バスケに青春を懸ける
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「黄瀬!!お前テスト平気か??」
ふと、練習後に笠松に黄瀬は声をかけられた。IH予選が無事に終わった彼らは、IHに向けてさらに熱を入れて取り組みたいのは山々だった。だが、そのためには大きな山を超えなくてはいけなかったのだ。
「えっと……」
笠松の問いに対して、黄瀬は眼をおどおどと泳がせた。その態度に直感的に笠松はヤバいのだと感じた。
「オイ!!赤点以下をとったら補講だからな!!
絶対に取んなよ」
赤点を取ったら問答無用で放課後にある補習に参加しないといけないのだ。それは必然的に練習時間が減るということなのだ。流石に、エースが欠けては困ると笠松は黄瀬に発破をかける言葉をかけた。
「そんな!!そう言われても!!」
「お前の得意なコピーでどうにかなんないのか!!」
いつに無く弱気な黄瀬に笠松は若干やり投げ状態。そんな彼に黄瀬は泣きつくように声を上げる。
「無理っす!!そんな便利な能力だったら苦労しないっす!!」
「じゃ、自力で乗り越えろ!!」
「そんな〜!!俺を見放さないでくださいッス!!」
という具合で、ダラダラと押し問答を繰り返しながら帰っていた二人。そして、校門近くまで来た彼らの視界の先に突如、藤色の髪が映った。
「「あっ……」」
笠松と黄瀬の呆けた声に、視界に映った彼女が振り向き訝しげな顔を浮かべた。だが、笠松だけならともかく黄瀬がいる時点で厄介事しか起こる気がしないと感じた絢雅はいそいそと止めた足を動かし始めた。
「ま…待って!!絢雅っち!!」
慌てて黄瀬がマズイと絢雅の元へ走り、彼女の肩を掴んだ。
「何??」
邪険の眼を向ける絢雅に黄瀬は今にも泣きそうな表情を浮かべる。
「そんなまだ何も言ってないのに逃げようとしないでほしいっす!!」
「だって、黄瀬が絡むと面倒なことしか起こらないから」
「そ…っ!!そんなことないっすよ!!」
絢雅の言葉に思い当たりがあるのか黄瀬は後ろめたそうに眼を泳がした。そんな彼にさらに眼光を光らせる絢雅に対して、追いついた笠松がガバっと頼むように手を合わせた。
「絢雅!!!!」
「はぁ……、何??兄さん」
切羽詰まった笠松の様子に、絢雅は盛大に息を吐くと要件を尋ねた。
「黄瀬をなんとか今度のテスト、赤点回避させてくれ!!」
「……兄さんがなんとかしてあげればいいじゃない??」
「俺は、自分の勉強で手がいっぱいだ!!」
完全に呆れた表情を浮かべて言葉を失う絢雅に、笠松は悲痛な表情を浮かべてもうひと押しと頼み込む。
「IHでチームが勝つために頼む!!!」
「お願いっす!!絢雅っち!!」
両者揃って頭を下げ始める事態に。暫し、それを眺めていた絢雅は観念した様子で肩を落とした。
「……わかった、そこまで言うなら」
黄瀬だけの頼みだったら即座に聞く耳を持たなかっただろう。だが、笠松からのたってのお願い。加えて、IHで海常が勝つためと言われたら快諾する他がなかった。
「絢雅っち!!ありがとうっす!!」
「黄瀬のためじゃないから」
嬉しそうに包容をかわそうとする黄瀬をさらりと絢雅はかわす。
「頼んだぞ!!絢雅」
「任せて…兄さん」
笠松の言葉に力強く絢雅は頷くと、うす気味悪く小さく口角をあげた。その表情に気づかなかった黄瀬は後々甘く見ていた自分に対して後悔するのだった。
「絢雅っち…そろそろ休憩を…」
「……駄目」
「絢雅っち、鬼すぎる!!」
次の日から、黄瀬は絢雅に勉強を教えてもらうことになったのだがすぐに根を上げて机にへばりついてしまった。
絢雅は黄瀬の予想以上に鬼教官だったのだ。
黄瀬の目の前の机に広がる数々の教科書達。そして、顔を上げると凄い形相で睨む絢雅の姿。視界に広がる光景に黄瀬は発狂したい気分に陥る。
決して、絢雅の教え方が悪いわけではない…
むしろ凄くわかりやすい……
チンプンカンプンで授業中の先生の言葉が頭に入ってこない黄瀬に対して、絢雅は丁寧に的確に教えてくれるのだから
でも…それでも……
「なんかないんすか!!」
ガバっと顔を上げて追いすがるように黄瀬は叫んだ。
「…何が??」
「こう……なんか…必勝法!!とか!!
楽に赤点を回避出来る方法とか!!」
そんな黄瀬の言葉を聞いた絢雅は呆れた表情を浮かべた。
「そんなの知らないし、あるわけ無いでしょ」
「で……でも!!」
「口を動かす気力があるなら、手を動かして」
バシッと黄瀬の言い分を絢雅は一蹴。途端に拗ねるように黄瀬は頬を膨らました。
「バスケだって、勉強だって同じ
ズルして楽して簡単にできるものじゃない、違う??」
その言葉に黄瀬はウッと言葉を詰まらせた。
「違くないっす...」
ガクリと黄瀬は項垂れた。
そんな彼に絢雅は問答無用と教科書を彼の目の前に置く。
「……時間が惜しい」
「が…っ…がんばるっす」
気合いを入れなおす黄瀬に、絢雅はというと逆にその気合いを削ぎそうな毒を吐く。
「まぁ、ここまで壊滅的に出来ないのは想定外」
純粋に感じていたことを素直に述べただけなのだが、この言葉はグサリと黄瀬の胸に刺さる。
「す…すいませんっす」
「その分、教えがいがある」
絢雅は真正面にいる黄瀬を見て不敵に笑った。愉快気に細められるアメジスト色の瞳、なによりその笑みが恐ろしく怖く黄瀬はごくりと息を呑んだ。
そこから1週間地獄のような日々が始まった…
罵倒中傷されながらも、絢雅のスパルタ教育に必死に黄瀬は喰らいついた。結果、無事に赤点回避。加えて、自己最高点に歓喜。嬉しさのあまり不意を狙って絢雅に飛びついた黄瀬は、その後直ぐに絢雅からしっぺ返しを喰らうのだった。