1章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「わぁぁぁぁ!!!」
人混みの多い歩道で人の波をかき分けて小さな白い猫を肩に載せた青年がスケボーに乗りバッドを担いだ青年から逃げ惑っていた。
「すいませーん!!」
「待てコラ!!」
その声は肩元まである胡桃色の髪を揺らし歩いていた女性の耳にも届く。クルリと背後を振り返ることで耳元につけられた夕焼け色に輝くピアスが揺れる。視界に入った状況を捉えた彼女は、何故かほっとくことが出来ず思わず追われている青年の手を掴んだ。
「コッチ!!」
「えっ!?!?」
近くの路地裏へ彼女は連れ込んで走り出した。そして、前を向いたまま彼女は引きづられる形でついてくる青年に声をかけた。
「どうして追われてるの??」
「実はそれがさっぱりわからなくて
いきなり襲われたんですよ」
「それは災難だったね」
「おねぇさんはどうして僕のこと助けてくれたの??」
「なんでだろ??ほっとけなくて…」
苦笑する彼女はちらりと青年に視線をむける。すると、あれっと既視感を覚えた。と同時にこめかみにズキッと小さな痛みが走った。
「ねぇ、キミ…
どこかであったことある??」
「え??おねぇさんとですか??
はじめましてだと思いますよ」
思わず尋ねた彼女の言葉はアッサリと青年により否定されてしまった。その言葉にだよねーと相づちを打ち彼女は視線を前に戻した。
一方、青年を追いかけ回していたスケボーの青年…八田美咲は、青年を引っ張っていった彼女に信じられないと立ち尽くしていた。
「八田さーん、なにしてんすか?」
そんな八田の元に鎌本と、情報を仲間に発信した赤城がバイクに乗って駆けつけた。この二人を視界に入れた八田は、今目の前で起こったことを口にした。
「お前ら…信じられるか??
瑞穂さんがいたぞ」
「えぇ!?瑞穂さん見つけたんすか!?」
「大手柄じゃないすか!!」
さっき、青年を引っ張って走り去った女性はどう見てもあの時、消息不明になっていた瑞穂に違いない。見間違えるはずがないと自負している八田だが、どうして彼女が奴の肩を持つのかわからなかった。そんな八田をハイタッチして喜んでいた鎌本と赤城は首を傾げる。
「嬉しくないんすか??」
「なに言ってんだ!嬉しいに決まってるだろ
でもよ、瑞穂さん…何故かアイツを連れて逃げちまったんだ
おかしくねーか?」
敵と思って追いかけていた八田の目の前で、襲撃された本人が手を引っ張って自分たちから逃げ出したのだ。八田は狐につままれた気分に陥っていた。
「それはおかしいっすね」
「まぁ、いいや
とりあえず追いかけるぞ!!」
八田はこのまま考えても埒があかないと切り上げる。彼女に事情を聞けばわかることだ。それよりも優先事項はあの青年を追い詰めることだ。鼓舞するように声を張り上げると八田は合流した彼らと共に追いかけるのを再開するのだった。
「わぁぁぁぁ!!追いかけてくる!!」
「いやぁ…あちらも執念深いね
なんかしたんじゃない??シロくん」
「ほの香さん!?」
「わかってるわかってる
身に覚えがないんでしょ
まぁなんとかなるって、気楽にいこ」
冗談と捉えられない青年…シロは的確に迷うこと無く道を駆けていく女性…ほの香に対して慌てふためく。そんなシロを見て小さく笑ったほの香は励ますように声をかけた。いつの間にか背後に迫る人数は3人に増えている。それでも、ほの香はシロの言葉を信じて狭い路地を走り抜けた。そして狭い路地を出ると少し道幅が広がった路地裏に出た。そこには、両手をズボンのボッケに突っ込み誰かを待ち構えるように煙草を吸いながら壁に凭れ掛かるサングラスをかけた金髪の青年がいた。
ズキッ!!!
その青年を視界に入れた途端、ほの香の頭にここ一番の刺激が走った。急にきた痛みに思わず足を止めほの香は顔を顰めた。
ほの香が足を止めたことで必然とシロも足を止めるのを余儀なくされる。その最中、壁に凭れ掛かっていた青年…草薙出雲は彼女を視界にとらえた途端目を見開いて驚いた。だが、頭を抱える彼女の隣に立ち心配そうに見ていた彼は自分たちが追っていた標的である。一先ず、彼女に色々話を聞くのは後だと草薙は咥えていた煙草を手に取り、肺に溜めていた白い煙を吐く。そして手に持った煙草を指先で弾き宙へ投げ上げた。その途端、煙草から火の粉が舞い、赤い炎に。それは空に舞い上がった。
この状況に慌てふためくシロをよそに、ほの香の頭痛の痛みはさらに悪化。痛みに耐えきれず蹲ってしまった。そんな彼女の脳裏に残るのは青年が出した見惚れてしまうような綺麗な真っ赤な炎だった。自分たちに向かってくるそれは脅威であるはずなのに、何故か襲い掛かろうとする炎を見て心地良さや安心感・懐かしさを覚える自分がいた。
対してシロにとっては窮地なこの状況下。顔面真っ青にするシロはもうダメだと覚悟する。そんな彼を助けたのは突如空から舞い降りてきた青年だった。彼は襲い掛かってきた火の粉を鮮やかな剣さばきで防ぐと、背後から襲い掛かろうと飛びかかっきた八田を一瞬で倒す。そしてシロの首根っこを掴み抱き寄せるとこの場を嵐のように立ち去るのだった。