次男坊の改心
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「へぇ〜
流石に権力持っているだけはあるじゃん」
横暴な行為がバタリと消えたことにホッと胸を撫で下ろしたユンは、ルイにこの場を任せて加淡村へ戻った。今一番必要なのはユンの力だ。こんなところで油を売っている場合ではないのだ。
そして1人落ち着いた場所でルイは背筋を思い切り伸ばしながら称賛の声を上げた。
確かにテジュンの行いを期待していなかったわけではない。が、彼の一声により不満を漏らしていた役人たちは一切小言を言わずに黙々と作業していたのだ。
上に立つ者には上に立っている者にしかできないことがある。それを今目の当たりにしている気分に陥った。
「さて、手持ち無沙汰になっちゃったな〜」
早々に真髄を見極めてしまったルイは何をしようかと空を仰いだ。
本来なら彼処に混じりたいのが本音。だが、ユンやゼノと違い顔割れしてしまっているため流石にあの中に混じる事はできなかった。
「だったらやることは一つかな?」
よっと上半身を起こすと木の枝から地面にルイは飛び降りた。スタンと綺麗に着地したルイはやる気に満ちた表情を浮かべていた。
今役人たちは必死にこの村を立て直している
だったら自分はその邪魔者を排除する裏方に徹しよう
少しでも早く村が綺麗になるのを祈りつつ、ルイは周囲に感じた賊の気配を辿り、片っ端から地面にノシていくのだった。
*****
バチバチ
村からは見えないところに火を起こしたルイは空に輝く星をぼんやりと眺めていた。そのルイの耳に落ちている小枝を踏みしめる音が聞こえるのだった。
バレバレだと彼の訪問に苦笑いしながらルイは彼の名を呼んだ。
「どうしたんだい??
こんなところに隠れてないでコッチにおいでよ」
その声とともに、気不味い顔を浮かべるテジュンが姿を現すのだった。
「……ルイ殿」
「なんだい??」
恐る恐る近寄ってきたテジュンはゆっくりとルイの隣に腰掛けた。
「私は、誠心というものをお見せできただろうか??」
不安そうにテジュンはルイの返答を待つ。その彼にルイは柔らかい笑みを初めて向けるのだった。
「あぁ…
君の誠心しっかりと見せてもらったよ
予想以上だ」
「本当か」
テジュンはルイの言葉に憂いた表情を一変させて身を前のめりにさせて目を輝かした。そんな彼の一喜一憂する姿にルイは苦笑いを浮かべた。彼の行動を動かす魂胆がヨナを喜ばすためであっても、彼の纏う空気が変化しつつあることにルイは薄々と気づいていた。
「まぁ僕はヨナやハクが知る少し前の君は知らないけどいいんじゃない?今の君は?」
「そうかそうか!!」
「これが続けばの話だけどね」
「なぁ!?」
上げられたと思いきや急に突き落とされてしまったテジュンは驚愕の声を上げた。そんな彼のコロコロ変わる表情にルイはクスリを笑みを浮かべるのだった。
「大丈夫だよ
このまま突き進めば火の部族領にいい風が吹くよ」
ルイは己の髪を靡かせる吹き付ける風を感じながら翡翠色の瞳を細めた。
「それはいったい…」
「ほら?早く戻ったほうがいいんじゃない?
そろそろ君を心配して捜索隊ができちゃうかもよ?」
困惑するテジュンの言葉を遮るようにルイが言葉を重ねて遮った。そのルイの表情は穏やかで、ほんのりと口調には彼に対する揶揄いが含まれていた。
だが、ルイの言っていることも事実。建てた建物からは明かりが漏れだし始めたのだった。その光景を見てほらね?と視線でアピールするルイに対して、テジュンは顔を引き攣らせるのだった。
ほらほら!サッサと戻んなよと軽口を叩かれテジュンは急いで自室へ戻るのだった。そんな彼の後ろ姿を見送った後、ルイは近くにある大きな樹の上を見上げた。
「…盗み聞き??」
「不可抗力だよ」
口元を緩めて眼光を光らせるルイの頭上からため息混じりの声が降り注ぐ。その声とともにストンと静かに深緑の髪を靡かせてジェハが舞い降りるのだった。
「不可抗力ねぇ〜」
「降りるタイミングを見失ったんだよ」
探るようなルイの眼差しに、ジェハは困ったように眉を下げてみせた。そんな彼にルイは小さく笑ってみせると自分の隣の地面を叩いて座るように促した。その手に促されるようにジェハはルイの隣に腰を下ろした。
「で??こんな時間にどうしたの??」
「どうしたの?って
冷えるだろうと思って持ってきたんだよ」
ルイの言葉に呆れたと肩を竦めながらジェハは持っていた寝具を見えるように上げた。急に彼の手元から出てきた寝具にルイは目を丸くしながらも、彼なりの気遣いに頬を緩めた。
「ジェハって本当に細かいところまで気が利くよね」
ありがとっと笑ってみせるルイの表情にジェハは照れくさそうにほんのりと頬を染めて顔を背けた。
こんなに気を遣うのはルイぐらいだよ…
ボソッと独り言のように呟いたジェハの言葉は、当然ルイの耳に届くわけがなく、えっ?なんか言った??と首を傾げるルイにジェハはなんでもないとはぐらかしてみせるのだった。そしてジェハはルイの腰に手を回して引き寄せた。もちろん不意打ちを喰らったルイは彼の行動が掴めず困惑した。
「…えっ??」
「寝具一つしかないからね」
「戻らないの??」
「こんな真っ暗な道中を帰らせるつもり??」
「い…いや…そういうわけでは…」
「じゃあいいよね?」
焚き火の炎の明かりで見えるジェハの表情は妙に色っぽく見えてしまったルイは彼の手が置かれた腰に熱が帯びていくのを感じた。
最近、異常に彼の掌で転がされている気がする…
そう思いながらもルイは彼と一つの寝具を子どもの頃のように身を寄せ合って共有するのだった。