バスケに青春を懸ける
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「あ!!ヤバい!!完全にこのままだと遅刻する!!」
春風そよぐ青空の元…
慌てて、バッグを肩に下げて見新しい制服を身にまとった青年が駆け抜ける。
だが……
ドン!!!
差し迫る時間に間に合うように前を見据えて走る彼は、曲がり角から突如姿を現す人物にもちろん気づくことがなく、静かな朝にぶつかった音と悲鳴を上げる両者の声が響き渡った。
「たく…誰っすか?よそ見して…」
不満満々に苛立ちがこみ上げる彼は尻もちをついたまま、ぶつかった相手を睨みつけるように見る。
「…っ…いった…」
だが、その人物を見て彼は毒気を抜かれたように拍子抜けしてしまうのだった。自分と同じ灰色のブレザーに白色のワイシャツ。肩もとまで伸びる透き通った藤色の髪。そして、痛みで閉じていた瞼が開くと覗かせるのはアメジスト色の瞳。そして視線を下げると投げ出された白い長い足がブレザーと同じ灰色のスカートから覗かせていた。
当たったのが目の前の彼女だと気づくと青年は慌てて立ち上がる。そして、心配そうに彼女を覗き込んだ。
「すんません!大丈夫ですか??」
「……黄瀬涼太??」
青年にかけられた声に顔を上げた彼女は、彼を識別するとキョトンとした顔をした。彼女の瞳に映ったのは輝く金色の髪。左耳にはリングピアスがキラリと光り、甘いマスクを持つ青年。そんな彼の黄金色の瞳には、自分の姿が映りこんでいた。
「もしかして俺のファンっすか??」
己の名前が出てきたことに眼を見開き驚きながらも黄瀬は彼女に手を伸ばす。黄瀬は容姿端麗なため中学の頃からモデルをやっているのだ。
まさかまさかの俺のファンか?と黄瀬は尋ねるのだが…
「……違うけど」
黄瀬の手を取り立ち上がりながら彼女は冷めたような声をあげた。
「違うんすか!!
じゃあなんで俺の名前知ってるんすか!!」
「さぁ??なんででしょう??」
黄瀬の叫び声に動じることなく彼女はとぼけたように答える。それに黄瀬の不信感は募るばかりでポカンと首をかしげてしまうのだった。
「なんでって言われても……」
「自分の頭で考えてみたらどう??」
黄瀬を突き放すように冷たい目を向けると彼女は歩き出す。そんな彼女を追うように黄瀬も慌てて歩き出す。
「待って!!」
「何??」
訝しげに隣に来て歩幅を合わす黄瀬を彼女は見ながらも動かす足は止めない。そんな彼女の様子なんて気にすること無く黄瀬はニコニコと気軽げに話しかける。
「何って…一緒に行こうよ」
「いや…なんで黄瀬と一緒に…」
「だって行く道一緒でしょ??海常高校でしょ!」
嬉しそうに黄瀬が口に出した言葉がご尤も過ぎて彼女は言い返す言葉を失ってしまった。
「はぁ……確かに」
「でしょ!!だから…仲良くしようよ!!」
「…………嫌」
「えぇ!!なんでっすか!!」
暫しの沈黙後にズバリと拒絶の意志を見せた彼女に対して、黄瀬は半分涙目になる。自他ともに認めるイケメンである黄瀬は、女の子に対して困ったこともないし、振られた経験もない。今回の1件は初めての経験だった。
「だから自分の頭で考えなよ」
もう駄々をこねるような黄瀬に彼女は面倒くさいとさっきと同じセリフを吐いた。
「さっきから思ってたんスけど…
なんでそんなに俺のこと毛嫌うんすか??」
初対面の相手にここまで心底嫌われる、その対象がまさかの女子からで黄瀬は不思議そうに彼女に尋ねた。
「……嫌いだから」
「いや…答えになってないんすけど」
「嫌いなものを嫌いと言う以外にどう表現すればいいの??」
眼を点にする黄瀬に対して、表情を変えること無く彼女は問い返す。
「きっかけとか…理由とかないんすか??」
「………考えて」
「さっきからそればっかじゃないすか!!」
「じゃ………」
ツッコミを入れる黄瀬に対して、既に校舎に着いていたためスタスタと彼女は彼に一言言い残すと教室へ行ってしまった。取り残された黄瀬は久しぶりに感じるグッタリ感に肩を落とした。
「なんなんすか…アイツ」
そう悪態を付きながらも大事なことを聞くのを忘れていたと気づき大きな声を上げるのだった。
「名前!!聞き忘れたっす!!」
初めての経験を味わった黄瀬の頭には彼女のことが強く焼きつけられた。
どうしてこぴっどく嫌うのだろうか??
偶然ぶつかって出会った彼女に黄瀬は純粋に興味を持ったのだった。
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