その背には
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「何やってんだ、タレ目。」
急に目の前に立ちはだかったジェハにハクは怪訝な表情を浮かべた。一方のハクは顔を引き攣らせながら大げさな演技をしていた。
「美容体操をちょっとね」
「ふーん」
「ハクは?」
「ちょっと水飲みに」
「そう!じゃあ僕が後で届けてあげるよ」
ジェハはハクの前で舞うように踊りながら話す。そんな二人のやり取りはどう見てもジェハの行動は苦し紛れ。ルイはヤレヤレと小さく息をついた。そんなルイの視界の先ではハクとジェハのやり取りが続く。
「別にいーよ、井戸そこだし」
「湯上がりのヨナちゃん可愛かったよ
会いに行かなくていいの?」
もちろん、ジェハの申し出をハクはあっさり断った。数歩歩けば井戸に着く目と鼻の先にあるのだ。わざわざ届けて貰う必要がないのだ。だが、それでも引き下がらないばかりか話を逸らそうとするジェハにハクは疑いの眼差しを向けた。
「…何隠してんだ?」
「え…」
「誰かそこいるみてーだけど?」
「ああ、知らないおじさんだよ。」
ハクはジェハの後ろを覗き込もうとする。が、それを阻むようにジェハが動きを合わせる。そして右、左とハクが覗こうとする、それをジェハが阻む、押し問答が繰り返され、ハクは最後に上に飛んだ。そのハクの動きに合わせてジェハがぴょーんと跳ぶ。が、この時にしまったとジェハは焦った。
しまった、僕の脚では跳びすぎる!これで目を反らせて…!!
ジェハは咄嗟の判断で常に持ち歩いている暗器を帯から出してハクに向けて投げたのだ。それにハクは目を白黒させるとギリギリのところでかわすのだった。その攻防戦にルイは呆れながら飛んできた暗器をかわした。
「タレ目…ケンカ売ってんのか」
「まさか」
避けて尻もちをついたハクは額に青筋をたててこれでもかと睨みつける。完全に苛立っているハクに無理はないと思いながらもジェハは必死に苦しい演技を続ける。
「これも美容体操の一環だよ」
「ふーん、じゃあ俺も美容体操しようかなー」
そう言いながらハクは指をゴキッと鳴らす。そのハクの身体からはメラメラと炎が燃え上がるのだった。
本来ならばこのアガる展開を喜びたいところだが、今はそれを愉しんでいる場合ではないとジェハは顔を顰めた。
おおっと、何かアガる展開だけどこれじゃハクが去ってくれない!
なんとかキジャ君がいない場所に誘導しなければ…
思考を巡らすジェハ。その時ふとある策を思い付く。ジェハは急いでそれを実行するために声を上げた。
「あ!!あんなところにヨナちゃんが倒れてる!?」
「何!?」
ジェハが指をさしたの奥の建物の2階の部屋。だが、ハクがそれにつられて見たが部屋の中が見えない上に、ヨナの姿は全く見当たらない。ハクはたまらずジェハに噛み付いた。
「って居ね〜じゃね〜か」
「客室の中だよ
今、チラッと見えたんだ」
「ここから客室の中が見えるわけねーだろ」
だが、ハクの言葉に対してジェハは得意げにカッコつけて答えるのだった。
「僕はヨナちゃんに関してのみシンア君並の視力を発揮するのだよ」
「そこは異様に説得力あるな」
「さぁーいこ
水ならおばばさんに頼めばいい」
「ちょっと待て
姫さん彼処にいるじゃねーか」
「わぉ!!」
ハクの背を押しその場を立ち去ろうとしたジェハ。だが、ジェハの思惑通りにいかずヨナは楽し気に旅館のおばあちゃんと団欒していたのだった。その予想外の展開に、ジェハは驚きの声を上げながらも神妙な面持ちで背後の様子を確認する。
すると横目で見たジェハの視界に映ったのは服を羽織るキジャの姿だった。
水浴びを終えたようだとホッと息をついたジェハは、顔を顰めるハクにヘラっとした笑みを向けるのだった。
「いやぁごめん
見間違いだった」
「…たく」
「ごめんってば」
ジト目を向けるハクに平謝りするジェハ。だが、ジェハの後ろの井戸では折角羽織った服を脱ぎ捨てるキジャがいたのだった。このままだとキジャの背にある傷がハクにバレてしまう。ジェハは瞬時にハクの視線を逸らそうと彼に向かって鋭い蹴りを浴びせるのだった。土埃を上げたジェハの蹴りはハクの左頬へ。蹴りを喰らったハクは地面に倒れ込んだ。
「お詫びに美容体操を教えてあげるよ」
「てっめぇー
そんなに言うなら付き合ってやるよ、美容体操」
ヘラりと笑いながらジェハは仰向けに倒れたハクを見下ろした。そんな彼に対し苛立ちを押し殺した声を上げハクはゆっくりと立ち上がった。
「よーし!
一緒に美しくなろうかハク」
凍てつく殺気を纏わしやる気十分のハク。そんな彼に対し、ジェハは、苦し紛れの時間稼ぎに苦笑いを浮かべていた。
少々苦しいが、キジャ君が去るまでは
なんとかこの場を持たせようとするジェハ。だが、それに反して騒ぎが気になったキジャが歩み寄ってくるのだった。
「何だ、手合わせか。私も是非。」
「何で君が出て来るかなっ!?」
たまらず話に加わってきたキジャに向かってジェハは声を荒げた。そんな慌てるジェハに反して、ハクはジト目を向ける。
「お前か、知らないおじさんは」
「知らないおじさん?」
話についていけずキョトンとするキジャ。そんな彼の装いにジェハはいつ彼の背の傷に気づいてしまうか冷や冷やだった。
「服着なよ、いいから!!」
「それが手拭いを忘れた。何か拭く物ないか?」
「ええい、これで拭いとけ!」
慌てふためく己とは裏腹に当の本人は危機感がないのか呑気。そんな彼に徐々に苛立ちが込み上げていったジェハは、半場やり投げに
己の浴衣をキジャに投げつけるように渡すのだった。
「いや、それは悪い。そなたの服が…」
「ああ、もう面倒臭いな本当に君は!!」
「…どうなってんだ?」
「さぁ??」
意味が分からないとでもいうように肩の上のアオを撫でるハクは、近づいてきた足音に対して疑問を投げかけた。それに対してハクの隣、ずっと傍観していたルイは苦笑いしながら肩をすくめるのだった。そんな二人の目の前では、ジェハとキジャによる押し問答が繰り広げられていた。