2年生
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「ねぇ!何処行こうか??」
「そうだなぁ〜、流石に小腹空いたからなぁ…」
「そっか、部活終わりだもんね
じゃ、どっか適当に何か買って食べようか」
ガヤガヤとどこもかしこも賑やかで繁盛している屋台が両側にずらりと並ぶ通路を浴衣を着た少女と赤いジャージを着た青年がゆっくりとした足取りで歩く。そして、賑やかな音を聞きながら二人はまず何をしようかと話し合う。その結果、部活終わりの青年の一声により一先ず何か買ってお腹を満たそうと決めるのだった。
「美味いか??」
「うん!」
パクっと雫はシャリシャリのかき氷の山を崩して美味しそうに頬張る。隣では空腹を満たした黒尾が微笑ましそうにそのかき氷を食べる雫を見つめていた。
「黒尾は食べなくてよかったの??」
「ん??あぁ…俺はこれで満足」
「まぁそれもそうか。
あんなに食べたもんね」
「まぁこれでもまだ腹一杯じゃねーけどな」
「流石体育会系だね」
小さく雫は苦笑いを零した。お好み焼き、イカ焼き、たこ焼き等目につくものから買っていった黒尾を見て、バンドメンバーの男子勢はここまでは食べないだろうなと密かに比べていたのだ。
「ほら、さっさと食わねーと溶けちまうぞ」
「わかってるって!!」
黒尾の指摘にムキになると雫は再び手を動かしだす。若干山の形が崩れかけてい水っぽくなったかき氷を崩して口に頬張る。途端に口の中に冷たい感触が広がっていく。
「うーん!!夏はやっぱりかき氷だね」
「見てる側からしたら食べたくなってくるから早く食べてくれませんかね」
「食べたいなら買ってくれば??」
「今更あんな行列に並ぶ気力はゴザイマセン」
「じゃあ諦めて」
「クソ、嫌味たっぷりな言い方だな」
「たまにはこういうのも悪くないでしょ?」
いつもおちょくられ揶揄されている側の雫は初めて優位にたった気がして優越感に浸るように笑みを浮かべながらかき氷を突っつく。そんな彼女を横目に黒尾は賑わっている会場を見渡す。
「次どうすっか??」
「まだ花火まで時間あるもんね
あっ、でも場所取りしたほうが良いのかな??」
まだ時刻が早いためまだまだ屋台を回ることもできる。が、早めに場所をとらないと花火が上がる近くのところは沢山の人で埋まってしまうのではないかと雫は危惧する。が、雫の隣にいる黒尾は雫とは裏腹にニヤリと口角を上げるのだった。
「その心配はねぇーよ」
「どうして??」
「とっておきの場所、俺知ってるから」
「穴場スポットってやつ??」
「そうそう。
人気なんか気にせずに見れるぜ」
「それすごく良い!!」
うわぁ!!楽しみ!!と目を輝かせ嬉しそうにはしゃぎだす雫に、黒尾はさっさとそれを食えと催促する。それに対して、はーいと雫は元気よく返事をするのだった。
*****
「あっ…」
「どうした??」
再び屋台を回り始めた二人。その中、雫が目に止まったものに奪われて声を漏らして足を止める。それに気づいた黒尾も足を止めると不思議そうに雫の視線の先に目線を向ける。
「…射的やりてーの??」
「……うん」
「できるの??」
「あっ!!今バカにしたでしょ!!」
「だってできそうに見えねーもん」
「相変わらず失礼な!!」
黒尾の挑発的な言葉に雫はムキになる。絶対ギャフンといわせてやると雫は意気込む。が、黒尾はゲラゲラと笑ったまま。そんな彼を力いっぱい雫は小突くと、いてぇーよと不満そうな黒尾を放っ置いて雫はお目当ての射的に足を向けるのだった。
「……やっぱりできねぇーじゃねーか」
「うっ、うっさいな!!」
いざ射的をやってみると全然雫は的に当てることができなかった。それを背後から見ていた黒尾がほらみろ俺がいったとおりじゃねーかとイジる。その声に雫はムカッとしながら射的の狙いを定める。が、放った弾は全く的外れな方向に飛んでいく。その光景に後ろで見守っていた黒尾は案の定お腹を抱えて笑い出す。
「おじさん!!もう一回!!」
「まだやんのかよ!!」
「だって!!」
弾数を使い切ってしまった雫は、射的の店員にもう1回分のお金を渡そうとする。が、それに思わず黒尾が目を見開く。何度もやっても結果は同じでどこにも当たる気配が雫にはないからだ。その静止に雫は不貞腐れながら一点を見つめる。その視線の先にはある景品が置かれていた。実際、雫は射的に興味があったわけではなくこの景品に目を奪われたのだ。
「はぁ…そういうことか」
ようやく雫が執拗にある一つの的を狙っていることに合点がいった黒尾は小さく息をつく。そして、雫が渡そうとしていたお金を退けると自身の持っていたお金を店員に払うのだった。
「手本見せてやるよ」
店員のおじさんから弾を受け取ると黒尾はニヤリと口角を上げる。そして、雫から射的銃を受け取ると真剣な眼差しを浮かべて的に向かうのだった。もちろん狙うのは雫が執拗に狙っていた的だ。意識を集中させ黒尾は射的銃を構える。そして黒尾は照準を合わせるとゆっくりと引き金を引くのだった。
「すっ、すごい!!!」
「ほらよ、これが欲しかったんだろ??」
射的を終え店員から景品を受け取った黒尾は、尊敬の眼差しを向ける雫にそれを押し付けて渡した。それに、えっ??と雫は驚きの表情を見せた。
「もらっていいの??」
「上げるために頑張って取ったんだから受け取ってクダサイな」
「……ありがと
でも、なんでこれが欲しいってわかったの??」
「お前の視線がこれ一点だったからな
って、なんでそれなんだ??」
怪訝な表情を浮かべる黒尾は、ポカンとしながらも受け取った黒猫のぬいぐるみを抱きしめる雫に思っていた疑問を投げかけた。その疑問に雫は恥ずかしそうに顔を赤面させる。
「ひっ、秘密!!」
雫は黒猫のぬいぐるみを抱く力を強めた。ちょっと意地悪そうな眼差しで決して可愛いとは言えない黒猫のぬいぐるみ。だが、このぬいぐるみは雫からしたら目の前にいる黒尾に酷似して見えてしまったのだ。が、そんなのを本人に言えるはずがなく咄嗟に雫は秘密と言い放った。
「ふーん」
「あ、ほら!そろそろ花火始まるよ」
「なんかすっげぇはぐらかされた感じがするのは気の所為デスカ?」
「気の所為!気の所為!!」
理由を聞くまで納得してくれなそうな黒尾に対して、雫は時間を見て話題を切り替えた。そして、不満げな表情の黒尾を引っ張りいこいこ!!と催促する。それに黒尾は大きくため息をつき追求を諦め折れるのだった。
「雫ちゃーん、俺場所教えてないけどわかりますか〜??」
「わかるわけないじゃないですか〜、黒尾さん」
「じゃどこ向かってんだよ!」
「わかんなーい!!」
「わかんなーい!じゃねーよ!!
方向逆だ!!逆!!!」
「えっ??こっち??」
「ちげーよ!!」
雫に引っ張られながら黒尾はなんとか己が知っている穴場スポットに誘導しようとする。が、結局雫が的はずれな方向に行くものだから痺れを切らした黒尾は逆に雫を引っ張り返す羽目になるのだった。
*****
「どうだ?特等席だろ」
得意そうに黒尾は、夜空に咲く花火を見上げる。大きな音を立てて色鮮やかに咲き誇る花火。雫は、心奪われて反応を示すことができなかった。
「……香坂??」
「あ、ごめん。花火に見惚れちゃってたよ」
「ま、そうなるのも無理ねーか」
本当は目を輝かせて嬉しそうに返事を返す雫を予想していた黒尾はいい意味で期待を裏切られる。が、肩をすくめながらも黒尾は連れてきてよかったと内心で思うのだった。そんな彼に雫は花火を見つめたまま礼を述べる。
「ありがと、いいとこ連れてきてくれて」
「お安い御用さ」
黒尾に視線を向けるとこなく雫は、間髪入れずに打ち上がる花火にカナリア色の眼差しを向ける。対して、黒尾はなぜか花火ではなく雫に見入っていた。いつも見ている制服姿ではなく、浴衣姿だからだろうか?可愛らしい彼女が大人っぽく見えて仕方がなかった。自分が来ているジャージと同じ赤色を基調とした浴衣。そして、綺麗な亜麻色の髪にはボタンの花の髪飾り。生暖かい夏風で靡く亜麻色の髪から彼女の匂いが伝わってきた。
「????」
視線に気づいた雫が視線を上げたことで、カナリア色の瞳と黒尾は視線を混じりあった。
本当はいけないとわかっている。こんなことをするのは…
脳裏に浮かび上がるのは、バレンタインデーの時のワンカットのシーン。
周囲の浮ついた雰囲気に流されている自覚があるものの、僅かに残っている理性でこの行動を止めることはもうできなかった。
花火の打ち上がる音に合わせて黒尾は屈むとゆっくりと雫に顔を近づけるのだった。