迫る不穏な火の手
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「戻ってこない!?」
木陰に隠れるユンとヨナの元に合流した一行は、軍がコチラに向かっていないことを伝えた。それにユンは驚きの声を上げた。
「なんで…
敗走して援軍を求めるならまず彩火に戻るでしょ!?」
「挟み撃ちにあうと思って避けたのかしら…」
「スジン軍は南西に向かっていったらしい」
神妙な面持ちを浮かべるユンとヨナに、キジャがシンアが見たものの付け足しを行った。その”南西”という言葉にユンは眉をピクリと動かす。ここから南西。その先に行き着く場所は一つしかないからだ。
「ここから南西ってまさか…緋龍城!?」
「王都に…
援軍を求めに?」
「確かに緋龍城に行けば強力な援軍が得られるだろうけど…」
「…はぁ、そういうことか」
緋龍城に向かうスジン軍の真意を図ろうとするヨナとユン。だが、援軍を求めるなら近い彩火だろうと考えが行き詰まったところで、ルイのスッキリとしたような深い溜め息がこの場の静寂を打ち破った。
「そういうことって、どういうこと??」
「僕が感じてたのは私利私欲に走る野心家による陰謀の禍々しいもの。で、それをもたらすのはリ・ハザラだと思ってたんだけど…」
起こってほしくない最悪の予感が当たってしまったな…
意味深なセリフを漏らしてルイが見るのは黙り込んだままのハクだった。その視線にハクは重たい口を開いた。
「ずっと引っかかっていたことがある」
本来の定石に従うなら最大の砦である彩火城にこそ戦力を残しておくべきのところ。だが実際、カン・スジンは彩火城の軍勢よりも多い軍勢を率いて
ハクは今まで感じていた違和感を口にした。そしてもう一つ浮かび上がった可能性の裏を取ろうとシンアに尋ねる。
「火の部族の兵はどんな様子だった?
怪我人は?
「怪我人は…あまり見なかった…
戦ったりとか…特にしてない
ただ…二軍共南西に向かって走って…た」
「ちょっと待って
ちょっと待って…それって…
いや、でもそれはあまりにも…」
シンアの口から伝えられたことにヨナは大きく目を見開き、ユンは動揺しながらも必死に頭を回転させ不可解な点を繋ぎ合わせていった。すると、全く噛み合わなかった点と点が一直線上に皮肉にも繋がるのだった。
「つまり答えは?」
「つまりあれだね
カン・スジンはリ・ハザラと手を組んでいる」
「彼らが南西に位置する緋龍城に進軍している
これらから導き出される本来の目的は一つだ」
誰もが言葉を失う中、皆の頭に浮かび上がった真実をそれぞれゼノとジェハとルイが言葉で言い表した。それに付け足す形でハクが落ち着いた口調で叩きつけるのだった。
「本当の目的は…
緋龍城
カン・スジンは敵国と通じて緋龍城とスウォンの首を狙っている」
その事実にヨナは絶句する。父のイルの仇であり憎き相手。だが、スジンの手によってスウォンが殺られる。それを直ぐにヨナは呑み込むことができなかったのだ。そんな彼女を横目にキジャは忌々しいと言葉を吐き捨てる。
「カン・スジン
恥知らずな事を…
高華国の要、五将軍の1人でありながら
敵国兵1万を我が国に招き入れ、しかも緋龍城に助けを求めるフリをして…
これでは騙し討ちではないか」
「哀れなのは命を賭して彩火の守備についた兵士だね
まさか己の部族長が敵国と通じているとは知らずに」
キジャの荒々しい声と裏腹にジェハは目を伏せ神妙な面持ちでボヤいた。が直ぐに表情をいつもどおりに戻すと、顔を上げたジェハは指示を仰ぐようにヨナに投げかけるのだった。
「どうする?
今度はスジン軍と千州軍を蹴散らすかい??」
「幾らなんでも流石にそれは厳しいんじゃないか??」
「ルイの言うとおりだよ!!
さっきはここの千州軍の一部を脅かす程度で済んだけど
スジン軍と千州軍は合わせて2万
それに…」
その言葉に対して表情を曇らせてルイとユンが苦言を漏らした。確かにこのまま何も行動を起こさなかったら、高華国は崩壊してしまうかもしれない。だが、幾らなんでもこの人数では数で押されてしまう。そんな二人の一番の気がかりはヨナだ。王に追われる身であるヨナが緋龍城に向かう。それはすなわち、彼女の生存を知られてしまう、殺されてしまうかもしれない、という大きなリスクがあったのだ。
「ヨナ…
ここは一旦様子を見よう
いくらなんでも僕らの手には終えないよ」
「…ハク
馬の手配出来るかしら??」
だが、二人の想い裏腹にヨナはある決意を固めていた。尋ねたハクが頷いた事を確認するとヨナは皆の顔を見渡して威厳のある声を発するのだった。
「スジン将軍とリ・ハザラを追う!!」
「ヨナ!!
無茶だ!2万の兵だよ!!それに…っ」
啖呵を切ったヨナに対してユンは形相な表情で詰め寄った。だが、ヨナは例え己の身が危険に晒されても守りたいものがあった。
「スジンの行為はこの国を混乱に陥れる
放っておくわけにはいかない…!!」
その決意の固まったヨナの言葉にユンは困った表情でルイに視線を飛ばす。が、苦言を漏らしたもののヨナが放ってはおけないだろうとわかっていたルイは仕方がないと肩を竦めるのだった。