1章
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「なるほどなぁ…
むこうさんは仕事が早いわ
うん、ええよええよ
映像さえ残ってくれたら必ずどっかが反応すると思うから
うん、わかった…
はい…はーい、ごめんやす」
掛かってきた通話に耳を傾けながら相槌を打つ草薙の声が静かなバーに反響する。そして暫くすると連絡を聞き終えたのか草薙は端末を切った。
「せやけどあの黒狗まで向こうについたってことはいよいよやっかいなことになってもうたな
もう……時間があらへんのに」
一人カウンターの向こうで遠い目をして考え付けむ草薙。そんな彼をカウンターから少し離れたソファーに場を移したアンナとほの香は注視していた。そんな二人のじっと見る視線に気づくと草薙はハッと二人の方に顔を向け、硬い表情を和らげ困ったように肩をすくめてみせた。
カラン
「…っんのタコォ!うおらぁ!」
突如バーの扉が開いたと思いきや、そこに鎌本の首を羽交い締めした状態で飛び込んできた八田がいた。彼は感情のままに声を荒げながら勢いそのまま投げ飛ばした。投げられた鎌本は頭からカウンターに突っ込む。この惨劇にグラスを拭いていた草薙は驚いた拍子に手が滑り持っていたグラスを手離してしまう。手から滑り落ちたグラスは草薙の思い虚しく地面に落下してしまうのだった。
「八田さん…ギブッスぅ」
「うっせぇ!腑抜けたこと言いやがってぇ!」
さて、そんなことも耳に入らないくらい感情が高ぶっている八田は俯せになった鎌本に馬乗りになり、海老ぞりさせる。降参と云わんばかりに自由な手で床を小刻みに叩くが、八田はそれを無視しさらに入れる力を込めた。
「あっ…俺のバーカウンターがっ!」
一方、グラスを割ってしまった草薙は状況を確認しようとカウンターから外に出る。そして、鎌本が突っ込んだせいで傷がついてしまった箇所は悲痛な声を上げて指でなぞった。
バーに置いてある一品一品、草薙自身がこだわりを持っているものだ。それを少しでも傷つけられた彼が怒らないわけがなかった。わなわなと肩を震わせ、草薙は未だにもみ合っている二人に怒りの矛先を向けた。
「んぉ前らぁ〜!」
ガシッと頭を鷲掴みされた八田と鎌本は宙へ上げられる。もちろん彼らの顔は傷つけられた草薙お気に入りのカウンターへ向けられた。そして二人の頭を掴んだ草薙は彼らにこのカウンターがいかに貴重なものであるか言い聞かせ始める。
「えぇか!お前らこのカウンターはなイギリスのパブから特別に譲って貰ったもんで高いんやぞ!?えぇ煙草の香り、酔っ払いの喧騒が染み込んだ歴史的な一物で磨き混めば磨き混むほどローゼストの艶がぁぁあ!」
その最中、草薙の感情が高ぶり握る力が強まる。その痛みに二人はうめき声を上げ悶絶する。
この3人のやり取りを遠巻きに見ていたアンナは大きく息を吐く。対して、笑みを絶やさず温厚な草薙の意外な一面にほの香は目を丸くし言葉を失うのだった。
「…で?喧嘩の原因は一体何なのかなぁ?ボーイズ」
言いたいことを言い終えた草薙は一度落ち着くと、両手にいる彼らに事の真相を尋ねる。草薙の僅かにドスを効かせた声にビクリと反応を示す八田と鎌本は、それぞれ主張を譲らないとばかりに声を上げた。
「あ、やぁ!だからこいつが尊さんのことを!」
「や、そんな!」
ギロリと草薙の睨みを効かせた視線は左手にいる鎌本に向けられる。その視線にビクリと怯えながらも必死に意味合いが違うと不思議に思っていることを述べる。
「尊が、なんやて?」
「こいつが尊さんが青の軍門に下ったって言いやがったんですよ!
草薙さんからも焼きいれてやって下さい!」
「…あ、いや違うんすよ!」
「何が違うんだよ!この野郎!」
「俺はなんでキングが何もろくに抵抗せずに捕まったのかなぁって!」
「てめぇ同じことじゃねぇか!あぁ!?」
「ちょ、ちょちょ蹴ってな…。ぜ、ぜ全然違うっすよぉ!」
二人の口論はヒートアップしていく。ついには八田が蹴りを食らわそうと必死に鎌本に足を蹴り上げ、それを鎌本が懸命に回避しようと体を動かした。
「ふはははっ!」
突然笑いだした草薙にピタリと八田と鎌本は口と手足を止める。一体どうしたのだと戸惑いを隠せず大人しくなった二人をそっと草薙は地面に下ろすと直様、そのまま二人をクルリと体の向きを反転させ抱き締めた。そして草薙は彼らの耳元にそっと囁いた。
「教えたろか?」
「「え?あ、はい」」
「なんで尊がわざと捕まったんか」
その言葉にキョトンとする彼らを置き去りにして草薙はカウンターの中へ。そしてバンっと手をつくと、怒りを噛み殺しながら目の前に立つ二人を見る。
「このカウンターにちゃんと敬意を持ってごめんなさい出来るなら教えたる」
「…あ、はぁ」
「「ごめんなさい」」
草薙の無言の圧力に押され二人は納得いかないが、とりあえず頭を下げた。それを確認し満足したのか草薙は彼らに言い聞かすように語り始めた。
「えぇか〜
あんな天災みたいな奴をずっと閉じ込めておくんや。場合によって青の王が付きっきりにならんとイカン。そうすればどないなる?俺達が動きやすくなるやろ?あいつは俺達を自由にするために捕まったんや」
草薙の言葉に頭を上げて、耳を傾ける二人。そして聞き終えると八田の表情はパァッと明るくなった。
「ほぉら言ったじゃねぇか!
とっととまたあの腐れ外道と黒狗探しに行くぞ!」
「…え?」
「尊さんの期待に応えるんだ!」
「…あ、はい」
八田の勢いに押されるまま鎌本は頷く。そして八田は渋々といった様子で出ていく鎌本を追いかけ入り口へ。外へ出た八田はスケボを持つと扉越しに体を覗かせ店内にいる草薙へ声をかける。
「じゃあ草薙さん、また」
「おう。頼んだで~八田ちゃ~ん」
「ウィッス!」
意気揚々とバーを出ていく八田に草薙はヒラリと手を振るのだった。
*****
カラン
嵐のように二人が立ち去って暫くして再びバーの扉が開く。そして扉から入ってきたのは青い制服を身に纏った気ダル気な青年だった。その人物の登場に、珍しいとパチパチ瞬きする草薙とアンナがいる一方で、ほの香はあれっと驚きの声を上げ彼の名を呟いた。
「伏見くん!!」
「ハァ〜
たく、貴女って人は...
面倒事を呼ぶ天才ですか!?」
嬉しそうに破顔するほの香を見て、伏見はげんなりとした表現を浮かべて彼女に詰め寄った。だが、ほの香はその伏見の言った面倒事にピンとこず首を傾げた。
「私、何かした??」
「何かって...
自ら厄介ごとに首を突っ込むバカがいますか!?」
「だって困ってる人には手を差し伸べるでしょ」
違うの??とジッと見つめてくるほの香に伏見は頭を抱えて項垂れた。
そんな二人のやり取りを見て、カウンター越しから草薙が憐れみの眼差しを向ける。だが、頭の中はこの状況にこんがらがっていた。
「...猿比古」
「なんだ?アンナ」
「ほの香とどうしてそんなに仲いいの」
「...仲良く見えるならお門違いだ
俺は、室長にコイツを押し付けられただけだからな」
アンナのズルいといわんばかりの眼差しに伏見は心底嫌な顔をして小さく舌打ちしながら答えた。
「アンナ
上でほの香ちゃんに遊んでもらいな」
二人の押し問答に終止符を打つように草薙が口を開く。彼の口調は普段と変わらず柔らかいものであったが、表情は吠舞羅の参謀として役割を果たす時の真剣な面持ちであった。
視線を伏見から草薙に移したアンナは小さくコクリと頷く。そして、唯一このやり取りについていけなかったほの香を連れてアンナは上に上がった。
「…伏見」
二人がこの場から消えたのを確認すると、草薙は突っ立ったままの伏見を手招いた。それに従い伏見はカウンターにあるスツールを引いて座った。そして直様草薙は彼の目の前にサービスやとアイスコーヒーを出した。伏見はそれを素直に受け取ると一口含んだ。
「で??どういうことや
説明してくれるんやろうな??」
「えぇ…こうなったら止む終えないですから
俺が知ってる範囲で教えますよ」
草薙の鋭くなった視線に、物怖じせずに伏見は了承する。そしてポツリポツリと伏見はこうなった経緯を語り始めるのだった。
むこうさんは仕事が早いわ
うん、ええよええよ
映像さえ残ってくれたら必ずどっかが反応すると思うから
うん、わかった…
はい…はーい、ごめんやす」
掛かってきた通話に耳を傾けながら相槌を打つ草薙の声が静かなバーに反響する。そして暫くすると連絡を聞き終えたのか草薙は端末を切った。
「せやけどあの黒狗まで向こうについたってことはいよいよやっかいなことになってもうたな
もう……時間があらへんのに」
一人カウンターの向こうで遠い目をして考え付けむ草薙。そんな彼をカウンターから少し離れたソファーに場を移したアンナとほの香は注視していた。そんな二人のじっと見る視線に気づくと草薙はハッと二人の方に顔を向け、硬い表情を和らげ困ったように肩をすくめてみせた。
カラン
「…っんのタコォ!うおらぁ!」
突如バーの扉が開いたと思いきや、そこに鎌本の首を羽交い締めした状態で飛び込んできた八田がいた。彼は感情のままに声を荒げながら勢いそのまま投げ飛ばした。投げられた鎌本は頭からカウンターに突っ込む。この惨劇にグラスを拭いていた草薙は驚いた拍子に手が滑り持っていたグラスを手離してしまう。手から滑り落ちたグラスは草薙の思い虚しく地面に落下してしまうのだった。
「八田さん…ギブッスぅ」
「うっせぇ!腑抜けたこと言いやがってぇ!」
さて、そんなことも耳に入らないくらい感情が高ぶっている八田は俯せになった鎌本に馬乗りになり、海老ぞりさせる。降参と云わんばかりに自由な手で床を小刻みに叩くが、八田はそれを無視しさらに入れる力を込めた。
「あっ…俺のバーカウンターがっ!」
一方、グラスを割ってしまった草薙は状況を確認しようとカウンターから外に出る。そして、鎌本が突っ込んだせいで傷がついてしまった箇所は悲痛な声を上げて指でなぞった。
バーに置いてある一品一品、草薙自身がこだわりを持っているものだ。それを少しでも傷つけられた彼が怒らないわけがなかった。わなわなと肩を震わせ、草薙は未だにもみ合っている二人に怒りの矛先を向けた。
「んぉ前らぁ〜!」
ガシッと頭を鷲掴みされた八田と鎌本は宙へ上げられる。もちろん彼らの顔は傷つけられた草薙お気に入りのカウンターへ向けられた。そして二人の頭を掴んだ草薙は彼らにこのカウンターがいかに貴重なものであるか言い聞かせ始める。
「えぇか!お前らこのカウンターはなイギリスのパブから特別に譲って貰ったもんで高いんやぞ!?えぇ煙草の香り、酔っ払いの喧騒が染み込んだ歴史的な一物で磨き混めば磨き混むほどローゼストの艶がぁぁあ!」
その最中、草薙の感情が高ぶり握る力が強まる。その痛みに二人はうめき声を上げ悶絶する。
この3人のやり取りを遠巻きに見ていたアンナは大きく息を吐く。対して、笑みを絶やさず温厚な草薙の意外な一面にほの香は目を丸くし言葉を失うのだった。
「…で?喧嘩の原因は一体何なのかなぁ?ボーイズ」
言いたいことを言い終えた草薙は一度落ち着くと、両手にいる彼らに事の真相を尋ねる。草薙の僅かにドスを効かせた声にビクリと反応を示す八田と鎌本は、それぞれ主張を譲らないとばかりに声を上げた。
「あ、やぁ!だからこいつが尊さんのことを!」
「や、そんな!」
ギロリと草薙の睨みを効かせた視線は左手にいる鎌本に向けられる。その視線にビクリと怯えながらも必死に意味合いが違うと不思議に思っていることを述べる。
「尊が、なんやて?」
「こいつが尊さんが青の軍門に下ったって言いやがったんですよ!
草薙さんからも焼きいれてやって下さい!」
「…あ、いや違うんすよ!」
「何が違うんだよ!この野郎!」
「俺はなんでキングが何もろくに抵抗せずに捕まったのかなぁって!」
「てめぇ同じことじゃねぇか!あぁ!?」
「ちょ、ちょちょ蹴ってな…。ぜ、ぜ全然違うっすよぉ!」
二人の口論はヒートアップしていく。ついには八田が蹴りを食らわそうと必死に鎌本に足を蹴り上げ、それを鎌本が懸命に回避しようと体を動かした。
「ふはははっ!」
突然笑いだした草薙にピタリと八田と鎌本は口と手足を止める。一体どうしたのだと戸惑いを隠せず大人しくなった二人をそっと草薙は地面に下ろすと直様、そのまま二人をクルリと体の向きを反転させ抱き締めた。そして草薙は彼らの耳元にそっと囁いた。
「教えたろか?」
「「え?あ、はい」」
「なんで尊がわざと捕まったんか」
その言葉にキョトンとする彼らを置き去りにして草薙はカウンターの中へ。そしてバンっと手をつくと、怒りを噛み殺しながら目の前に立つ二人を見る。
「このカウンターにちゃんと敬意を持ってごめんなさい出来るなら教えたる」
「…あ、はぁ」
「「ごめんなさい」」
草薙の無言の圧力に押され二人は納得いかないが、とりあえず頭を下げた。それを確認し満足したのか草薙は彼らに言い聞かすように語り始めた。
「えぇか〜
あんな天災みたいな奴をずっと閉じ込めておくんや。場合によって青の王が付きっきりにならんとイカン。そうすればどないなる?俺達が動きやすくなるやろ?あいつは俺達を自由にするために捕まったんや」
草薙の言葉に頭を上げて、耳を傾ける二人。そして聞き終えると八田の表情はパァッと明るくなった。
「ほぉら言ったじゃねぇか!
とっととまたあの腐れ外道と黒狗探しに行くぞ!」
「…え?」
「尊さんの期待に応えるんだ!」
「…あ、はい」
八田の勢いに押されるまま鎌本は頷く。そして八田は渋々といった様子で出ていく鎌本を追いかけ入り口へ。外へ出た八田はスケボを持つと扉越しに体を覗かせ店内にいる草薙へ声をかける。
「じゃあ草薙さん、また」
「おう。頼んだで~八田ちゃ~ん」
「ウィッス!」
意気揚々とバーを出ていく八田に草薙はヒラリと手を振るのだった。
*****
カラン
嵐のように二人が立ち去って暫くして再びバーの扉が開く。そして扉から入ってきたのは青い制服を身に纏った気ダル気な青年だった。その人物の登場に、珍しいとパチパチ瞬きする草薙とアンナがいる一方で、ほの香はあれっと驚きの声を上げ彼の名を呟いた。
「伏見くん!!」
「ハァ〜
たく、貴女って人は...
面倒事を呼ぶ天才ですか!?」
嬉しそうに破顔するほの香を見て、伏見はげんなりとした表現を浮かべて彼女に詰め寄った。だが、ほの香はその伏見の言った面倒事にピンとこず首を傾げた。
「私、何かした??」
「何かって...
自ら厄介ごとに首を突っ込むバカがいますか!?」
「だって困ってる人には手を差し伸べるでしょ」
違うの??とジッと見つめてくるほの香に伏見は頭を抱えて項垂れた。
そんな二人のやり取りを見て、カウンター越しから草薙が憐れみの眼差しを向ける。だが、頭の中はこの状況にこんがらがっていた。
「...猿比古」
「なんだ?アンナ」
「ほの香とどうしてそんなに仲いいの」
「...仲良く見えるならお門違いだ
俺は、室長にコイツを押し付けられただけだからな」
アンナのズルいといわんばかりの眼差しに伏見は心底嫌な顔をして小さく舌打ちしながら答えた。
「アンナ
上でほの香ちゃんに遊んでもらいな」
二人の押し問答に終止符を打つように草薙が口を開く。彼の口調は普段と変わらず柔らかいものであったが、表情は吠舞羅の参謀として役割を果たす時の真剣な面持ちであった。
視線を伏見から草薙に移したアンナは小さくコクリと頷く。そして、唯一このやり取りについていけなかったほの香を連れてアンナは上に上がった。
「…伏見」
二人がこの場から消えたのを確認すると、草薙は突っ立ったままの伏見を手招いた。それに従い伏見はカウンターにあるスツールを引いて座った。そして直様草薙は彼の目の前にサービスやとアイスコーヒーを出した。伏見はそれを素直に受け取ると一口含んだ。
「で??どういうことや
説明してくれるんやろうな??」
「えぇ…こうなったら止む終えないですから
俺が知ってる範囲で教えますよ」
草薙の鋭くなった視線に、物怖じせずに伏見は了承する。そしてポツリポツリと伏見はこうなった経緯を語り始めるのだった。