2年生
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「おっ?お前ら出待ちか??」
一足先に外へ出た和真と紗英。そんな彼らの視界に入ったのは見知った人物達。思わずそんな彼らにケラケラと笑いながら和真が声をかけ歩み寄った。
「お!長谷川じゃねーか!お疲れ!!」
「野鳥さんもお疲れ様」
その声に反応して同じクラスの夜久と海が声をあげる。
「おぉ~!お前らさっきステージにいた奴らじゃねーか!!」
「えっとコイツだれ??」
「ちょっと木兎さん、失礼ですよ」
「わりぃーな、長谷川」
勢いよく気づいた木兎が和真と紗英に向かって駆け寄る。それに対して見覚えのない顔に和真と紗英は若干引き気味に。そんな彼らを見かけて赤葦と黒尾が申し訳なさそうに木兎を引きはがす。
「二人とも梟谷学園のバレー部だ。
凄く五月蠅いコイツは2年の木兎で、その木兎のストッパー役が1年の赤葦だ」
「おい!黒尾!なんだその適当な紹介の仕方は!?!?」
「だって本当のことだろうが!」
「まぁ否定できませんね」
「なんでだよ!赤葦!?!?」
黒尾の紹介の仕方に案の定木兎はぎゃあぎゃあと騒ぎ出す。だが、その紹介に赤葦が肯定の意思を示したことで、木兎の矛先は赤葦にシフトしてしまう。
「あぁ…アイツらのことは放っといて良いぜ」
「夜久の言う通りだな」
「いつものことだからね」
「「そ…そうなんだ」」
二人の口論に唖然とする和真と紗英に対して、日常茶飯事だと夜久達は口々に言うのだった。その言葉に和真と紗英は苦笑いを浮かべるのだった。そんな彼らを横目に夜久は二人が出てきた出入口に視線を向ける。
「香坂は??」
「あぁ…雫ならもうそろそろ出てくると思うぜ」
「なになに?皆して、雫待ちなの~」
「なんで紗英はそんなに不貞腐れてんだよ」
「だって~、雫ばっかズルいじゃん」
夜久から視線を外して和真は隣にいる紗英を見下ろす。呆れた目を向ける和真に紗英は頬を膨らませて詰め寄った。そんな彼女の様子を見て、黒尾が声をあげる。
「…なんだ気づいてねーの?」
「何をよ?黒尾君??」
「それどう見ても長谷川のせいだろ」
苛立ちを滲ませる紗英を気にすることなく、黒尾は事実を突きつけるように、和真を指さした。指を指した黒尾はニヤリと悪だくみを企んだ不敵な笑みを浮かべ、指さされた本人の顔は血の気が失せていく。
「……いわれてみれば確かに」
「ゲっ!?!?」
黒尾の指が指された先の和真を紗英は見上げる。確かによくよく思い返してみると毎々和真はライブで紗英に変な虫がつかないようにと牽制しているのだ。そのご厚意は嬉しいがそれで人気が自分に向かないのだったら本末転倒だ。もちろん紗英の苛立ちは和真に向けられた。
「和真のバカ!!」
「はぁ~!?俺のを俺のだって公言して何が悪いんだよ!!」
「そんなことするから私の人気が~~~!!」
「………流石に長谷川かわいそうじゃないか??」
「いいんじゃねーの?こんくらい」
黒尾の指摘が引き金になって和真と紗英の口論が勃発する。収まることなくドンドンヒートアップしていく光景に夜久は和真の事を憐れに思うのだった。対して黒尾は、気にする素振りを見せなかった。だが、数秒後姿を表した人物にあからさまに反応を示すのだった。
「おっまたせーって……」
「あれ??珍しい顔ぶれが揃ってるね」
建物から出てきた雫と拓斗は、すぐに先に行ってしまった二人を見つける。が、そこには会いたかったようで会いたくなかった人物がいて雫は思わず続きの言葉が引っ込んでしまい、足を止めてしまう。そんなあからさまに動揺する雫に対して拓斗はわかっていたかのように全く驚く様子を見せなかった。珍客の事を気にすることなく、拓斗は雫の肩に大丈夫だと言わんばかりに己の手をおいた。拓斗が口にしなくても肩から伝わる安心感に雫はホッとする。そして、先に歩いていってしまった拓斗の後に続くように雫は足を一歩踏み出すのだった。
「どーも、バレー部の皆さん。ライブは楽しんでくれたかな??」
「すっげー、楽しかった!!!」
抱いている感情を見せない爽やかな笑みを浮かべて彼らに当たり障りのないことを投げかけた。それに即座に一人の人物が食いついた。もちろん見覚えのない人物の登場に流石の拓斗も顔を顰めてしまうが、彼は気にすることなく、片手を勢いよく差し出した。
「それはよかった…って誰?君?」
「木兎光太郎だ!!宜しくな!!」
差し出された手に対して拓斗は応じるように手を出す。すると、木兎は嬉しそうに拓斗の手を握り、ぶんぶんと躊躇なく勢いよく振ってから手を離した。その木兎の行動に、ストッパー役の赤葦が切羽詰まった声を上げる。
「ちょっと木兎さん!」
「なんだよ、赤葦!俺はただ感想を言っただけだぞ!」
「感想を言う前に先に名乗ってくださいよ」
「え〜、別にちゃんと名乗ったからいいじゃねーかよ」
「よくありませんよ」
不貞腐れた声を上げる木兎を赤葦は一声で黙らせる。そして、赤葦はそれを確認すると拓斗に改めて向き直った。
「すみません。俺たち、梟谷学園の……」
「おっ!!」
だが、赤葦が自己紹介を終わらせるより先に木兎が大きな声を上げる。それに釣られるように拓斗と赤葦は視線を向ける。すると、そこには遅れて着いた雫に詰め寄る木兎がいたのだった。
「……赤葦くんだっけ??」
「はい、そうです」
「アイツいつもあんなにテンション高いわけ??」
「まぁ、そうですね」
誰に対してもテンション高く接する姿勢の木兎の様子を見て、雫のフォローに回るより先に拓斗は思わず目の前にいる苦労人を労うう言葉を投げかけていたのだった。
*****
「なぁ!黒尾のどこがいいんだ??」
「へぇ!?!?」
「えっ!?!?」
突如現れた存在からの予想だにしていなかった言葉に雫は思わず素っ頓狂な声を発する。それに対して木兎も同じような声を上げた。
「あれ??黒尾の女じゃないの!?」
「えっ!?!?」
「あれ??黒尾のやつなんて言ってたっけ!?」
うーーんと必死に首を捻って考え込む木兎に対して、雫の心の中は衝撃な言葉のせいで様々な感情が渦めきあっていた。黒尾が誰かに自分のことを他校の人に話していたのも驚きだが、それ以上に黒尾の女!?!?いや、逆に振られている立場上そんなふうに彼が紹介するわけがないのと同時に少しだけ夢物語のようにもしかしたらと期待してしまっている自分がいた。だが、その一瞬の希望も即座に崩されてしまう。
「なに、木兎は香坂を困らせてんだよ」
「あ、黒尾!こいつお前のなんだっけ??」
「だから言ったろ?ただの腐れ縁だって」
木兎の相変わらずの頭に、黒尾は思わずこめかみに手を当てる。そんな黒尾の苦労をしらない木兎はそうだったと拳を手のひらに当てて音を立てる。
「おまえなぁ〜」
「なぁなぁ!俺のこと紹介してくれよ!!」
「お前が加わるとややこしくなる気がしてならねーんだけど」
「黒尾、紹介してよ」
木兎は心底嫌な表情を浮かべる黒尾にお構いなしに紹介しろの一点張り。そんな木兎にどうやって諦めてもらおうかと思考を巡らし始める黒尾だったが、蚊帳の外に置かれていた雫の一声でその思考が意味なさないものになってしまう。黒尾自身は面倒くさいことになる気がしてならないのだが、当の本人が望んでいる以上仕方がないと諦め渋々と木兎のこと、ついでに雫が会ったことがないメンバーについても紹介するのだった。
「……久しぶりだね」
「そうだな、クラス変わってから全く会わねーもんな」
「ホントだよね。あんなに腐れ縁って言えるほど日常生活で顔合わせるの当たり前だったのにね」
紹介してもらって満足したのか、騒がしそうな場所に木兎は行ってしまい、雫と黒尾だけになってしまう。久々に面と向かって会う両者は気まずさを感じつつもぽつりぽつりと喋りだした。互いに活躍を労い合い、最近あったことを楽しげに語り合い少しずつだが気まずい空気を取り除いていった。
「そういえばよ……」
「んん??」
唐突に改まった黒尾が話を切り出す。今更だけどと、申し訳無さそうに言葉を区切りバッグを漁りだす黒尾を雫は不思議そうに見つめた。
「バレンタインの時チョコありがとな。
お礼言おうと思ったんだけど、中々言い出せなくてよ」
なんと黒尾が取り出したのは小洒落た小さい箱。えっ!?と驚きの声を漏らした雫は、差し出された箱を恐る恐る受け取りながら顔を上げる。するとそこにはバツが悪そうに後頭部を掻く黒尾がいた。
「………もしかして渡しにわざわざ来てくれたの??」
「夜久と海にいいかげんにしろって叱咤されちまった」
「アハハ、二人はちゃんとお返しとお礼くれたからね」
「悪かったな、遅くて」
「ホント、今更って感じだよ!
でもさ、嬉しいや。お返しもお礼も貰えないだろうと思ってたからさ」
ありがとね、わざわざ渡しに来てくれて
別に見返りを求めてチョコを渡した訳ではないのだ。ただたんの自信の自己満足。だからこそ、黒尾にお返しの品を渡されたとの事実が雫にとって驚くには十分だったのだ。驚いた後に湧いてくるのは嬉しいという感情。雫は大事そうにその箱を抱きかかえると、ふんわりと目を細めて笑うのだった。そんな彼女の表情に黒尾は目を奪われてハッと息を呑むのだった。