バスケに青春を懸ける
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黄瀬と別れて、絢雅は近くの公園を訪れていた。そこにはバスケットコートがあり、ストリートバスケが出来る場所だった。
絢雅は空いている場所を見つけると、荷物を置く。そして、バスケットボールを持ち出すと黙々とボールを突き始めた。
そして暫く没頭した絢雅の耳に聞き覚えのある声が聞こえてくる。ふと、汗を拭いそちらの方に視線を向けるとそこにいたのは黄瀬と誠凛の黒子だった。
だが、すぐに絢雅は視線を戻すと、再びボールを突き出した。そんな彼女が近くにいるとは知らず、黒子を呼び出した黄瀬が口火を切った。
「ってか、こうしてちゃんと話すのも久しぶりっすね
怪我…大丈夫っすか??」
「はい…大丈夫です」
内心ホッとしつつ、黄瀬は眼の前のベンチの下に荷物を置くとそのままベンチに乗り上がる。そのままヨッとベンチの背もたれの上に黄瀬は座り込むと思い出したように声をあげた。
「そういえば、緑間っちに会ったっすよ」
絢雅が消えた後、すぐに緑間が現れたのだ。相変わらずの独特な世界観を持つ彼に黄瀬は久しぶりのぐったり感を覚えた。
「う…うーん、正直、あの人はちょっと苦手です」
「あっは…そういえばそうだったすね
けどあの左手は半端ないっすよ実際、蟹座が良い日は特に」
珍しく狼狽し、視線を泳がす黒子に黄瀬は小さく笑った。だが、そんな緑間の実力はお墨付きだ。そのことを忠告するように目を細め真剣味を帯びる黄瀬の言葉に黒子は小さく頷いた。
「はい…」
「まぁ今日は見に来ただけらしいすわ
それより…」
黄瀬は大きく後ろに伸びるとほんのり茜色に染まりつつある空を見上げた。
「黒子っちにも振られて試合にも負けて高校生活でいきなり踏んだり蹴ったりっすわ…」
吐き出すように嘆くと黄瀬は器用にバランスを取りながら足を宙に浮かせ両手で身体を支える形になると顔を真上にし持っているボールを額に乗せた。
「ダメ元でも…一応マジだったんすよ〜」
「ひっくりかえりますよ
……すいません」
黄瀬の今の体勢に一言黒子は忠告する。そして、黄瀬の言葉に申し訳無さそうに視線をそらした。
「冗談っすよ」
黒子の言葉に小さく笑みを溢すと黄瀬は反動を使って地面に降り立ち黒子の前に立った。
「そんなことより訳が聞きたかったんスよ
なんで全中の試合が終わった途端…姿を消したんすか??」
少し悲しげに黄瀬は声に出すと、持っていたボールを黒子にパスするように放り投げた。
大きな弧を描いたそのボールは黒子の手に収まった。
そのボールの触感を感じながら、黒子は暫し考え込む。そして、黒子は困ったように表情を曇らせて黄瀬に本音を漏らすのだった。
「…わかりません」
「へぇ??」
もちろん、その言葉に黄瀬はキョトンとした表情になり思わず心の声を漏らした。
「帝光の方針に疑問を感じたのは確かに決勝戦が原因です
あの時僕は何かが欠落していると思った」
「スポーツなんて勝ってなんぼじゃないっすか
それより大切なことなんかあるんすか?」
「僕もこの前までそう思っていました
だから何がいけないかはまだはっきりわかんないです
ただ…僕はあの頃バスケが嫌いだった」
黒子はゆっくり思い起こしながら、ゆっくりと喋りだした。
「ボールの感触、バッシュのスキール音、ネットをくぐる音、
ただ好きで始めたバスケなのに
だから火神くんにあって、ホントに凄いと思いました
心の底からバスケットボールが好きで
ちょっと怖い時や腐った時もあったみたいだけど
全部人一倍バスケに対して真剣だからだと思います」
「わかんねーすわ」
黒子の言葉に黄瀬は表情に影を落とし、俯いた。それでも、何故か黄瀬の脳裏に過ぎったのは、嫌悪感満載の絢雅の姿だった。
チラッとだが、黒子と絢雅が重なって見えたのだ。
「けど一つ言えるのは、黒子っちが火神を買う理由がバスケへの姿勢だとしたら
黒子っちと火神は、いつか決別するっすよ」
一方……
黙々とシュートを撃ち続けていた絢雅の手がふと止まる。顔を上げるとそこにはガラが悪そうな5人組の男がいた。
「なぁ?嬢ちゃん
もう十分だろ?変わってくんないかい??」
「………嫌」
絢雅は表情を変えること無く、拒絶の意志を示した。もちろん、その言葉に彼らははぁ??と額に青筋を立てた。
「私が先に来たんだから、黙って待ってればいいじゃない」
「はぁ??聞いてれば舐めた口聞くじゃねーか」
ドスドスと一人が近づくと絢雅の目の前に立ち、彼女を見下ろした。見下されていることに内心イラッとしながらも絢雅は視線を上げ、無表情で睨みつけた。
「あぁ!!!何やってるんすか!!絢雅っち〜」
背後から聞こえる騒々しい声に後ろを振り向いた黄瀬は仰け反りそうになるくらい驚いた。フェンス越しに見えるのは、完全に絡まれている絢雅だったからだ。
「……知り合いか??」
不思議そうに視線そのままに尋ねるのは黒子を探しに来た火神だ。その言葉に黄瀬はコクコクと頷いた。
「そうっす!!
ってか、なんで絡まれてるんすか!!」
嘆くように呟くと早く行かねばと行動を移そうとする。その時、火神があることに気づく。
「あれ??黒子は??」
「えぇ〜!!」
さっきまでそこにいた場所にいた姿が黒子の見当たらないことに、一体どこにいったのかと二人はキョロキョロしだす。
だが、時間は待ってくれるはずがなく一刻を争う事態に……
「可愛くね〜嬢ちゃんだな
素直に場所譲ってくれれば痛い目に合わないで済むのにな」
グッと絢雅は胸ぐらを掴まれたのだ。ウッと苦痛な表情を浮かべながらも絢雅は鋭い眼差しで睨みつけた。
や…やばい!!
「何してるんですか??」
焦る黄瀬達の視界に映ったのは、胸ぐらを掴む手首を掴む黒子の姿だった。
「く…黒子っち〜」
「今のうちだ!!!」
歓喜を上げる黄瀬に、火神が声をあげる。加勢するため二人は走り出した。
「なんだお前??」
「乱暴はよくありません」
急に出てきた黒子に対して思わず目を見開いた彼は、掴んでいた手の力を緩めてしまう。その反動で、絢雅は地面に投げ出された。
ウッと痛みで少し顔を歪めた絢雅は、何故黒子が...と思いながら直ぐに立ち上がると、彼の横に立った。
「自分の思い通りにならないからって、苛立って暴力振ろうとするなんて
独りよがりもいいとこね」
絢雅の吐き捨てる刺刺しい挑発じみた言葉に、彼らは憤りで顔を真っ赤にする。
「なっ!?なんだと!!」
「バスケで勝負つけましょうか」
「はぁ!?
良いぜ、負けて泣いても知らねぇーからな」
突然の黒子からの提案。驚きはしたものの、目の前にいるのは生意気な少女といかにも弱そうな少年の二人だけ。
完全に舐めきった態度で、その案にのる彼らの背後にようやく駆けつけた二人が待ったをかけた。
「ちょっとタイムっす」
「俺たちも仲間に入れてくれよ」
ギラギラと獰猛な瞳を燃やす黄瀬と火神。提案にのった彼らは高身長でいかにも強そうな二人の登場にブルっと震え上がるのだった。
「何やってるんスカ!!」
ようやく、絢雅の前まで来た黄瀬は思わず声を荒げた。
「......向こうが悪い」
「悪いって...普通ここまで事態を悪化させることはないっしょ!!」
はぁーっとげんなりと肩を落とす黄瀬。そんな彼の肩に隣りにいた黒子がそっと手を置いた。
「黄瀬くんその話は後です」
「ギッタンギタンにしてやろーじゃねぇーか」
「そうっすね」
ギラギラと闘志を燃やした彼らは、眼の前の敵を睨め付けるのだった。
「たく何してんだよ!黒子」
「挑発しちゃ駄目じゃないっすか」
見事に蹴殺すると地面に伸び切った彼らを放置してストバスコートを後にした、黄瀬と火神はそれぞれの相手の行動に対してガミガミと叱った。
「だって、居ても立っても居られなかったので」
「だって、苛ついたから」
そんな言葉に物怖じることなく不服そうに黒子と絢雅は口を尖らせた。
「だってじゃねぇ!!
あのまま喧嘩になって、俺達が来るのがもう少し遅かったらどうする気だったんだ!!」
「いや100%ボコボコにされてました
見てください、この力こぶ」
「全然ねぇーじゃねぇーか!!」
絢雅はこういう子だったともう叱る気力も失った黄瀬の目の前では火神が黒子に対してまだ口酸っぱく言う光景が続いていた。
「じゃ俺はそろそろ行くっすわ」
荷物を持った後、動くために脱いだブレザーを肩にかけると黄瀬は満面の笑みを浮かべた。
「最後に黒子っちと一緒にプレーできたしね
ほら行くっすよ、絢雅っち」
絢雅を促すと、黄瀬は公園を出る。
だが、ふと思い出したように火神の方に振り向くと彼に聞こえるように大きな声を上げた。
「後、火神っちにもリベンジ忘れてねぇっすよ!!」
「…っ!!火神っち!?」
「黄瀬くんは認めた人にはなになにっちをつけます
良かったですね」
ビクッと黄瀬の呼び方に体を震わせた火神に、黒子は補足説明をした。
その言葉に火神はもちろん嫌悪感をぶつけるように声を上げた。
「…嫌だけど!!」
「予選で負けんなよ!!」
そんな火神の声は黄瀬に届くわけがなく、彼はニコニコしながらそう言い残し姿を消すのだった。
「そういえば…今思い出したけど、黒子って帝光にいたよね」
すっかり茜色の空を横目で見ながら、ふと思い出したように隣で何故か一緒に歩いている黄瀬に絢雅が尋ねた。その言葉に黄瀬は驚きと嬉しさで眼を輝かせてパッと絢雅を凝視した。
「そうすよ!!
ってか、黒子っち影薄いからほぼ気づかれることがないのによくわかったっすね」
黒子は月バスの”キセキの世代”特集時も、試合の時ですら周囲に気づかれることがないくらい影が薄いのだ。その特性を生かして、ミスディレクションを習得した黒子は幻のシックスマンとしてパスに特化した選手として帝光時代は活躍していたのだ。
「……………さぁ??」
絢雅は足を止めるとわからないと首を傾げた。そう答えるしかない、だって見えるものは見えるのだから。
「さぁって………」
困惑する黄瀬を置き去りに絢雅は再び歩き出す。慌てて、彼女の隣に歩み寄った黄瀬。だが、ふと小さく紡がれた絢雅の言葉に黄瀬は眼を点にする羽目に直面する。
「でも、彼とはいい関係を築けそう」
「…っ!!俺は!!」
すがるように黄瀬は絢雅の前に回り込むと答えの返事を期待して待った。
「………わかんない」
「わかんない?!?!」
黄瀬の言葉に絢雅はコクリと頷くと空を見上げ回想するようにぽつりぽつりと紡ぎ出した。
「最初は絶対こんな奴とつるんだりしたくないって思ってた。
けど、今日の試合とさっきの4人でやったバスケでちょっとだけ考えが変わった」
貪欲に勝利を求める姿
黒子とのプレーを心の底から楽しんでる姿
最後に見せた黄瀬の表情
これらが絢雅の心を揺れ動かしたのだ。
「…………」
「まぁ…そうだな、今後の黄瀬がどう変わっていくか次第だけど
黄瀬に付き纏われるの日々も悪くないかな」
絢雅の独白に言葉を失う黄瀬に、空から拍子抜けの彼に視線を戻した絢雅はクスリと笑みを零した。夕焼けに照らされたその表情に、思わず黄瀬は見惚れた。だが、それよりも絢雅の言葉が嬉しくて彼は飛びつかんばかりにはしゃいだ。
「絢雅っち〜〜!!」
「煩い!煩わしい!目障り!
だからさっさと視界から消えて」
「えぇ〜それは無理な相談っす」
ニコニコと嬉しそうに笑みを零した黄瀬は、絢雅の罵倒など気にもせずに彼女の手をとって歩き出す。
「だって、帰る場所一緒だし」
「……同じ屋根の下に住んでますみたいな語弊を招くような発言をしないで欲しいんだけど」
はぁーーーっと大きくため息をつくと絢雅はさっさと黄瀬の手から逃れて一人歩き出す。
「ちょっ!!絢雅っち!!」
ポツンと置いてかれそうになった黄瀬が沈んだ声で彼女の名を呼んだ。それに、絢雅は足を止め振り向く。
「ほら……置いてくよ」
その表情には嫌悪感は全く無く、拒絶されているわけではないと気づいた黄瀬は嬉しそうに彼女を追うように足を踏み出すのだった。
絢雅は空いている場所を見つけると、荷物を置く。そして、バスケットボールを持ち出すと黙々とボールを突き始めた。
そして暫く没頭した絢雅の耳に聞き覚えのある声が聞こえてくる。ふと、汗を拭いそちらの方に視線を向けるとそこにいたのは黄瀬と誠凛の黒子だった。
だが、すぐに絢雅は視線を戻すと、再びボールを突き出した。そんな彼女が近くにいるとは知らず、黒子を呼び出した黄瀬が口火を切った。
「ってか、こうしてちゃんと話すのも久しぶりっすね
怪我…大丈夫っすか??」
「はい…大丈夫です」
内心ホッとしつつ、黄瀬は眼の前のベンチの下に荷物を置くとそのままベンチに乗り上がる。そのままヨッとベンチの背もたれの上に黄瀬は座り込むと思い出したように声をあげた。
「そういえば、緑間っちに会ったっすよ」
絢雅が消えた後、すぐに緑間が現れたのだ。相変わらずの独特な世界観を持つ彼に黄瀬は久しぶりのぐったり感を覚えた。
「う…うーん、正直、あの人はちょっと苦手です」
「あっは…そういえばそうだったすね
けどあの左手は半端ないっすよ実際、蟹座が良い日は特に」
珍しく狼狽し、視線を泳がす黒子に黄瀬は小さく笑った。だが、そんな緑間の実力はお墨付きだ。そのことを忠告するように目を細め真剣味を帯びる黄瀬の言葉に黒子は小さく頷いた。
「はい…」
「まぁ今日は見に来ただけらしいすわ
それより…」
黄瀬は大きく後ろに伸びるとほんのり茜色に染まりつつある空を見上げた。
「黒子っちにも振られて試合にも負けて高校生活でいきなり踏んだり蹴ったりっすわ…」
吐き出すように嘆くと黄瀬は器用にバランスを取りながら足を宙に浮かせ両手で身体を支える形になると顔を真上にし持っているボールを額に乗せた。
「ダメ元でも…一応マジだったんすよ〜」
「ひっくりかえりますよ
……すいません」
黄瀬の今の体勢に一言黒子は忠告する。そして、黄瀬の言葉に申し訳無さそうに視線をそらした。
「冗談っすよ」
黒子の言葉に小さく笑みを溢すと黄瀬は反動を使って地面に降り立ち黒子の前に立った。
「そんなことより訳が聞きたかったんスよ
なんで全中の試合が終わった途端…姿を消したんすか??」
少し悲しげに黄瀬は声に出すと、持っていたボールを黒子にパスするように放り投げた。
大きな弧を描いたそのボールは黒子の手に収まった。
そのボールの触感を感じながら、黒子は暫し考え込む。そして、黒子は困ったように表情を曇らせて黄瀬に本音を漏らすのだった。
「…わかりません」
「へぇ??」
もちろん、その言葉に黄瀬はキョトンとした表情になり思わず心の声を漏らした。
「帝光の方針に疑問を感じたのは確かに決勝戦が原因です
あの時僕は何かが欠落していると思った」
「スポーツなんて勝ってなんぼじゃないっすか
それより大切なことなんかあるんすか?」
「僕もこの前までそう思っていました
だから何がいけないかはまだはっきりわかんないです
ただ…僕はあの頃バスケが嫌いだった」
黒子はゆっくり思い起こしながら、ゆっくりと喋りだした。
「ボールの感触、バッシュのスキール音、ネットをくぐる音、
ただ好きで始めたバスケなのに
だから火神くんにあって、ホントに凄いと思いました
心の底からバスケットボールが好きで
ちょっと怖い時や腐った時もあったみたいだけど
全部人一倍バスケに対して真剣だからだと思います」
「わかんねーすわ」
黒子の言葉に黄瀬は表情に影を落とし、俯いた。それでも、何故か黄瀬の脳裏に過ぎったのは、嫌悪感満載の絢雅の姿だった。
チラッとだが、黒子と絢雅が重なって見えたのだ。
「けど一つ言えるのは、黒子っちが火神を買う理由がバスケへの姿勢だとしたら
黒子っちと火神は、いつか決別するっすよ」
一方……
黙々とシュートを撃ち続けていた絢雅の手がふと止まる。顔を上げるとそこにはガラが悪そうな5人組の男がいた。
「なぁ?嬢ちゃん
もう十分だろ?変わってくんないかい??」
「………嫌」
絢雅は表情を変えること無く、拒絶の意志を示した。もちろん、その言葉に彼らははぁ??と額に青筋を立てた。
「私が先に来たんだから、黙って待ってればいいじゃない」
「はぁ??聞いてれば舐めた口聞くじゃねーか」
ドスドスと一人が近づくと絢雅の目の前に立ち、彼女を見下ろした。見下されていることに内心イラッとしながらも絢雅は視線を上げ、無表情で睨みつけた。
「あぁ!!!何やってるんすか!!絢雅っち〜」
背後から聞こえる騒々しい声に後ろを振り向いた黄瀬は仰け反りそうになるくらい驚いた。フェンス越しに見えるのは、完全に絡まれている絢雅だったからだ。
「……知り合いか??」
不思議そうに視線そのままに尋ねるのは黒子を探しに来た火神だ。その言葉に黄瀬はコクコクと頷いた。
「そうっす!!
ってか、なんで絡まれてるんすか!!」
嘆くように呟くと早く行かねばと行動を移そうとする。その時、火神があることに気づく。
「あれ??黒子は??」
「えぇ〜!!」
さっきまでそこにいた場所にいた姿が黒子の見当たらないことに、一体どこにいったのかと二人はキョロキョロしだす。
だが、時間は待ってくれるはずがなく一刻を争う事態に……
「可愛くね〜嬢ちゃんだな
素直に場所譲ってくれれば痛い目に合わないで済むのにな」
グッと絢雅は胸ぐらを掴まれたのだ。ウッと苦痛な表情を浮かべながらも絢雅は鋭い眼差しで睨みつけた。
や…やばい!!
「何してるんですか??」
焦る黄瀬達の視界に映ったのは、胸ぐらを掴む手首を掴む黒子の姿だった。
「く…黒子っち〜」
「今のうちだ!!!」
歓喜を上げる黄瀬に、火神が声をあげる。加勢するため二人は走り出した。
「なんだお前??」
「乱暴はよくありません」
急に出てきた黒子に対して思わず目を見開いた彼は、掴んでいた手の力を緩めてしまう。その反動で、絢雅は地面に投げ出された。
ウッと痛みで少し顔を歪めた絢雅は、何故黒子が...と思いながら直ぐに立ち上がると、彼の横に立った。
「自分の思い通りにならないからって、苛立って暴力振ろうとするなんて
独りよがりもいいとこね」
絢雅の吐き捨てる刺刺しい挑発じみた言葉に、彼らは憤りで顔を真っ赤にする。
「なっ!?なんだと!!」
「バスケで勝負つけましょうか」
「はぁ!?
良いぜ、負けて泣いても知らねぇーからな」
突然の黒子からの提案。驚きはしたものの、目の前にいるのは生意気な少女といかにも弱そうな少年の二人だけ。
完全に舐めきった態度で、その案にのる彼らの背後にようやく駆けつけた二人が待ったをかけた。
「ちょっとタイムっす」
「俺たちも仲間に入れてくれよ」
ギラギラと獰猛な瞳を燃やす黄瀬と火神。提案にのった彼らは高身長でいかにも強そうな二人の登場にブルっと震え上がるのだった。
「何やってるんスカ!!」
ようやく、絢雅の前まで来た黄瀬は思わず声を荒げた。
「......向こうが悪い」
「悪いって...普通ここまで事態を悪化させることはないっしょ!!」
はぁーっとげんなりと肩を落とす黄瀬。そんな彼の肩に隣りにいた黒子がそっと手を置いた。
「黄瀬くんその話は後です」
「ギッタンギタンにしてやろーじゃねぇーか」
「そうっすね」
ギラギラと闘志を燃やした彼らは、眼の前の敵を睨め付けるのだった。
「たく何してんだよ!黒子」
「挑発しちゃ駄目じゃないっすか」
見事に蹴殺すると地面に伸び切った彼らを放置してストバスコートを後にした、黄瀬と火神はそれぞれの相手の行動に対してガミガミと叱った。
「だって、居ても立っても居られなかったので」
「だって、苛ついたから」
そんな言葉に物怖じることなく不服そうに黒子と絢雅は口を尖らせた。
「だってじゃねぇ!!
あのまま喧嘩になって、俺達が来るのがもう少し遅かったらどうする気だったんだ!!」
「いや100%ボコボコにされてました
見てください、この力こぶ」
「全然ねぇーじゃねぇーか!!」
絢雅はこういう子だったともう叱る気力も失った黄瀬の目の前では火神が黒子に対してまだ口酸っぱく言う光景が続いていた。
「じゃ俺はそろそろ行くっすわ」
荷物を持った後、動くために脱いだブレザーを肩にかけると黄瀬は満面の笑みを浮かべた。
「最後に黒子っちと一緒にプレーできたしね
ほら行くっすよ、絢雅っち」
絢雅を促すと、黄瀬は公園を出る。
だが、ふと思い出したように火神の方に振り向くと彼に聞こえるように大きな声を上げた。
「後、火神っちにもリベンジ忘れてねぇっすよ!!」
「…っ!!火神っち!?」
「黄瀬くんは認めた人にはなになにっちをつけます
良かったですね」
ビクッと黄瀬の呼び方に体を震わせた火神に、黒子は補足説明をした。
その言葉に火神はもちろん嫌悪感をぶつけるように声を上げた。
「…嫌だけど!!」
「予選で負けんなよ!!」
そんな火神の声は黄瀬に届くわけがなく、彼はニコニコしながらそう言い残し姿を消すのだった。
「そういえば…今思い出したけど、黒子って帝光にいたよね」
すっかり茜色の空を横目で見ながら、ふと思い出したように隣で何故か一緒に歩いている黄瀬に絢雅が尋ねた。その言葉に黄瀬は驚きと嬉しさで眼を輝かせてパッと絢雅を凝視した。
「そうすよ!!
ってか、黒子っち影薄いからほぼ気づかれることがないのによくわかったっすね」
黒子は月バスの”キセキの世代”特集時も、試合の時ですら周囲に気づかれることがないくらい影が薄いのだ。その特性を生かして、ミスディレクションを習得した黒子は幻のシックスマンとしてパスに特化した選手として帝光時代は活躍していたのだ。
「……………さぁ??」
絢雅は足を止めるとわからないと首を傾げた。そう答えるしかない、だって見えるものは見えるのだから。
「さぁって………」
困惑する黄瀬を置き去りに絢雅は再び歩き出す。慌てて、彼女の隣に歩み寄った黄瀬。だが、ふと小さく紡がれた絢雅の言葉に黄瀬は眼を点にする羽目に直面する。
「でも、彼とはいい関係を築けそう」
「…っ!!俺は!!」
すがるように黄瀬は絢雅の前に回り込むと答えの返事を期待して待った。
「………わかんない」
「わかんない?!?!」
黄瀬の言葉に絢雅はコクリと頷くと空を見上げ回想するようにぽつりぽつりと紡ぎ出した。
「最初は絶対こんな奴とつるんだりしたくないって思ってた。
けど、今日の試合とさっきの4人でやったバスケでちょっとだけ考えが変わった」
貪欲に勝利を求める姿
黒子とのプレーを心の底から楽しんでる姿
最後に見せた黄瀬の表情
これらが絢雅の心を揺れ動かしたのだ。
「…………」
「まぁ…そうだな、今後の黄瀬がどう変わっていくか次第だけど
黄瀬に付き纏われるの日々も悪くないかな」
絢雅の独白に言葉を失う黄瀬に、空から拍子抜けの彼に視線を戻した絢雅はクスリと笑みを零した。夕焼けに照らされたその表情に、思わず黄瀬は見惚れた。だが、それよりも絢雅の言葉が嬉しくて彼は飛びつかんばかりにはしゃいだ。
「絢雅っち〜〜!!」
「煩い!煩わしい!目障り!
だからさっさと視界から消えて」
「えぇ〜それは無理な相談っす」
ニコニコと嬉しそうに笑みを零した黄瀬は、絢雅の罵倒など気にもせずに彼女の手をとって歩き出す。
「だって、帰る場所一緒だし」
「……同じ屋根の下に住んでますみたいな語弊を招くような発言をしないで欲しいんだけど」
はぁーーーっと大きくため息をつくと絢雅はさっさと黄瀬の手から逃れて一人歩き出す。
「ちょっ!!絢雅っち!!」
ポツンと置いてかれそうになった黄瀬が沈んだ声で彼女の名を呼んだ。それに、絢雅は足を止め振り向く。
「ほら……置いてくよ」
その表情には嫌悪感は全く無く、拒絶されているわけではないと気づいた黄瀬は嬉しそうに彼女を追うように足を踏み出すのだった。