迫る不穏な火の手
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「結論!今回わかったのは、
俺らは顔隠してても目立つ!後、ルイは危なっかしい!!」
大きく肩を落としたユンは、店内で買ってきたものを皆に配りながら声を荒げた。その目尻を吊り上げたユンに指摘されたルイは言い返す言葉も見当たらず愛想笑いを浮かべていた。
「でもまさか彩火の都に来ちゃうなんて…
しかもこんな怖い人が出入りする裏町に」
「こういう場所の方が身を隠すのに都合がいいし、
様々な情報屋もいるから知りたい情報がいち早く入手出来んだ」
「詳しいね雷獣
こういうところよく来るの?」
ユンの言葉に対して発起人であるハクが淡々と答えた。そんな事情に詳しいハクにユンは興味本位で尋ねた。
「…空都にいた時、裏町によく出入りしてた奴がいたんだよ」
その言葉に対してハクはどこか遠い目をした。が、すぐにハクは口端を吊り上げ、視線をある1人の人物に向けるのだった。
「まぁ、俺よりもルイの方が裏町に関してはお詳しそうに見えるが?」
「ん??あぁ……
僕はしょっちゅう情報収集をしていたからね」
簪を取り、濃紺色の髪を下ろしていたルイは薄紫色の紐で髪を結いなおしながら視線を送るハクを横目で見る。そして間延びした声を上げルイは右肩に髪を流し終えるのだが、ここでようやく一同の視線が一点に集まっていることに気づくのだった。
「え…ど…どうしたの?
皆、固まって…」
主に固まっているのはヨナとユン。それでも他の者達も平然を装いながらも動揺が隠れ見えていた。そのことに気づいたルイは事情が呑み込めないため、唯一隣で額に手を当てて項垂れていたジェハを見上げた。そのルイの痛い視線を感じたジェハは何度目かわからない深い息を吐きながら顔を上げた。
「……皆、ルイがここまで危険な行動を取っていたことに衝撃を受けてんだよ」
精神的な頭の痛みを未だに感じながらジェハは、無頓着なルイでもわかるように彼らの気持ちを代弁した。案の定、ルイは驚いたように大きく目を見開いた。
「あれ?言ってなかったっけ?
僕、女装して色仕掛けして情報収集してたんだよ
ちなみに阿波を離れた後、一時期ここにもいたし」
ルイの口から告げられる衝撃的な事実。それを聞いた数名は形相な面持ちを浮かべた。
「「そんなこと、聞いてない!!!」」
目尻を吊り上げて詰め寄るのはもちろんヨナとユンだった。そんな彼らの怒声を含んだ叫び声に、ルイはどうしてこの二人がここまで声を荒げるのかと不思議そうにしていた。そんな彼らを横目にキジャが詰め寄るのはジェハだった。
「おい、ジェハ!!
ルイがいくら強くても、危なすぎやしないか!?」
「じゃあ、キジャ君だったらどうするんだい??」
詰め寄ってきたキジャに対して、ジェハは表情を変えることなく疑問形で聞きなおす。キジャに対して向けられたのは冷たい桔梗色の眼差しと、棘のある言葉だった。そのジェハが放つ威圧にキジャは言い淀む。
「え…そ…それはだな…」
「情報ってのは、力と同等…
いや使い方によってはそれ以上の効力を発揮する。
だからこそ重要な情報源ほど盗るのに危険が伴うし、その情報を持っている人物は限られるんだ。」
考え込むキジャに対していつになくド真面目な表情をしたジェハは、淡々と事実を突きつけた。
人伝いに聞いた女性から情報だけだと足りない。より確実で重大な情報を持っているのは当事者自身。そんな彼らの懐に入り込むにはそれなりのリスクがあった。それでもそのリスクを誰よりも把握していたのは当時自ら志願したルイだった。
「危険なことを承知の上でルイに任せてたんだよ。
あのメンツの中で適任者なのは、幼少期から情報収集をしてきたルイだけだったからね。
まぁ…危なかっしくて、毎回待っている僕は冷や冷やだったけど」
最後に張り詰める空気を緩めたジェハは苦笑いをしながら心情を吐露した。その言葉に彼ら達の固い絆を実感した一同はこれ以上とやかく言うという野暮なことをしなかった。対してルイは驚きで目を瞬かせる。こんな風に少なからず認めてくれているとは思わなかったのだ。いつも情報収集に繰り出すルイを過保護なほど心配して引き留めようと念押ししていたのはジェハだったからだ。それをルイは勝手に自分の力不足と思いこんでいたのだ。そんな彼女の心情を見透かしてかジェハはルイに視線をやると目尻を下げた。
「ルイの実力は誰よりもわかってるつもりだよ」
「…ジェハ」
「でも過保護になりすぎるのはこれから先も譲れないかな」
困惑するルイにジェハは小さく笑ってみせた。誰よりもルイのことを知っていると自負している。だからこそ最終的には戻ってくると信じて送り出せたのだ。だが、どうしても簡単には頷けない。不安で不安で堪らないのだ。自分の見えないところで、知らない内に傷ついてたりしてしまわないか、このまま手の届かないどこかに連れ攫われてしまわないかと。未だにジェハの心の中にはあの時の出来事が戒めの鎖のように突き刺さっていたのだ。だからこそ過保護に心配してしまう。そんな心情など知る由もないルイに、内心深く溜息をつきながらジェハは彼女の逃げ場を失くすように言葉を叩きつけるのだった。
「まぁ、僕があーだこーだ言う前にユン君やヨナちゃんが止めてくれそうだけどね」
「アハハ…そうだね
ジェハ以上に厄介だよ、あの二人は」
そう言いながら片目を瞑っていたずらっぽい笑みを浮かべてみせるジェハに対して、案の定ルイは顔を引き攣らせていた。あの純粋な瞳を向けられるとどうしても反論できないのだ。想像しただけで寒気を覚えたルイはヤレヤレと肩を竦めると視線をヨナ達に向けるのだった。釣られる形でジェハも視線をやる。
「ヨナ、やっぱり彩火は危険すぎるよ。
なるべく早く退散した方がいい。」
「うん…そうなんだけど、でも少し気になって…」
するとそこには神妙な面持ちを浮かべるヨナとユンがいたのだった。