バスケに青春を懸ける
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あれから黄瀬は彼女の姿を来る日も探した。
だが、何故か同じ階にいるはずなのに彼女を見つけることすら出来なかった。
「……完全に避けられてるっすね」
ここまで来れば彼女が意図的に避けているとしか考えられなかった。黄瀬は、周囲からの女子の黄色い声援に愛想よくファンササービスで笑顔を振りまきながら彼女の後ろ姿を探した。
「たく…どこにいるんすか」
げんなりしながら、黄瀬は階段を上りドアを開けた。開けた途端、心地よい風が黄瀬に吹き付ける。
はぁ……
大きくため息を吐き、黄瀬は手すりに背を預けもたれかかった。そして、視線を空に向けるのだが……
「はぁい!?!?」
黄瀬は大きく目を見開いて何度も瞬きをした。自分の目に映る光景が信じられなかったのだ。だが、それが現実だとわかると慌てて黄瀬は塔屋の上に上がるための梯子に手を伸ばした。
カツカツカツ……
鈍い金属音を鳴らして梯子を上り切った黄瀬は塔屋の上にいる人物を覗き見るようにひょっこりと顔を出した。
「………なに??」
「なにってこっちのセリフっすよ」
こちらに視線を向けることなくこっそり様子をうかがっていた黄瀬に声をかけたのは黄瀬がまさに探し求めていた相手だった。
藤色の髪を後ろに一つに結わいた彼女は、塔屋の上に座った状態でバスケットボールを手で自在に操っていた。
無関心というか…冷めているというか…マイペースというか…
バレた黄瀬は、呆れながら塔屋に登って彼女の隣に腰かけた。そんな彼を彼女は一瞥するだけで特に何も言うことなく手に持っているボールに意識を戻した。
「バスケ……するんすか??」
「見ればわかるでしょ」
「いつもここに??」
「そう…ここ静かだから」
恐る恐る彼女に話しかけた黄瀬。対して彼女は、淡々と言葉を返すだけ。会話はもちろん続く事なく、重たい空気に黄瀬は口を噤んだ。
暫くボールが動く音だけが聞こえる状態が続く中、唐突にその音が消える。
彼女がボールを操作するのをやめたからだ。ボールを右手に持った彼女はようやくアメジストの瞳を黄瀬の方へ向けるのだった。
「で??何の用??
用ないなら邪魔だから視界から消えてほしいんだけど……」
別に黄瀬と話すことなんて彼女には何もないし、用事も存在しない。
ただ単に隣にいる黄瀬の存在が気に障り集中力が切れてしまったため彼女は手を止めただけだったのだ。
そんな彼女からの冷たい眼差しにもう慣れてしまった黄瀬は、その前聞いた同じフレーズを投げかけた。
「視界から消えてほしいってそんなに俺のこと嫌いなんすか!!」
「目障り」
「ひ...酷いっす!!
というか俺たち初対面っすよね!!」
「そうね」
「俺なんかしたっすか!!
嫌われる理由何も思いつかないんすけど」
半場躍起になって問い詰める黄瀬に、彼女は呆れかえっていた。内心落胆しながらも、彼女は思い起こすように遠くを見つめ目を細めた。
誰もがスポーツをしていれば憧れる全国の舞台
正々堂々と今までの成果を発揮する場
だが、熱気溢れる観客席のムードと裏腹にコートに広がっていたのは彼女の想像を遙かに超える景色だった
もちろん相手との力の差に屈してまだ時間があるのに勝利を諦める姿は腹立たしかった
だが、それ以上にその相手に敬意を払うことなく全力で戦うことをしなかった彼らの姿に彼女は頭にきたのだ
「思いつかないでしょうね」
衝撃的な記憶を脳裏からかき消すように目を閉じ開けた後、彼女は黄瀬を見た。
黄瀬の性格や内面なんて何も知らない
ただ勝手に嫌悪感を抱いてるだけ
それでもこれだけは言える
彼女の言葉の真意がわからず呆けて瞬きする黄瀬に、彼女は溜めていた思いをさらけ出すように吐き出した。
「自分よりできない奴を見下して、ふざけたプレーをして、真っ当にバスケに向き合わないキセキの世代なんて大っ嫌い」
その言葉に黄瀬は眼を思い切り見開いた。その後考えるように暫し沈黙した後、眼光を光らせ目の前の彼女を睨んだ。
「何が悪いんすか?別にいいでしょ、弱いやつが悪いんすよ」
先ほどと表情が一転し、傲慢な態度をとる黄瀬を見て彼女は鼻で笑った。
「スペックが高いからって何でもしていいって??
聞いて呆れる冗談ね」
自意識過剰で生意気…
こんな奴なんかに構っている方が時間の無駄だと、彼女はスタスタとその場を後にしようとするが、黄瀬はその後ろ姿に喧嘩口調で挑発するように言葉を投げかけた。
「言いたいことだけ言って終わりっすか??
そんなに言うなら見せてよ…君の実力」
梯子に足を掛けようとした彼女の動きがピタリと止まった。そんな彼女の額には青筋が立っていた。
「良いよ
アンタの天狗になった鼻…へし折ってやる」
カチンと完全に頭にきた彼女は、まんまと黄瀬の言葉に乗せられてしまうのだった。そんな彼女に、黄瀬は思い通りに事が運んだことにニヤリと口角を上げた。
ルールは簡単
俺からボールを取れば君の勝ち
俺が君を抜かしたら俺の勝ち
彼女からボールを受け取った黄瀬は涼しい顔でダムダムとボールを突きだす。
どうせ取られるわけがないと
高をくくっていた黄瀬。
だが、静かに構えた彼女の姿が一瞬で消えたことで完全に黄瀬は焦り頭が真っ白に。そんな彼の手からマジックのようにボールが消える。黄瀬が気づいた時には既に目の前では面白くなさげにボールを手の中で転がす彼女がいた。
「油断してる時点で勝負は決まってたわね」
彼女からみて、黄瀬が手を抜いていた事は筒抜け。勝負を持ちかけた本人自身が、本気を出さない事に対して彼女の脳でプツンと何かが切れたのだ。
そして一瞬でかたをつけた彼女は、呆ける黄瀬を冷めた目で一瞥した。
「スペックが高くなくても勝てるんだから
バカにしないで」
もう出来れば関わりたくないなと思いながら踵を返した彼女は屋上を後にしようとするのだが...
「キミ凄いっすね!!見返しちゃったっすよ!!」
縋るように腕を掴まれて彼女は足を止められた。そんな彼女の瞳に映るのはキラキラと黄金色の瞳を輝かす黄瀬だった。
え???
表情や態度がガワリと変わった黄瀬に、彼女は困惑する。そんな彼女などお構いなしに黄瀬はグッと顔を近づけた。
「名前教えて欲しいっす!!」
「黄瀬に教える訳...」
「一方的にキミは知ってるのに、俺だけ名前知らないのって不公平じゃないっすか?」
頑なに名前を教えるつもりは無い彼女に、黄瀬は拗ねる子供のような態度をとる。
「教えてくれるまで離さないし、執拗に追いかけ回すから」
黄瀬は悪戯顔を浮かべながら、彼女の腕を握る力を強める。
そんな彼の様子に、彼女は大きく息を吐いた。
「.............松井絢雅」
「じゃあ絢雅っちすね!」
暫しの躊躇の後にボソリと呟いた名前に対して、黄瀬はニコリと満面の笑みを浮かべた。
「よくわからないけど、凄く馴れ馴れしいからやめて」
「尊敬する人には敬意を称して〜っちってつけるんす!!
って、絢雅っち!?!?」
拒絶の意志を示した彼女に、めげる事なく説明する黄瀬なのだが、絢雅は興味なさげに踵を返す。
当然慌てる黄瀬を、ドアのノブに手をかけた絢雅は振り返って一瞥するが、何も声をかける事なくバタンとドアを開ける。
「ちょ!!無視しないでほしいっす!!」
嘆くように叫んだ黄瀬の声は、皮肉にも絢雅の耳に届くことなく青空に吸い込まれるように消えるのだった。
だが、何故か同じ階にいるはずなのに彼女を見つけることすら出来なかった。
「……完全に避けられてるっすね」
ここまで来れば彼女が意図的に避けているとしか考えられなかった。黄瀬は、周囲からの女子の黄色い声援に愛想よくファンササービスで笑顔を振りまきながら彼女の後ろ姿を探した。
「たく…どこにいるんすか」
げんなりしながら、黄瀬は階段を上りドアを開けた。開けた途端、心地よい風が黄瀬に吹き付ける。
はぁ……
大きくため息を吐き、黄瀬は手すりに背を預けもたれかかった。そして、視線を空に向けるのだが……
「はぁい!?!?」
黄瀬は大きく目を見開いて何度も瞬きをした。自分の目に映る光景が信じられなかったのだ。だが、それが現実だとわかると慌てて黄瀬は塔屋の上に上がるための梯子に手を伸ばした。
カツカツカツ……
鈍い金属音を鳴らして梯子を上り切った黄瀬は塔屋の上にいる人物を覗き見るようにひょっこりと顔を出した。
「………なに??」
「なにってこっちのセリフっすよ」
こちらに視線を向けることなくこっそり様子をうかがっていた黄瀬に声をかけたのは黄瀬がまさに探し求めていた相手だった。
藤色の髪を後ろに一つに結わいた彼女は、塔屋の上に座った状態でバスケットボールを手で自在に操っていた。
無関心というか…冷めているというか…マイペースというか…
バレた黄瀬は、呆れながら塔屋に登って彼女の隣に腰かけた。そんな彼を彼女は一瞥するだけで特に何も言うことなく手に持っているボールに意識を戻した。
「バスケ……するんすか??」
「見ればわかるでしょ」
「いつもここに??」
「そう…ここ静かだから」
恐る恐る彼女に話しかけた黄瀬。対して彼女は、淡々と言葉を返すだけ。会話はもちろん続く事なく、重たい空気に黄瀬は口を噤んだ。
暫くボールが動く音だけが聞こえる状態が続く中、唐突にその音が消える。
彼女がボールを操作するのをやめたからだ。ボールを右手に持った彼女はようやくアメジストの瞳を黄瀬の方へ向けるのだった。
「で??何の用??
用ないなら邪魔だから視界から消えてほしいんだけど……」
別に黄瀬と話すことなんて彼女には何もないし、用事も存在しない。
ただ単に隣にいる黄瀬の存在が気に障り集中力が切れてしまったため彼女は手を止めただけだったのだ。
そんな彼女からの冷たい眼差しにもう慣れてしまった黄瀬は、その前聞いた同じフレーズを投げかけた。
「視界から消えてほしいってそんなに俺のこと嫌いなんすか!!」
「目障り」
「ひ...酷いっす!!
というか俺たち初対面っすよね!!」
「そうね」
「俺なんかしたっすか!!
嫌われる理由何も思いつかないんすけど」
半場躍起になって問い詰める黄瀬に、彼女は呆れかえっていた。内心落胆しながらも、彼女は思い起こすように遠くを見つめ目を細めた。
誰もがスポーツをしていれば憧れる全国の舞台
正々堂々と今までの成果を発揮する場
だが、熱気溢れる観客席のムードと裏腹にコートに広がっていたのは彼女の想像を遙かに超える景色だった
もちろん相手との力の差に屈してまだ時間があるのに勝利を諦める姿は腹立たしかった
だが、それ以上にその相手に敬意を払うことなく全力で戦うことをしなかった彼らの姿に彼女は頭にきたのだ
「思いつかないでしょうね」
衝撃的な記憶を脳裏からかき消すように目を閉じ開けた後、彼女は黄瀬を見た。
黄瀬の性格や内面なんて何も知らない
ただ勝手に嫌悪感を抱いてるだけ
それでもこれだけは言える
彼女の言葉の真意がわからず呆けて瞬きする黄瀬に、彼女は溜めていた思いをさらけ出すように吐き出した。
「自分よりできない奴を見下して、ふざけたプレーをして、真っ当にバスケに向き合わないキセキの世代なんて大っ嫌い」
その言葉に黄瀬は眼を思い切り見開いた。その後考えるように暫し沈黙した後、眼光を光らせ目の前の彼女を睨んだ。
「何が悪いんすか?別にいいでしょ、弱いやつが悪いんすよ」
先ほどと表情が一転し、傲慢な態度をとる黄瀬を見て彼女は鼻で笑った。
「スペックが高いからって何でもしていいって??
聞いて呆れる冗談ね」
自意識過剰で生意気…
こんな奴なんかに構っている方が時間の無駄だと、彼女はスタスタとその場を後にしようとするが、黄瀬はその後ろ姿に喧嘩口調で挑発するように言葉を投げかけた。
「言いたいことだけ言って終わりっすか??
そんなに言うなら見せてよ…君の実力」
梯子に足を掛けようとした彼女の動きがピタリと止まった。そんな彼女の額には青筋が立っていた。
「良いよ
アンタの天狗になった鼻…へし折ってやる」
カチンと完全に頭にきた彼女は、まんまと黄瀬の言葉に乗せられてしまうのだった。そんな彼女に、黄瀬は思い通りに事が運んだことにニヤリと口角を上げた。
ルールは簡単
俺からボールを取れば君の勝ち
俺が君を抜かしたら俺の勝ち
彼女からボールを受け取った黄瀬は涼しい顔でダムダムとボールを突きだす。
どうせ取られるわけがないと
高をくくっていた黄瀬。
だが、静かに構えた彼女の姿が一瞬で消えたことで完全に黄瀬は焦り頭が真っ白に。そんな彼の手からマジックのようにボールが消える。黄瀬が気づいた時には既に目の前では面白くなさげにボールを手の中で転がす彼女がいた。
「油断してる時点で勝負は決まってたわね」
彼女からみて、黄瀬が手を抜いていた事は筒抜け。勝負を持ちかけた本人自身が、本気を出さない事に対して彼女の脳でプツンと何かが切れたのだ。
そして一瞬でかたをつけた彼女は、呆ける黄瀬を冷めた目で一瞥した。
「スペックが高くなくても勝てるんだから
バカにしないで」
もう出来れば関わりたくないなと思いながら踵を返した彼女は屋上を後にしようとするのだが...
「キミ凄いっすね!!見返しちゃったっすよ!!」
縋るように腕を掴まれて彼女は足を止められた。そんな彼女の瞳に映るのはキラキラと黄金色の瞳を輝かす黄瀬だった。
え???
表情や態度がガワリと変わった黄瀬に、彼女は困惑する。そんな彼女などお構いなしに黄瀬はグッと顔を近づけた。
「名前教えて欲しいっす!!」
「黄瀬に教える訳...」
「一方的にキミは知ってるのに、俺だけ名前知らないのって不公平じゃないっすか?」
頑なに名前を教えるつもりは無い彼女に、黄瀬は拗ねる子供のような態度をとる。
「教えてくれるまで離さないし、執拗に追いかけ回すから」
黄瀬は悪戯顔を浮かべながら、彼女の腕を握る力を強める。
そんな彼の様子に、彼女は大きく息を吐いた。
「.............松井絢雅」
「じゃあ絢雅っちすね!」
暫しの躊躇の後にボソリと呟いた名前に対して、黄瀬はニコリと満面の笑みを浮かべた。
「よくわからないけど、凄く馴れ馴れしいからやめて」
「尊敬する人には敬意を称して〜っちってつけるんす!!
って、絢雅っち!?!?」
拒絶の意志を示した彼女に、めげる事なく説明する黄瀬なのだが、絢雅は興味なさげに踵を返す。
当然慌てる黄瀬を、ドアのノブに手をかけた絢雅は振り返って一瞥するが、何も声をかける事なくバタンとドアを開ける。
「ちょ!!無視しないでほしいっす!!」
嘆くように叫んだ黄瀬の声は、皮肉にも絢雅の耳に届くことなく青空に吸い込まれるように消えるのだった。