1章
夢小説設定
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「黒狗。夜刀神狗郎。
また面倒なのが絡んできたなぁ。
しゃーない。次の手、いこか」
ポケットから端末を取り出した草薙は横目で地面に蹲る彼女を見ながら画面に表示されたボタンを押した。
「そない遠くまでは行っとらんやろ。
お前ら、もうちょい探して来てくれるか? 」
振り返ってまた新しい煙草に火をつける草薙に心配そうに彼女を見ていた八田は立ち上がると勢いそのままに返事を返す。
「当たり前ッスよ!
あいつただじゃおかねー!!
行くぞ、おめーら!」
「「おう!」」
「八田ちゃ~ん、無理するんやないで~」
意気込む彼らをひらひらと手を挙げて見送った草薙は、ゆっくりとした足取りで彼女の元へ。そしてしゃがみこんで心配そうに彼女の顔を覗き込んだ。
「......瑞穂」
ズキン!!
優しくて懐かしいような誰かを呼ぶ声に再び頭が痛んだ。重たい頭でなんとか顔を上げると、先程の人がさっきの殺気だった様子と一変して心配そうな表情で自分を見ていることに気づいた。彼の紫がかったサングラス越しの瞳は愛おしそうで、でもほの香はその名に聞き覚えがなく申し訳なさそうに顔を歪めた。
「.....瑞穂?」
再び名を読んだ草薙は、眉をひそめた。彼女の桜色の瞳が不安げに揺れていたからだ。直ぐ様胸元に飛び込んでくると思いきや一体どうしたのだろうと思っていた草薙だが、彼女の次の一言でどん底に叩き落される。
「あの?瑞穂って...人違いじゃないですか?」
「......へ?」
「すみません
実は記憶が何もなくて…
でも助けてくれた人によると私の名前は棗ほの香というらしいんです」
思わぬ一言で草薙は咥えていた煙草を落としてしまう。そんな彼に目の前で、ほの香はおどおどと視線を泳がせながら今己に起こっている事情を述べた。
「……そうか」
哀愁感漂う彼の声にほの香は縮こまってしまった。その瑞穂という人がどれほど彼にとって大事な人であるかが即座にわかってしまったからだ。
「よっと…」
「え!?!?」
まっすぐ彼の顔を直視出来ないのに加えて、未だに続く頭痛の痛みもあって顔を下に向けていたほの香は、いつの間にか彼により抱きかかえられてしまった。驚きと同時に属に言うお姫様抱っこの状態に恥心がつのり、ほの香は赤面してしまう。
「意外と軽いなぁ〜
ちゃんと食べてるか??」
そんな彼女の様子を見て抱きかかえた草薙は笑った。
草薙に茶化されたほの香は羞恥を抱きながら反射的に口を開いた。
「食べてます!!
というか、どういうつもりですか!!」
咄嗟に言い返したほの香。そんな意地を張るほの香を宥めるように草薙はそっと彼女の頭を撫でた。
「体調悪い人をほっとけん
何もせんから、ちょっと休んでき」
「で…でも…」
「……大丈夫やから、なぁ?」
申し訳ないと俯くほの香の言葉に重ねるように草薙が優しく語りかける。自分に向けられた優しい眼差しにほの香は信じてもいいのだろうかと思い始めた。
「…お世話になります」
「そうそう
最初からそう素直になればええんや」
自分の腕の中で縮こまってコクリと頭を下げたほの香を見て草薙は満足そうに口角を上げた。一方、ほの香はポンポンと撫でられる感触にウトウトとし始めた。大きな掌から伝わるのは優しく懐かしい温もり。ここずっと不安で押しつぶされ気を張っていたほの香は初めての安堵を感じた。段々と瞼が重たくなっていく、そして霞んでいく視界でほの香が最後に見たのは優しく微笑む草薙の姿だった。
「はぁ…ほんまかいな」
完全に意識を失ったほの香を抱えて歩きながら草薙は小さく息をついた。未だに彼の頭の中はごちゃごちゃで整理がついていなかったのだ。ようやく見つけた探し人。だが、久しぶりに会った彼女の頭の中からは何もかもがすっぽりと抜けてしまっていたのだ。冗談やろと半信半疑だったが、彼女の様子から見てもこれが真実であることは明らかであった。
それでもずっと探し回っていた瑞穂が今、自分の腕の中にいる。この事実だけが草薙にとって唯一の救いだった。抱えている彼女から伝わる温もりをもう離すまいと草薙はギュッと力を込めた。
「相変わらず面倒ごとを持ってくることが多いなぁ
困ったもんや、俺の姫さんは...」
小さくそう呟くと草薙は抱えているほの香の額にそっと口づけをするのだった。
また面倒なのが絡んできたなぁ。
しゃーない。次の手、いこか」
ポケットから端末を取り出した草薙は横目で地面に蹲る彼女を見ながら画面に表示されたボタンを押した。
「そない遠くまでは行っとらんやろ。
お前ら、もうちょい探して来てくれるか? 」
振り返ってまた新しい煙草に火をつける草薙に心配そうに彼女を見ていた八田は立ち上がると勢いそのままに返事を返す。
「当たり前ッスよ!
あいつただじゃおかねー!!
行くぞ、おめーら!」
「「おう!」」
「八田ちゃ~ん、無理するんやないで~」
意気込む彼らをひらひらと手を挙げて見送った草薙は、ゆっくりとした足取りで彼女の元へ。そしてしゃがみこんで心配そうに彼女の顔を覗き込んだ。
「......瑞穂」
ズキン!!
優しくて懐かしいような誰かを呼ぶ声に再び頭が痛んだ。重たい頭でなんとか顔を上げると、先程の人がさっきの殺気だった様子と一変して心配そうな表情で自分を見ていることに気づいた。彼の紫がかったサングラス越しの瞳は愛おしそうで、でもほの香はその名に聞き覚えがなく申し訳なさそうに顔を歪めた。
「.....瑞穂?」
再び名を読んだ草薙は、眉をひそめた。彼女の桜色の瞳が不安げに揺れていたからだ。直ぐ様胸元に飛び込んでくると思いきや一体どうしたのだろうと思っていた草薙だが、彼女の次の一言でどん底に叩き落される。
「あの?瑞穂って...人違いじゃないですか?」
「......へ?」
「すみません
実は記憶が何もなくて…
でも助けてくれた人によると私の名前は棗ほの香というらしいんです」
思わぬ一言で草薙は咥えていた煙草を落としてしまう。そんな彼に目の前で、ほの香はおどおどと視線を泳がせながら今己に起こっている事情を述べた。
「……そうか」
哀愁感漂う彼の声にほの香は縮こまってしまった。その瑞穂という人がどれほど彼にとって大事な人であるかが即座にわかってしまったからだ。
「よっと…」
「え!?!?」
まっすぐ彼の顔を直視出来ないのに加えて、未だに続く頭痛の痛みもあって顔を下に向けていたほの香は、いつの間にか彼により抱きかかえられてしまった。驚きと同時に属に言うお姫様抱っこの状態に恥心がつのり、ほの香は赤面してしまう。
「意外と軽いなぁ〜
ちゃんと食べてるか??」
そんな彼女の様子を見て抱きかかえた草薙は笑った。
草薙に茶化されたほの香は羞恥を抱きながら反射的に口を開いた。
「食べてます!!
というか、どういうつもりですか!!」
咄嗟に言い返したほの香。そんな意地を張るほの香を宥めるように草薙はそっと彼女の頭を撫でた。
「体調悪い人をほっとけん
何もせんから、ちょっと休んでき」
「で…でも…」
「……大丈夫やから、なぁ?」
申し訳ないと俯くほの香の言葉に重ねるように草薙が優しく語りかける。自分に向けられた優しい眼差しにほの香は信じてもいいのだろうかと思い始めた。
「…お世話になります」
「そうそう
最初からそう素直になればええんや」
自分の腕の中で縮こまってコクリと頭を下げたほの香を見て草薙は満足そうに口角を上げた。一方、ほの香はポンポンと撫でられる感触にウトウトとし始めた。大きな掌から伝わるのは優しく懐かしい温もり。ここずっと不安で押しつぶされ気を張っていたほの香は初めての安堵を感じた。段々と瞼が重たくなっていく、そして霞んでいく視界でほの香が最後に見たのは優しく微笑む草薙の姿だった。
「はぁ…ほんまかいな」
完全に意識を失ったほの香を抱えて歩きながら草薙は小さく息をついた。未だに彼の頭の中はごちゃごちゃで整理がついていなかったのだ。ようやく見つけた探し人。だが、久しぶりに会った彼女の頭の中からは何もかもがすっぽりと抜けてしまっていたのだ。冗談やろと半信半疑だったが、彼女の様子から見てもこれが真実であることは明らかであった。
それでもずっと探し回っていた瑞穂が今、自分の腕の中にいる。この事実だけが草薙にとって唯一の救いだった。抱えている彼女から伝わる温もりをもう離すまいと草薙はギュッと力を込めた。
「相変わらず面倒ごとを持ってくることが多いなぁ
困ったもんや、俺の姫さんは...」
小さくそう呟くと草薙は抱えているほの香の額にそっと口づけをするのだった。