バスケに青春を懸ける
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満開の桜が咲き誇る春
ある想いを胸に抱いて黄瀬はある一箇所の場所を目指して懸命に走っていた。
周囲の女子生徒から、会う機会が最後だからか沢山声をかけられるがそれを全て無視するほど黄瀬は慌てていた。
バン!!
階段を駆け上がった黄瀬は勢いよく扉を押し開けた。
屋上に足を踏み入れると、黄瀬を優しい春風が向かい入れるように吹く。
そのまま黄瀬は、視界に入った人物目掛けてゆっくりとした足取りで歩み寄った。
3年のWCを終えてからずっとずっと見ていなかった藤色の髪。
バスケという共通のものがなくなった途端に、関係性を失うほどに脆い繋がりだったのだと改めて気付かされた。
でも、そんなんでもう会えなくなるなんて、隣にいないなんて、黄瀬は考えたくなかった。
ずっとずっと一緒にいたい
そう思えるのは過去にも未来にも唯一人だ
愛焦がれる彼女の背後に黄瀬は静かに近づきそっと腕に閉じ込めた。
「絢雅っち」
「黄瀬????」
絢雅は急に抱きしめられた事に驚いた。
どうしてこんな状況になるまで気配を感じなかったのだろうか?
何故彼は、こんなに優しい音色で自分の名前を紡ぐのだろうか??
久しぶりに聞く黄瀬の声と体温が、絢雅は心地良くそっと目を瞑った。
「どうしてここに??」
「絢雅っちがいそうなとこここしか考えられなかったすから」
どんな時も、絢雅は無意識のうちに屋上に足を向けていた。
誰一人いない静かこの場所が、
少しでもボールに触れようとした練習場所...
黄瀬と初めてバスケした場所...
試合後悔しかった時に一人思い切り泣いた場所...
先輩達の卒業の時に悲しくて泣いた場所...
思い起こしてみればキリがない。数々の思い出がこの場所には詰まっていた。
そして何故かわかっているかのように泣いている時に限って黄瀬は現れた。そして、そっと泣き止むまでそばに居てくれたのだ。
「......卒業っすね俺達」
「あっという間の3年だったね」
黄瀬のその一言に、絢雅は思考の渦から現実に戻る。
抱きしめられてるから直接黄瀬の表情を見れないが、絢雅には容易に想像できた。そしておそらく同じ表情を己自身もしてるだろうと自嘲気味に口角を上げた。
「黄瀬......苦しいから離れて」
「嫌っす」
いい加減離れろとモゾモゾと動き出す絢雅に対して、黄瀬は腕に込める力を更に強めた。
「はぁ!?」
「離したら絢雅っちがどっかに行っちゃいそうだから嫌だ!
だから絶対離したくないんっす」
「どこにも行かないからとりあえず離れて」
グアァッ!!
しょうがないので、絢雅は黄瀬のお腹に向けて肘鉄を食らわせ、一瞬の隙をついて彼の腕から逃れた。
「ひ...酷いっす」
久しぶりの再会なのに、この仕打ちは酷いと涙目になる黄瀬に絢雅はクスリと笑みを零した。
「抱きつかれたままじゃ黄瀬を見れないからね」
「へぇ??」
「ある賭けをしたんだ
ココに黄瀬が来るか?来ないか?」
キョトンとしている黄瀬に絢雅はある覚悟を決めて口を開いた。まっすぐ黄瀬から視線を逸らすこと無く絢雅は秘かに自分一人で決めていた事を黄瀬に話した。
「それでもし来たら言おうと思ってた事がある」
一歩、前に踏み出す絢雅は、ゆっくりと次の言葉を紡ぐために緊張しながら息を吸い込んだ。その間に、彼女の並々ならむ様子に黄瀬は咄嗟の行動を移した。
「ま...っ!待ってっす!!
俺から言っていいすか?」
慌てて黄瀬は絢雅に待ったをかける。流石に色々と先を読めない黄瀬でも彼女が何を言おうとしてるのかなんとなく想像がついたからだ。静止された絢雅は怪訝な表情を浮かべながらも渋々了承する。
「俺は...絢雅っちの事.....」
スゥーッと大きく息を吸い込むと、黄瀬は想いを風に乗せた。
好きっす、どうしようもないくらい...
風にのって届いた慈しみのある声で紡がれた黄瀬の言葉に絢雅は何度も瞬きをした。
フワリと二人の間に吹き付ける風が互いの髪を靡かせた。
絢雅のアメジストの瞳に映るのは黄金の瞳を細め優しい眼差しを向ける黄瀬の姿だった。何故だか、今までで一番凛々しくカッコイイと思えてしまった。相当重症だと内心大きく息を吐く絢雅に、黄瀬は返事を聞こうと目を逸らすことなく絢雅に尋ねた。
「絢雅っちはどう?俺の事どう思ってるんすか?」
先に言われてしまい主導権を握られてしまった絢雅は釈然としないものの、徐々に目頭が熱くなっているのを感じ取った。
「………………好きだよ、馬鹿」
絢雅は泣き出しそうな己の顔を黄瀬の胸に飛び込んで隠すと照れくさそうにぶっきらぼうに答えを返した。
「こんな馬鹿を好きになったのは誰すか」
黄瀬は呆れながらも彼女の藤色の髪に手を乗せそっと撫でた。
「あっれ〜、泣いてるんすか??」
「な...ッ、泣いてない」
「ハァ......バレバレっすよ」
素直にならない絢雅に黄瀬は小さく笑みを零した。
「うるさい!馬鹿黄瀬」
「ハイハイ」
照れ臭さを紛らわすための悪態に全く怯むことなく、黄瀬はそっと彼女の背に手を回し、逆の手を彼女の頭に乗せた。そしてゆっくりと絹のように輝く藤色の髪に指を通すと、その一房に唇を落とした。
その黄瀬の行為に途端に涙が引っ込むと恥ずかしさで絢雅の顔が紅色に染まる。
「!?!?黄瀬!!」
慌てふためき身じろぎ出す絢雅を離すまいと黄瀬はグッと更に力を込めると、絢雅の顔を覗かせた。
「......名前」
「え??」
「俺の名前呼んで.......絢雅」
耳元で囁かれた絢雅は、今までに聞いたことない黄瀬のワントーン落とした低く色艶な声に背筋に甘い痺れが走った。ブルッと違う意味での震えと羞恥心で赤面した絢雅の様子に黄瀬は愉快げに口角を上げると急かすように絢雅の耳元に囁いた。
「ほら、早く」
完全に優越感に浸っている黄瀬の様子に、釈然とせずこのまま黄瀬に流されてたまるかと絢雅は口を尖らせ睨みつける。だが、上目遣いで睨んできても煽ってる風にしか黄瀬には見えなかった。
「……誘ってる風にしかみえないんすけど」
「違うから」
即座に拒絶の意志を示した絢雅はここで悪戯心であることを閃く。ニヤリと小さく不敵な笑みを浮かべた絢雅はというと、閃いたことを実行しようとそっと黄瀬の背から手を離すと黄瀬のネクタイをっクイッと引っ張った。
ん???
絢雅の行動に呆ける黄瀬はバランスを崩し前かがみに。そんな彼に絢雅は背を伸ばすと黄瀬の顔にグッと自分の顔を近づけた。そのまま絢雅は奪うように唇を重ね合わせた。
触れるようにしたキスをすると絢雅はゆっくりと顔を離して、彼の名前を小さく紡ぐのだった。
涼太……
色っぽく甘ったるい絢雅の声と彼女がした行動に、数秒黄瀬は固まる。暫く硬直していた黄瀬だが、事情を飲み込むと赤面した。火を吹くように顔が赤くなった黄瀬の表情を見て、絢雅はしてやったりの表情を浮かべた。
「…もう!!不意打ちするなんて酷いっすよ!!
お陰で先越されちゃったじゃないっすか!!」
赤らめたままの表情で黄瀬はそう言うと、今度は自ら彼女の唇にキスを落とす。その行為に対して、絢雅は素直に目を閉じて受け入れるのだった。
互いに存在を確認するように何度も何度もキスを交わす……
フッと顔を少し離し二人は見つめ合うと幸せそうに微笑んだ。そんな二人の髪は春風に吹かれて靡くのだった。
〜Fin〜
ある想いを胸に抱いて黄瀬はある一箇所の場所を目指して懸命に走っていた。
周囲の女子生徒から、会う機会が最後だからか沢山声をかけられるがそれを全て無視するほど黄瀬は慌てていた。
バン!!
階段を駆け上がった黄瀬は勢いよく扉を押し開けた。
屋上に足を踏み入れると、黄瀬を優しい春風が向かい入れるように吹く。
そのまま黄瀬は、視界に入った人物目掛けてゆっくりとした足取りで歩み寄った。
3年のWCを終えてからずっとずっと見ていなかった藤色の髪。
バスケという共通のものがなくなった途端に、関係性を失うほどに脆い繋がりだったのだと改めて気付かされた。
でも、そんなんでもう会えなくなるなんて、隣にいないなんて、黄瀬は考えたくなかった。
ずっとずっと一緒にいたい
そう思えるのは過去にも未来にも唯一人だ
愛焦がれる彼女の背後に黄瀬は静かに近づきそっと腕に閉じ込めた。
「絢雅っち」
「黄瀬????」
絢雅は急に抱きしめられた事に驚いた。
どうしてこんな状況になるまで気配を感じなかったのだろうか?
何故彼は、こんなに優しい音色で自分の名前を紡ぐのだろうか??
久しぶりに聞く黄瀬の声と体温が、絢雅は心地良くそっと目を瞑った。
「どうしてここに??」
「絢雅っちがいそうなとこここしか考えられなかったすから」
どんな時も、絢雅は無意識のうちに屋上に足を向けていた。
誰一人いない静かこの場所が、
少しでもボールに触れようとした練習場所...
黄瀬と初めてバスケした場所...
試合後悔しかった時に一人思い切り泣いた場所...
先輩達の卒業の時に悲しくて泣いた場所...
思い起こしてみればキリがない。数々の思い出がこの場所には詰まっていた。
そして何故かわかっているかのように泣いている時に限って黄瀬は現れた。そして、そっと泣き止むまでそばに居てくれたのだ。
「......卒業っすね俺達」
「あっという間の3年だったね」
黄瀬のその一言に、絢雅は思考の渦から現実に戻る。
抱きしめられてるから直接黄瀬の表情を見れないが、絢雅には容易に想像できた。そしておそらく同じ表情を己自身もしてるだろうと自嘲気味に口角を上げた。
「黄瀬......苦しいから離れて」
「嫌っす」
いい加減離れろとモゾモゾと動き出す絢雅に対して、黄瀬は腕に込める力を更に強めた。
「はぁ!?」
「離したら絢雅っちがどっかに行っちゃいそうだから嫌だ!
だから絶対離したくないんっす」
「どこにも行かないからとりあえず離れて」
グアァッ!!
しょうがないので、絢雅は黄瀬のお腹に向けて肘鉄を食らわせ、一瞬の隙をついて彼の腕から逃れた。
「ひ...酷いっす」
久しぶりの再会なのに、この仕打ちは酷いと涙目になる黄瀬に絢雅はクスリと笑みを零した。
「抱きつかれたままじゃ黄瀬を見れないからね」
「へぇ??」
「ある賭けをしたんだ
ココに黄瀬が来るか?来ないか?」
キョトンとしている黄瀬に絢雅はある覚悟を決めて口を開いた。まっすぐ黄瀬から視線を逸らすこと無く絢雅は秘かに自分一人で決めていた事を黄瀬に話した。
「それでもし来たら言おうと思ってた事がある」
一歩、前に踏み出す絢雅は、ゆっくりと次の言葉を紡ぐために緊張しながら息を吸い込んだ。その間に、彼女の並々ならむ様子に黄瀬は咄嗟の行動を移した。
「ま...っ!待ってっす!!
俺から言っていいすか?」
慌てて黄瀬は絢雅に待ったをかける。流石に色々と先を読めない黄瀬でも彼女が何を言おうとしてるのかなんとなく想像がついたからだ。静止された絢雅は怪訝な表情を浮かべながらも渋々了承する。
「俺は...絢雅っちの事.....」
スゥーッと大きく息を吸い込むと、黄瀬は想いを風に乗せた。
好きっす、どうしようもないくらい...
風にのって届いた慈しみのある声で紡がれた黄瀬の言葉に絢雅は何度も瞬きをした。
フワリと二人の間に吹き付ける風が互いの髪を靡かせた。
絢雅のアメジストの瞳に映るのは黄金の瞳を細め優しい眼差しを向ける黄瀬の姿だった。何故だか、今までで一番凛々しくカッコイイと思えてしまった。相当重症だと内心大きく息を吐く絢雅に、黄瀬は返事を聞こうと目を逸らすことなく絢雅に尋ねた。
「絢雅っちはどう?俺の事どう思ってるんすか?」
先に言われてしまい主導権を握られてしまった絢雅は釈然としないものの、徐々に目頭が熱くなっているのを感じ取った。
「………………好きだよ、馬鹿」
絢雅は泣き出しそうな己の顔を黄瀬の胸に飛び込んで隠すと照れくさそうにぶっきらぼうに答えを返した。
「こんな馬鹿を好きになったのは誰すか」
黄瀬は呆れながらも彼女の藤色の髪に手を乗せそっと撫でた。
「あっれ〜、泣いてるんすか??」
「な...ッ、泣いてない」
「ハァ......バレバレっすよ」
素直にならない絢雅に黄瀬は小さく笑みを零した。
「うるさい!馬鹿黄瀬」
「ハイハイ」
照れ臭さを紛らわすための悪態に全く怯むことなく、黄瀬はそっと彼女の背に手を回し、逆の手を彼女の頭に乗せた。そしてゆっくりと絹のように輝く藤色の髪に指を通すと、その一房に唇を落とした。
その黄瀬の行為に途端に涙が引っ込むと恥ずかしさで絢雅の顔が紅色に染まる。
「!?!?黄瀬!!」
慌てふためき身じろぎ出す絢雅を離すまいと黄瀬はグッと更に力を込めると、絢雅の顔を覗かせた。
「......名前」
「え??」
「俺の名前呼んで.......絢雅」
耳元で囁かれた絢雅は、今までに聞いたことない黄瀬のワントーン落とした低く色艶な声に背筋に甘い痺れが走った。ブルッと違う意味での震えと羞恥心で赤面した絢雅の様子に黄瀬は愉快げに口角を上げると急かすように絢雅の耳元に囁いた。
「ほら、早く」
完全に優越感に浸っている黄瀬の様子に、釈然とせずこのまま黄瀬に流されてたまるかと絢雅は口を尖らせ睨みつける。だが、上目遣いで睨んできても煽ってる風にしか黄瀬には見えなかった。
「……誘ってる風にしかみえないんすけど」
「違うから」
即座に拒絶の意志を示した絢雅はここで悪戯心であることを閃く。ニヤリと小さく不敵な笑みを浮かべた絢雅はというと、閃いたことを実行しようとそっと黄瀬の背から手を離すと黄瀬のネクタイをっクイッと引っ張った。
ん???
絢雅の行動に呆ける黄瀬はバランスを崩し前かがみに。そんな彼に絢雅は背を伸ばすと黄瀬の顔にグッと自分の顔を近づけた。そのまま絢雅は奪うように唇を重ね合わせた。
触れるようにしたキスをすると絢雅はゆっくりと顔を離して、彼の名前を小さく紡ぐのだった。
涼太……
色っぽく甘ったるい絢雅の声と彼女がした行動に、数秒黄瀬は固まる。暫く硬直していた黄瀬だが、事情を飲み込むと赤面した。火を吹くように顔が赤くなった黄瀬の表情を見て、絢雅はしてやったりの表情を浮かべた。
「…もう!!不意打ちするなんて酷いっすよ!!
お陰で先越されちゃったじゃないっすか!!」
赤らめたままの表情で黄瀬はそう言うと、今度は自ら彼女の唇にキスを落とす。その行為に対して、絢雅は素直に目を閉じて受け入れるのだった。
互いに存在を確認するように何度も何度もキスを交わす……
フッと顔を少し離し二人は見つめ合うと幸せそうに微笑んだ。そんな二人の髪は春風に吹かれて靡くのだった。
〜Fin〜
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