ちょっと、大丈夫??」
晩酌を楽しんでいたジェハだが、隣がコックリとし始めたことに気づく。心配して声をかけるジェハなのだが、だいぶお酒を飲みすぎたのかルイは眠たげに瞼を擦るのだった。
「…だい、じょうぶ」
「意外と弱いんだな、オマエ」
「そりゃあ、ハクやジェハに比べたら弱いよ!!」
隣で黙ってお猪口に口をつけていたハクが口を挟む。それに対して、大きな声を上げてルイが反論するのだった。
「むかつくからもう少し飲む」
「ほぉ~、やってみ」
「ちょっとこれ以上はダメ
ハクもルイのこと煽らないの」
口を尖らせたルイが意地を張ってお猪口に手を伸ばそうとする。その行為を、ジェハはお猪口を奪い取って回避するのだった。
「だ…だって…」
「いいから、ルイは寝なよ」
不満げに見上げてくるルイに対して、ジェハは小さく笑うと自分の膝をポンポンと叩いてここで寝るように促した。それに躊躇していたルイなのだが眠気に勝てず、最終的には誘われるようにジェハの膝元に頭を預けスヤスヤと寝息を立て始めるのだった。
「寝ちまったな…
って大丈夫か?タレ目」
「全然大丈夫じゃない…」
あどけない表情で眠るルイの無防備な横顔。浴衣から隠れ見える白い肌に目のやりどころがない。せめて意識しないようにと視線を逸らしお猪口に口をつける。が、視線はチラチラとルイに無意識のうちに向けてしまうのだった。その視線に横目で見ていたハクがニヤリと口角を上げた。
「おい、寝込みを襲うなよ」
「僕がそんなことするわけがないじゃないか!
僕はハクのように獣じゃないからね」
「ハッ、ぬかせ」
鋭く釘を刺す一声に、ジェハは半笑いを浮かべて切り返す。が、ハクから見たらジェハの真意は筒抜け。彼の苦し紛れの言葉をハクは鼻で笑い飛ばすのだった。
ルイは隣の布団で寝ているはずの人影を求め部屋を抜け出していた。
ほっとけばいいもののほっとけない自分に自嘲しつつルイは横目に見ると宿の庭が広がる外廊下を歩いていた。そして、ルイのお目当ての人物はすぐに見つかる。縁側に座り、皆の前にいる時とは打って変わって静かな彼の後ろ姿は哀愁感が漂っているふうに見えた。そして、月明かりに照らされて銀色に輝く後ろ姿が更にそれを助長させていた。
ルイは気配を消して物音をたてずにそっと彼の背後に回り込むと、自分よりも数回り大きい背に抱きつくと、彼の肩元に顔を埋めた。
「…ルイ!?」
「なぁーにやってるの?ジェハ??」
不意に来た温かい温もりと香りにジェハは身体を強張らせて息を呑む。そんな彼の反応を愉しむようにルイは肩元からジェハの顔を覗き込んだ。
濃紺色の髪を下ろし、浴衣を着ているルイは色っぽく見えるのに加えて、月の光を受けた彼女はとても美しかった。このまま見つめていると目に毒だとジェハは苦笑した。
「ちょっと良い月夜だから眺めてただけだよ
そういうルイは??」
「誰かさんが心配で放っておけなかっただけ…」
ルイはそう言うとジェハの背から離れて彼の隣に腰掛けた。そのルイをジェハは頬杖して見上げた。
「なに?僕を諌めてくれるの??」
「余計なお節介だった??」
「全然」
ルイの返しにジェハは頬を緩めるとそっとルイを抱き寄せた。
「なんでルイにはバレちゃうのかな〜」
「そりゃあ長年ずっと生活してきたからね
ちょっとした表情の変化が嫌でも目につく」
大きく息を吐き出しながら発した弱々しいジェハの言葉にルイは懐かしそうに目を伏せて答えた。出会って13年だ。一緒に生活して苦楽を共にしてきた。楽しいことも悲しいことも分かち合ってきた。だからこそジェハのちょっとした表情の変化に気づいてしまう。繕っている仮面の下に隠しているものを。と言っても注意深く見ていないとそんな些細な変化に気づけないのだが。
「ちょっと言葉に棘があるのは気の所為??」
「だって、ジェハはいつも隠すから」
「そういうルイだって人のこと言えないでしょ」
拗ねた声を漏らすルイに今度はジェハが苦笑いする。その言葉にルイは言い返す事ができず視線を泳がして愛想笑いを浮かべ、誤魔化すように空を見上げるのだった。
「ホントに良い月夜だね
こういう日に美味しいお酒飲めたらもっと良いのに…」
「さり気なく今はぐらかしたよね?ルイ…」
「よぅ!!奇遇だな。眠れねぇーのか?」
湿った空気を弾き飛ばすくらいの調子いい明るいルイの声に、話題を逸らされたジェハは物言いたげな眼差しを向けた。
そんな二人の元にたまたま偶然ハクが通りかかる。そしてルイの声が耳に届いていたのか、助け舟を出すように持っていた酒瓶を二人に見えるように持ち上げるのだった。
「婆さんに貰ったんだ。なんならお前らも一杯やるか??」
そのハクからのお誘いにジェハは目を見開きジッと彼を見た後、目を伏せてフッと小さく笑みを零すのだった。その隣では嬉しそうにルイが頬を緩ましていた。
「珍しいねハク
君からお誘いなんて
湯あたりでもしたのかな?」
「ぬかせ…」
ジェハの軽口にハクは虚を突かれるもののニヤリと口角を上げるのだった。そんなハクの腕をルイがこれでもかと引っ張った。
「ほらほら!!
ハクも座った座った!!」
「…おい!焦るなって!!」
引っ張られ身体をふらつかせながらもハクはルイの隣に腰掛けた。そして予め用意していたのか3つのお猪口に注いで渡していく。
「じゃ、乾杯っと」
「なんでお前が仕切ってんだよ」
「まぁまぁ細かいことは気にしない!」
怪訝な表情を浮かべるハクの肩をルイは軽く叩きながら笑い飛ばす。その二人の軽口を横目にジェハはクスッと微笑みながらお猪口に口をつける。不思議と二人の仲睦まじい姿に抑えきれないドス黒い感情が沸き起こらなかった。ハクがヨナに気があるのを知っているからなのかそれとも違うふうに見れただけなのか。
でも、やはり彼との距離が近すぎやしないかとジェハはさりげなくルイを己に引き寄せた。
「ちょっとルイ
ハクばかりじゃなくて僕も構ってよ…」
「あ…ごめんごめん」
「おやおや嫉妬ですか?お兄さん」
いきなり不意打ちを喰らい、間近に映る端正な顔立ちにルイはドキリとしながらも平謝りする。そんな二人の様子を愉しげに見ながらハクは口角を上げて軽口を言った。その言葉にジェハは言い返すことをせずに肩を竦めてみせた。
「なにを冗談を言ってるんだい?
僕がそんな美しくないものを…」
「まだ白を切るか…」
「違うよ、ハク
ただジェハは寂しいって思ってるだけだし
なにより嫉妬する理由がないじゃない??」
ジェハの惚けたふりに対してハクが唖然とし、ルイは違った解釈でハクを諌める。そのルイの反応に二人は揃いも揃って溜息を吐くのだった。
*****
「ちょっと、大丈夫??」
晩酌を楽しんでいたジェハだが、隣がコックリとし始めたことに気づく。心配して声をかけるジェハなのだが、だいぶお酒を飲みすぎたのかルイは眠たげに瞼を擦るのだった。
「…だい、じょうぶ」
「意外と弱いんだな、オマエ」
「そりゃあ、ハクやジェハに比べたら弱いよ!!」
隣で黙ってお猪口に口をつけていたハクが口を挟む。それに対して、大きな声を上げてルイが反論するのだった。
「むかつくからもう少し飲む」
「ほぉ~、やってみ」
「ちょっとこれ以上はダメ
ハクもルイのこと煽らないの」
口を尖らせたルイが意地を張ってお猪口に手を伸ばそうとする。その行為を、ジェハはお猪口を奪い取って回避するのだった。
「だ…だって…」
「いいから、ルイは寝なよ」
不満げに見上げてくるルイに対して、ジェハは小さく笑うと自分の膝をポンポンと叩いてここで寝るように促した。それに躊躇していたルイなのだが眠気に勝てず、最終的には誘われるようにジェハの膝元に頭を預けスヤスヤと寝息を立て始めるのだった。
「寝ちまったな…
って大丈夫か?タレ目」
「全然大丈夫じゃない…」
あどけない表情で眠るルイの無防備な横顔。浴衣から隠れ見える白い肌に目のやりどころがない。せめて意識しないようにと視線を逸らしお猪口に口をつける。が、視線はチラチラとルイに無意識のうちに向けてしまうのだった。その視線に横目で見ていたハクがニヤリと口角を上げた。
「おい、寝込みを襲うなよ」
「僕がそんなことするわけがないじゃないか!
僕はハクのように獣じゃないからね」
「ハッ、ぬかせ」
鋭く釘を刺す一声に、ジェハは半笑いを浮かべて切り返す。が、ハクから見たらジェハの真意は筒抜け。彼の苦し紛れの言葉をハクは鼻で笑い飛ばすのだった。