バスケに青春を懸ける
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「そういえば今日って、男子は練習試合だっけ??」
「でもさ、相手がねぇ…」
「確か、誠凛高校だっけ??」
「聞いたことないけど、強いの??」
女子バスケの部活練習を終えた部員たちの話題になっていたのは今日、海常で行われる練習試合だった。
「せっかくだしこれから見に行く??」
「絢雅も行くよね??」
「いえ……私は…」
「絢雅も行くってさ!!」
ノリが良いというか調子の良い先輩たちの手により、居残り練習をしようとした絢雅の計画は総崩れ。
普段は気さくな先輩方。レギュラー勢は皆バスケが大好きで熱心なため絢雅にとって居心地は良かった。だが、周囲を巻き込んでどんちゃん騒ぎをおっ始める件に関しては絢雅は未だに馴染めなかった。
そして和気あいあいと先輩たちが喋る輪に混ざりながら練習試合の会場に到着するのだが、目の前に広がる光景に5人は己の眼を疑うことになるのだった。
「あれ??全面使わないんだね」
「もしかして、相手って相当弱いのかな?」
会場として設置されていたのはまさかの反面。もう半分のコートでは、試合に参加しないメンバーが黙々と練習していた。
「あーあ…これじゃあ黄瀬のプレーは拝めないかな」
「あれ??もしかして隠れファン??」
「まっさか!!
ただ純粋にキセキの世代のプレーがどれほどなのか興味を持ってるだけだよ」
なんだかんだで皆、絢雅自身も含めてバスケ馬鹿。モデルである黄瀬に対して黄色い声援を送るものなんて誰一人いなかった。
「まだ決めつけるのは早いんじゃないですか??」
彼女たちの話に耳を傾けながら、コート上にいる人達を観察していた絢雅が声を上げた。
「なんか見つけたの??絢雅」
「相手の選手の皆の眼が生き生きとしてます。
特に彼が…」
誠凛の他の選手と比べて一番目立って見えた。背番号10を身につける青年。赤い髪に、ギラギラと好戦的な眼をしている彼を見た絢雅は面白いと口角を上げた。
「ほら?来てよかったでしょ!!」
ニコリと笑う先輩に、絢雅はコクリと小さく頷いた。
ちなみに絢雅にはもう一人、興味を持った人物がいた。それは背番号10の隣にいる背番号11番を身につけるいかにも文化系の体格の小柄な青年。空色の髪に静かに闘志を燃やす青色の瞳、何よりも彼が放つ不思議なオーラに不思議と絢雅の目に止まったのだ。
「なにか起こりますよ」
小悪魔っぽく笑みを浮かべる絢雅に対して、彼女たちは肩をすくませた。
「絢雅が言うことは当たるからなぁ…」
「信憑性があるだけに期待だね!」
まだまだ、ルーキーの絢雅の腹の奥は計り知れない。だが、絢雅の観察眼と直感力に舌を巻いた経験をしている彼女達は、絢雅の言葉に楽しげに笑い、コートに視線を下ろした。
波乱の幕開け…
絢雅の言葉通りに、この試合はただでは終わらなかった。
一番注目していた背番号10番…火神大我が古びたゴールに勢いよくダンクをしたところ見事に粉砕。
よっしゃ!!と叫ぶ火神の右手にはゴールリング。もちろんぶっ壊れたゴールがあるコートで試合が続行出来るわけがなく、即座に全面仕様に変わったのだ。もちろん、そのコートには黄瀬の姿があった。
結論から先に言うと、この試合は予想の番狂わせで誠凛が勝った。だが、この試合には幾度となく波乱な展開があった。
開始直後からのオフェンスとディフェンスが目まぐるしく代わるハイペースの展開。火神と黄瀬のダンク合戦。
その後、背番号11の黒子の影が薄いのを生かしたミスディレクションの効果が切れたことで海常に流れが傾く。だが、黒子と火神のコンビプレーが実力を発揮する。
黄瀬と黒子の1on1。実際は抜かれた黒子がバックチップで黄瀬からボールを奪う、3Pシュートに対しては火神がカバーするという、ダブルチームで黄瀬を止めるのが目的だったのだが…
しかし、黄瀬の肘が黒子の頭に当たってしまったことで黒子は試合から離脱してしまう。
それでも、第4クォーターで黒子が戻ってくる。それでつなぎとめていた誠凛勢の勢いは増して海常に同点まで追いついた。
最後の残り3分は、最初と同じハイペースのランアンドガンに。そんな中、黒子と火神は最後の攻撃に打って出る。模倣をする黄瀬に対してお返しをくらわない方法…それはブザービーターだ。
ブザービーター、加えてアリュープで止めに入った黄瀬を退けて火神は誠凛に勝ちをもたらしたのだ。
生まれて初めて負けた…
外にある蛇口を上に向け一気に水を出すと、黄瀬は頭から被るように水を浴びた。そんな彼の背後に音もなく近づく影があった。
ヒラリ...
水を止めた黄瀬の頭上に何かが覆い被さった。不思議に思った黄瀬はそれを手に取ってみると、それは柔らかいフワフワとした青いタオルだった。一体誰かと顔を上げた黄瀬の瞳に映ったのは、なんと絢雅だった。
黄瀬に対してタオルを放り投げた絢雅は校舎の壁に腕を組んでもたれ掛かった。
「......絢雅っち??」
「使いなよ、そのタオル」
「見てたんすか?試合」
「うん」
「そうっすか、だらしない姿見せちゃったっすね」
試合のことを思い出し小さく肩をすくめる黄瀬に、絢雅は小さく首を振りありのままの想いを伝えた。
「そんなことないよ
私から見たらカッコよかった。あのときの試合で見た黄瀬とは雲泥の差」
勝利を貪欲に求め、点を取ろうと我武者羅にボールを追っていた黄瀬は、絢雅にとってコート上にいる誰よりも輝いて見えたのだ。
「一生懸命、やれば出来るんじゃん
ちょっと見直したよ黄瀬のこと」
壁から離れると絢雅は黄瀬の前へ。そして、グイッと肘で黄瀬を小突いた絢雅は、少しだけ無表情を崩して嬉しそうに笑った。
そんな彼女に黄瀬は一瞬だけ心が奪われた。
「次は良いとこ見せるっすよ!!
誠凛にはもちろんリベンジっす!!」
リベンジ
黄瀬は先程度どつかれながら笠松から言われた言葉を復唱した。
「負けたらリベンジなんて当たり前でしょ」
そんな彼の気合入ったセリフを聞き呆れたように言葉をかける絢雅に黄瀬は拗ねるように頬を膨らませた。
「だって、初めての経験なんすもん」
「じゃ、良かったじゃん
敗北を味わった人は、もっともっと強くなれる
黄瀬にはまだまだ伸びしろがあるんだよ」
「いつになく、饒舌っすね」
いつも一言・二言のみの絢雅から出た言葉に黄瀬は眼を白黒させた。そんな彼に絢雅はニヤリと口角を上げた。
「いい試合見せてもらったから
次、楽しみにしてる」
そして、呆けたままの黄瀬を置き去りに絢雅は背を向け片手を上げるとその場を立ち去るのだった。
フワリと軽く靡く藤色の髪
楽しげに細められたアメジスト色の瞳
唖然とする黄瀬の脳裏に彼女の姿が強く残った。そんな彼はある人物に声をかけられるまで突っ立ったままだった。
「でもさ、相手がねぇ…」
「確か、誠凛高校だっけ??」
「聞いたことないけど、強いの??」
女子バスケの部活練習を終えた部員たちの話題になっていたのは今日、海常で行われる練習試合だった。
「せっかくだしこれから見に行く??」
「絢雅も行くよね??」
「いえ……私は…」
「絢雅も行くってさ!!」
ノリが良いというか調子の良い先輩たちの手により、居残り練習をしようとした絢雅の計画は総崩れ。
普段は気さくな先輩方。レギュラー勢は皆バスケが大好きで熱心なため絢雅にとって居心地は良かった。だが、周囲を巻き込んでどんちゃん騒ぎをおっ始める件に関しては絢雅は未だに馴染めなかった。
そして和気あいあいと先輩たちが喋る輪に混ざりながら練習試合の会場に到着するのだが、目の前に広がる光景に5人は己の眼を疑うことになるのだった。
「あれ??全面使わないんだね」
「もしかして、相手って相当弱いのかな?」
会場として設置されていたのはまさかの反面。もう半分のコートでは、試合に参加しないメンバーが黙々と練習していた。
「あーあ…これじゃあ黄瀬のプレーは拝めないかな」
「あれ??もしかして隠れファン??」
「まっさか!!
ただ純粋にキセキの世代のプレーがどれほどなのか興味を持ってるだけだよ」
なんだかんだで皆、絢雅自身も含めてバスケ馬鹿。モデルである黄瀬に対して黄色い声援を送るものなんて誰一人いなかった。
「まだ決めつけるのは早いんじゃないですか??」
彼女たちの話に耳を傾けながら、コート上にいる人達を観察していた絢雅が声を上げた。
「なんか見つけたの??絢雅」
「相手の選手の皆の眼が生き生きとしてます。
特に彼が…」
誠凛の他の選手と比べて一番目立って見えた。背番号10を身につける青年。赤い髪に、ギラギラと好戦的な眼をしている彼を見た絢雅は面白いと口角を上げた。
「ほら?来てよかったでしょ!!」
ニコリと笑う先輩に、絢雅はコクリと小さく頷いた。
ちなみに絢雅にはもう一人、興味を持った人物がいた。それは背番号10の隣にいる背番号11番を身につけるいかにも文化系の体格の小柄な青年。空色の髪に静かに闘志を燃やす青色の瞳、何よりも彼が放つ不思議なオーラに不思議と絢雅の目に止まったのだ。
「なにか起こりますよ」
小悪魔っぽく笑みを浮かべる絢雅に対して、彼女たちは肩をすくませた。
「絢雅が言うことは当たるからなぁ…」
「信憑性があるだけに期待だね!」
まだまだ、ルーキーの絢雅の腹の奥は計り知れない。だが、絢雅の観察眼と直感力に舌を巻いた経験をしている彼女達は、絢雅の言葉に楽しげに笑い、コートに視線を下ろした。
波乱の幕開け…
絢雅の言葉通りに、この試合はただでは終わらなかった。
一番注目していた背番号10番…火神大我が古びたゴールに勢いよくダンクをしたところ見事に粉砕。
よっしゃ!!と叫ぶ火神の右手にはゴールリング。もちろんぶっ壊れたゴールがあるコートで試合が続行出来るわけがなく、即座に全面仕様に変わったのだ。もちろん、そのコートには黄瀬の姿があった。
結論から先に言うと、この試合は予想の番狂わせで誠凛が勝った。だが、この試合には幾度となく波乱な展開があった。
開始直後からのオフェンスとディフェンスが目まぐるしく代わるハイペースの展開。火神と黄瀬のダンク合戦。
その後、背番号11の黒子の影が薄いのを生かしたミスディレクションの効果が切れたことで海常に流れが傾く。だが、黒子と火神のコンビプレーが実力を発揮する。
黄瀬と黒子の1on1。実際は抜かれた黒子がバックチップで黄瀬からボールを奪う、3Pシュートに対しては火神がカバーするという、ダブルチームで黄瀬を止めるのが目的だったのだが…
しかし、黄瀬の肘が黒子の頭に当たってしまったことで黒子は試合から離脱してしまう。
それでも、第4クォーターで黒子が戻ってくる。それでつなぎとめていた誠凛勢の勢いは増して海常に同点まで追いついた。
最後の残り3分は、最初と同じハイペースのランアンドガンに。そんな中、黒子と火神は最後の攻撃に打って出る。模倣をする黄瀬に対してお返しをくらわない方法…それはブザービーターだ。
ブザービーター、加えてアリュープで止めに入った黄瀬を退けて火神は誠凛に勝ちをもたらしたのだ。
生まれて初めて負けた…
外にある蛇口を上に向け一気に水を出すと、黄瀬は頭から被るように水を浴びた。そんな彼の背後に音もなく近づく影があった。
ヒラリ...
水を止めた黄瀬の頭上に何かが覆い被さった。不思議に思った黄瀬はそれを手に取ってみると、それは柔らかいフワフワとした青いタオルだった。一体誰かと顔を上げた黄瀬の瞳に映ったのは、なんと絢雅だった。
黄瀬に対してタオルを放り投げた絢雅は校舎の壁に腕を組んでもたれ掛かった。
「......絢雅っち??」
「使いなよ、そのタオル」
「見てたんすか?試合」
「うん」
「そうっすか、だらしない姿見せちゃったっすね」
試合のことを思い出し小さく肩をすくめる黄瀬に、絢雅は小さく首を振りありのままの想いを伝えた。
「そんなことないよ
私から見たらカッコよかった。あのときの試合で見た黄瀬とは雲泥の差」
勝利を貪欲に求め、点を取ろうと我武者羅にボールを追っていた黄瀬は、絢雅にとってコート上にいる誰よりも輝いて見えたのだ。
「一生懸命、やれば出来るんじゃん
ちょっと見直したよ黄瀬のこと」
壁から離れると絢雅は黄瀬の前へ。そして、グイッと肘で黄瀬を小突いた絢雅は、少しだけ無表情を崩して嬉しそうに笑った。
そんな彼女に黄瀬は一瞬だけ心が奪われた。
「次は良いとこ見せるっすよ!!
誠凛にはもちろんリベンジっす!!」
リベンジ
黄瀬は先程度どつかれながら笠松から言われた言葉を復唱した。
「負けたらリベンジなんて当たり前でしょ」
そんな彼の気合入ったセリフを聞き呆れたように言葉をかける絢雅に黄瀬は拗ねるように頬を膨らませた。
「だって、初めての経験なんすもん」
「じゃ、良かったじゃん
敗北を味わった人は、もっともっと強くなれる
黄瀬にはまだまだ伸びしろがあるんだよ」
「いつになく、饒舌っすね」
いつも一言・二言のみの絢雅から出た言葉に黄瀬は眼を白黒させた。そんな彼に絢雅はニヤリと口角を上げた。
「いい試合見せてもらったから
次、楽しみにしてる」
そして、呆けたままの黄瀬を置き去りに絢雅は背を向け片手を上げるとその場を立ち去るのだった。
フワリと軽く靡く藤色の髪
楽しげに細められたアメジスト色の瞳
唖然とする黄瀬の脳裏に彼女の姿が強く残った。そんな彼はある人物に声をかけられるまで突っ立ったままだった。