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今より遥か遥か昔…
かつて長月市には周囲一帯に名を轟かせていた名家が存在していた。
檻の能力を司る名瀬一族
鎖の能力を司る風魔一族
他の異界士を寄せ付けないほど強力な力を誇った2つの名家は長いこと手と手を取り合い互いに協力しあい長月市を妖夢から守っていた。
妖夢という脅威からこの一帯を守っていく
そう目的は合致しているはずだった
だが、名瀬家は膨大な力を誇る風魔家を恐れた。
いつか彼らの矛先が自分たちに向いてしまわないかと…
彼らは封印術に長けている一族だった。
その封印は異界士の能力さえも封じてしまうのだ。
だが彼らが脅威を抱いたのはそれだけが理由ではなかった。
もう一つ風魔家はある能力を司っていた。
その能力は風を作り出す能力だった。
風魔一族の血を受け継いだ女性が唯一使える能力。彼女たちは銀色の指輪を扇に変えることで風を作り出せた。
鎖という封印術と
風という近距離から遠距離、広範囲に様々な用途で使える攻撃術
異色の2つの能力を同時に使える彼らを名瀬家は密かに恐れていたのだ。
その恐れは徐々に膨らんでいき、そのドス黒い感情が風魔一族の地位を陥落させた。そして威厳を誇っていた風魔一族は歴史の闇に葬られてしまった。
だが、全てを失った彼らは屈辱的な形で生かされた。瀬名という名を与えられて、名瀬家の側近という形で。
そのまま歳月が経ち、風魔一族の血だけ引き継がれ、名瀬家の側近として彼らを支える忠実な一族として世に周知されていった。
そして、風魔という名が語り継がれなくなりもはやその名を知る者が少数派となった頃、瀬名一族に才溢れた兄妹が現れた。
瀬名悠
瀬名志帆
特に名瀬家は兄妹の中で兄を恐れたのだった。
このままでは名瀬家の立場を揺るがす脅威となりかねない。
そう判断した彼らは事故と見せかけて彼を闇に葬り去ろうと試みた。
だが誤算が発生した。
葬り去りたかった彼は生き残ったのだった。
「父様!!母様!!」
地面に叩きつけられた身体は鉛のように重くミシミシと軋むように痛みが走っていた。それでも構うことなく、端正な顔立ちを歪めて1人の青年はこの惨状を目の前に泣きじゃくっていた。
無情に降り注ぐ冷たい雨
目の前には炎で燃え盛る車
その車は先程まで彼らが乗っていた車だった。だが、崖から真っ逆さまに落ちた車は地面に叩きつけられ爆発した。
唯一生き残ったのは落下する直前に突き落とされた彼のみ。
一緒に乗車していた彼の両親は、爆発した車の中。
ほんの少し前まで談笑していた彼らは塵となり灰となり跡形もなく燃えてしまった。最後に彼が見たのは放り出された宙で彼に微笑む両親の姿だった。
まるで地獄絵図……
青年は悔しげにポケットにしまい込まれた紙をグシャッと握りしめた。そして顔を上げた青年の藍色の眼差しは決意のある強い目だった。その藍色の双眸はこの惨状をこの目に焼き付けるようにジッと燃え盛る車を見続けるのだった。
そして、現在…
漆黒の闇
その闇夜に輝くのは幻想的に輝く月
ギンギラに地面を照りつける太陽がいる昼間と違い、静かな時間がただゆったりと流れていた。
そんなある夏の日の未明
長月市一帯を見渡せる建物の上で、生暖かい夏風に白銀色の髪を靡かせている者がいた。
無造作に端末をイジっていたその手を止めた彼は、端末が放つ明かりを消した。そして伏せていた瞳をゆっくりと上げた。すると露わになったのは藍色の双眸。その双眸の奥では静かな炎が見え隠れしていた。
「さて……」
真っ暗な闇夜に沈む長月市一帯を見渡した彼は、口調が穏やかながらも殺気立った視線を向けた。
「舞台は整ったな…」
ニヤッと不敵に笑った彼は、背後に静かに立った気配に気づくと、チラッと視線を背後に向けた。
「よぉ、手はず通りにいったか?」
「兄さんの言ったとおりに…」
音を立てずに降り立った1人の女性は銀色の髪を靡かせてゆっくりと近づいた。
「お前が加わったことで穏便に事が済みそうだ」
「そっか…それは良かった」
ホッと安堵したような彼女を見て彼は目を細めた。
「ようやくだ。
ようやく…呪縛から俺たちは解き放たれるんだ」
「さぁ、始めようか
このきな臭った組織の一掃を」
「待ってろよ
今すぐ高みの見物をしてるアンタを引きずり下ろしてやる」
妹から視線を闇夜に映した悠は氷のように冷めた藍色の双眸を向けるのだった。