長月灯篭祭
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「栗山未来さんだ。部活の話をしたら見学してみたいって」
「違いますよ。先輩がどうしてもっていうから…」
あの日から数日後、文芸部の部室に秋人は未来を連れてきた。
半場無理やり理由を語義付けて連れてきたのだろう。秋人の言葉に未来は不満げに秋人を見上げた。
そんな彼女を秋人は宥めながら文芸部の紹介を始める。
「まぁまぁ、部長はまだ来てないけど名瀬美月。
この前会っただろう?
で、これが3年で幽霊部員の名瀬博臣。そして、その隣に居るのが瀬那志帆。他に幽霊部員が2人いるんだけど、幽霊だけあって、今日も来ていない。」
秋人の説明に未来は、はぁ…と口に漏らすだけ。興味がないのは明らか。だが、秋人は諦めるつもりはなかった。
「じゃあ入部ってことで」
「不愉快です」
「頼むよ~部員が圧倒的に足りてないんだ!!」
懇願するように秋人は手を合わせ未来に頼み込む。
「だからってなんで私が…」
不服そうに口を尖らせて、未来は眼を伏せる。
そんな未来を見て、志帆が秋人に対し口を開く。
「秋人……
入りたくない人を無理やり引き込んじゃ駄目でしょ」
「志帆は、全然来てないからわからないと思うが悠長に構えている余裕はないんだ」
「へぇ…そうなんだ
じゃぁしょうがないんじゃない。」
「あっさりとしてるな、おい!!」
「人数が集まらなかったらそういう運命だと潔く諦めるべきよ」
志帆と秋人による押し問答が繰り広げられる中、未来の目にあるものが留まる。
「こ!こここここれはっ!」
突然の未来の驚きの声に、ピタリと志帆と秋人の言い合いが止む。一体どうしたのだと動き出した未来に注目が集まる中、未来が思わず手に取ったのはその本棚に置いてある『園芸大全』だったのだ。
「その本棚にある本は先輩と顧問によって収集されたもの、だから貸し出すことは出来ないただし文芸部の部員になれば・・・」
「入部します!」
秋人の説明を最後まで聞くことなく、未来は渋っていた返事を即答する。園芸一つで180度手のひらを返すように考えを変えた未来。こんな展開があるのかと志帆は唖然としながら、椅子に座りこの現状をずっと傍観者で眺めていた博臣の隣にドスッと座るのだった。
「はっや!何その女心と秋の空的展開!」
「…ゥ…」
「というか、栗山さんは園芸に興味があるの?」
「あ……まぁまぁです…」
物珍しそうに秋人が未来に質問を投げかける中、博臣の頭の思考は別のところに働いていた。
「それにしても美月遅いな・・・」
「美月だって遅いときくらいあるでしょ」
ポツリと嘆くように呟かれた言葉に、志帆が肩を落としながら答えるのだった。
*****
「これが文芸部の既刊誌ですか・・・芝姫・・・」
ようやく一段落したところで、座った未来に秋人が見せたのは何冊にも積み重なったA4版の本だった。
「うん、今度記念号で傑作選を作ることになってね。皆で何載せるか悩んでるところで」
「そうなんですか」
「そうなんだ…」
秋人の言葉に反応を示したのは、未来と志帆。未来だけに言ったつもりが、まさかの人物からも初めて知りましたという素振りを見せられた秋人は、不満げに声を上げる。
「志帆は部活に来なすぎだ!!」
「アッキー…志帆はそれ以前に学校に来てないぞ」
「そうそう…博臣の言う通り」
「開き直るな!!」
そんな彼らの騒がしい声を聞きながら、未来は芝姫の一冊を手に取りパラパラと開くとどんなものかと読み始めた。
なので、集中し始めた未来は自分に近づく人物の存在に気づけなかった。
「……確かに赤縁の眼鏡が似合っている」
「ほ・・・?ほわぁっ!?」
声の方に、視線を移した未来は驚きで身体をのけぞらせて椅子を後ろへ動かし慌てて避難する。
机に側頭部をつけ未来の顔を見上げていたのは博臣だったのだ。
「…メガネ」
「博臣もやれば出来るじゃないか!君も今日からメガネストだ!」
未来から視線を反らすことなく頭を少し上げた博臣の言葉に、秋人は感動したかのように博臣の手を嬉しそうに掴んだ。そして、キラキラと眼を輝かせ秋人も未来を見る。
そんな彼らの毎度のような変態ぶりに志帆はもう呆れかえり、罵る言葉すら出ることはなかった。
「それにアッキーが言うとおり妹要素も詰め込まれているしな」
「だろ〜!ゆるふわ系の髪質あどけない顔立ち幼さを残した胸元、汚れを知らない太もも小柄で華奢な体躯!まさに理想の妹!」
どんどん二人の熱はエスカレートしていく。
「妹?!」
未来はピクリと身体を震わせる中、秋人の熱は最高潮に。興奮気味に声を震わせる秋人、対して博臣は顎に当てていた手をカメラのようにフレームを両手で作りズームアップさせる。
下心がプンプンと匂う二人のねっとりとした厭らしい視線に志帆は思い切り顔を顰めた。
「さらにメガネが似合う!!
しかも昨日今日始めたばかりの上辺だけのメガネじゃ〜ない!
そこがメガネ置き場です〜と言いたげな完璧な鼻!」
「……不愉快です」
「気にしない方がいいわその二人……
ただの変態だから」
部室に姿を現した美月も眼の前に広がる光景に思い切り嫌悪感を露わにし顔を歪め言葉を吐き捨てた。
「志帆もそんなに嫌そうな顔してるならさっさと止めればいいじゃない」
「美月の言うとおりだわ…
この変態どもに拳骨を叩きのめせば良かった」
震える拳を握りしめて志帆は盛大に肩を落とした。
「美月、大事な部活を放っておいてどこに行っていた?」
そんな志帆の様子に気にする素振りを見せず博臣は姿をようやく現した美月に頬杖をつきながら、投げかける。その言葉に美月はわざと大きく音を立てるようにバッグを机に置いた。
「兄貴にだけは言われたくないセリフね」
「あ……あの!!」
未来は慌てて立ち上がり美月を見る。
その声に美月が顔を向けたのを確認すると未来は頭を下げた。
「入部することになりましたよろしくお願いします!」
「……そう」
真っ直ぐな未来の瞳に、美月は眼を反らすと近くにあった芝姫を手にとり読み始める。
「え、だ…ダメでした!?」
あまりにも美月の薄い反応に未来は肩を落とす。
「別に・・・」
「……はぁ」
大きく息をついた未来はメガネを取るとフキフキと制服で汚れを取るように擦る。
その様子に見かねた美月が本に視線を落としながら独り言のように未来に対して呟いた。
「………よろしく」
その声にハッと顔を上げると嬉しそうに目の奥を揺らす。その表情に一瞬だけ顔を上げた美月は気づくと視線を彼女からバツが悪そうに反らすと再び本に視線を戻した。
「はい!!よろしくおねがいします!!」
メガネを掛け直し、嬉しそうに挨拶をすますと未来は再び芝姫に手を出し開き読み始めようとする。
そんな彼女に秋人が声をかける。
「そうだ栗山さん一つ大事な用事があるんだけど、この後いい?」
顔を上げた未来。釣られる形で顔を上げる美月。二人の視界に映ったのは秋人の脇に当然のように両手を差し込む博臣と、それを全く気にせずに未来を見る秋人の姿だった。
「あれ?志帆先輩はどこに…」
「なぁ?!?!?」
未来の言葉でようやく志帆がいないことに気づいた博臣は即座に秋人から離れるとキョロキョロと辺りを見渡した。
「遂に志帆に愛想つかれちゃったわね、兄貴」
こうなって当然だと整然とする美月は、本に視線を戻した。
「まぁ…当然だろうな」
「志帆!!何処行ったんだ!!」
いつになく真っ青な表情を浮かべる博臣を秋人は物珍しそうに眺める。対して、日常茶飯事な光景に美月は見慣れすぎてもう完全にスルー。
そんな中、ガランっと音が鳴る。
「………みんなどうしたの固まって」
扉を開けた志帆は視線が集まっていることに気づき、逆にキョトンとした表情で皆を見渡した。
「…ッ…志帆!!!」
両手を広げ抱きつこうと飛び込む博臣。そんな彼を志帆は無表情で華麗に避けてかわした。
ガタン!!
博臣が勢い余って壁に衝突しズルズルと床に倒れる。そんな彼を横目で見ながら志帆は口を開く。
「…少し外に出てただけなのに大げさすぎ」
「何してたんだ?志帆」
流石に不憫過ぎると哀れみの眼を床に伸び切っている博臣に向けながら秋人は志帆を見る。
「え…あぁ…泉様に連絡してただけだよ」
「あ…そういうことか」
「そうそう
じゃ行きましょうか」
「どこに行くんですか??」
不思議そうに話についていけない未来が声を上げる。それに志帆が返答するのだった。
「……名瀬家の家よ」
「違いますよ。先輩がどうしてもっていうから…」
あの日から数日後、文芸部の部室に秋人は未来を連れてきた。
半場無理やり理由を語義付けて連れてきたのだろう。秋人の言葉に未来は不満げに秋人を見上げた。
そんな彼女を秋人は宥めながら文芸部の紹介を始める。
「まぁまぁ、部長はまだ来てないけど名瀬美月。
この前会っただろう?
で、これが3年で幽霊部員の名瀬博臣。そして、その隣に居るのが瀬那志帆。他に幽霊部員が2人いるんだけど、幽霊だけあって、今日も来ていない。」
秋人の説明に未来は、はぁ…と口に漏らすだけ。興味がないのは明らか。だが、秋人は諦めるつもりはなかった。
「じゃあ入部ってことで」
「不愉快です」
「頼むよ~部員が圧倒的に足りてないんだ!!」
懇願するように秋人は手を合わせ未来に頼み込む。
「だからってなんで私が…」
不服そうに口を尖らせて、未来は眼を伏せる。
そんな未来を見て、志帆が秋人に対し口を開く。
「秋人……
入りたくない人を無理やり引き込んじゃ駄目でしょ」
「志帆は、全然来てないからわからないと思うが悠長に構えている余裕はないんだ」
「へぇ…そうなんだ
じゃぁしょうがないんじゃない。」
「あっさりとしてるな、おい!!」
「人数が集まらなかったらそういう運命だと潔く諦めるべきよ」
志帆と秋人による押し問答が繰り広げられる中、未来の目にあるものが留まる。
「こ!こここここれはっ!」
突然の未来の驚きの声に、ピタリと志帆と秋人の言い合いが止む。一体どうしたのだと動き出した未来に注目が集まる中、未来が思わず手に取ったのはその本棚に置いてある『園芸大全』だったのだ。
「その本棚にある本は先輩と顧問によって収集されたもの、だから貸し出すことは出来ないただし文芸部の部員になれば・・・」
「入部します!」
秋人の説明を最後まで聞くことなく、未来は渋っていた返事を即答する。園芸一つで180度手のひらを返すように考えを変えた未来。こんな展開があるのかと志帆は唖然としながら、椅子に座りこの現状をずっと傍観者で眺めていた博臣の隣にドスッと座るのだった。
「はっや!何その女心と秋の空的展開!」
「…ゥ…」
「というか、栗山さんは園芸に興味があるの?」
「あ……まぁまぁです…」
物珍しそうに秋人が未来に質問を投げかける中、博臣の頭の思考は別のところに働いていた。
「それにしても美月遅いな・・・」
「美月だって遅いときくらいあるでしょ」
ポツリと嘆くように呟かれた言葉に、志帆が肩を落としながら答えるのだった。
*****
「これが文芸部の既刊誌ですか・・・芝姫・・・」
ようやく一段落したところで、座った未来に秋人が見せたのは何冊にも積み重なったA4版の本だった。
「うん、今度記念号で傑作選を作ることになってね。皆で何載せるか悩んでるところで」
「そうなんですか」
「そうなんだ…」
秋人の言葉に反応を示したのは、未来と志帆。未来だけに言ったつもりが、まさかの人物からも初めて知りましたという素振りを見せられた秋人は、不満げに声を上げる。
「志帆は部活に来なすぎだ!!」
「アッキー…志帆はそれ以前に学校に来てないぞ」
「そうそう…博臣の言う通り」
「開き直るな!!」
そんな彼らの騒がしい声を聞きながら、未来は芝姫の一冊を手に取りパラパラと開くとどんなものかと読み始めた。
なので、集中し始めた未来は自分に近づく人物の存在に気づけなかった。
「……確かに赤縁の眼鏡が似合っている」
「ほ・・・?ほわぁっ!?」
声の方に、視線を移した未来は驚きで身体をのけぞらせて椅子を後ろへ動かし慌てて避難する。
机に側頭部をつけ未来の顔を見上げていたのは博臣だったのだ。
「…メガネ」
「博臣もやれば出来るじゃないか!君も今日からメガネストだ!」
未来から視線を反らすことなく頭を少し上げた博臣の言葉に、秋人は感動したかのように博臣の手を嬉しそうに掴んだ。そして、キラキラと眼を輝かせ秋人も未来を見る。
そんな彼らの毎度のような変態ぶりに志帆はもう呆れかえり、罵る言葉すら出ることはなかった。
「それにアッキーが言うとおり妹要素も詰め込まれているしな」
「だろ〜!ゆるふわ系の髪質あどけない顔立ち幼さを残した胸元、汚れを知らない太もも小柄で華奢な体躯!まさに理想の妹!」
どんどん二人の熱はエスカレートしていく。
「妹?!」
未来はピクリと身体を震わせる中、秋人の熱は最高潮に。興奮気味に声を震わせる秋人、対して博臣は顎に当てていた手をカメラのようにフレームを両手で作りズームアップさせる。
下心がプンプンと匂う二人のねっとりとした厭らしい視線に志帆は思い切り顔を顰めた。
「さらにメガネが似合う!!
しかも昨日今日始めたばかりの上辺だけのメガネじゃ〜ない!
そこがメガネ置き場です〜と言いたげな完璧な鼻!」
「……不愉快です」
「気にしない方がいいわその二人……
ただの変態だから」
部室に姿を現した美月も眼の前に広がる光景に思い切り嫌悪感を露わにし顔を歪め言葉を吐き捨てた。
「志帆もそんなに嫌そうな顔してるならさっさと止めればいいじゃない」
「美月の言うとおりだわ…
この変態どもに拳骨を叩きのめせば良かった」
震える拳を握りしめて志帆は盛大に肩を落とした。
「美月、大事な部活を放っておいてどこに行っていた?」
そんな志帆の様子に気にする素振りを見せず博臣は姿をようやく現した美月に頬杖をつきながら、投げかける。その言葉に美月はわざと大きく音を立てるようにバッグを机に置いた。
「兄貴にだけは言われたくないセリフね」
「あ……あの!!」
未来は慌てて立ち上がり美月を見る。
その声に美月が顔を向けたのを確認すると未来は頭を下げた。
「入部することになりましたよろしくお願いします!」
「……そう」
真っ直ぐな未来の瞳に、美月は眼を反らすと近くにあった芝姫を手にとり読み始める。
「え、だ…ダメでした!?」
あまりにも美月の薄い反応に未来は肩を落とす。
「別に・・・」
「……はぁ」
大きく息をついた未来はメガネを取るとフキフキと制服で汚れを取るように擦る。
その様子に見かねた美月が本に視線を落としながら独り言のように未来に対して呟いた。
「………よろしく」
その声にハッと顔を上げると嬉しそうに目の奥を揺らす。その表情に一瞬だけ顔を上げた美月は気づくと視線を彼女からバツが悪そうに反らすと再び本に視線を戻した。
「はい!!よろしくおねがいします!!」
メガネを掛け直し、嬉しそうに挨拶をすますと未来は再び芝姫に手を出し開き読み始めようとする。
そんな彼女に秋人が声をかける。
「そうだ栗山さん一つ大事な用事があるんだけど、この後いい?」
顔を上げた未来。釣られる形で顔を上げる美月。二人の視界に映ったのは秋人の脇に当然のように両手を差し込む博臣と、それを全く気にせずに未来を見る秋人の姿だった。
「あれ?志帆先輩はどこに…」
「なぁ?!?!?」
未来の言葉でようやく志帆がいないことに気づいた博臣は即座に秋人から離れるとキョロキョロと辺りを見渡した。
「遂に志帆に愛想つかれちゃったわね、兄貴」
こうなって当然だと整然とする美月は、本に視線を戻した。
「まぁ…当然だろうな」
「志帆!!何処行ったんだ!!」
いつになく真っ青な表情を浮かべる博臣を秋人は物珍しそうに眺める。対して、日常茶飯事な光景に美月は見慣れすぎてもう完全にスルー。
そんな中、ガランっと音が鳴る。
「………みんなどうしたの固まって」
扉を開けた志帆は視線が集まっていることに気づき、逆にキョトンとした表情で皆を見渡した。
「…ッ…志帆!!!」
両手を広げ抱きつこうと飛び込む博臣。そんな彼を志帆は無表情で華麗に避けてかわした。
ガタン!!
博臣が勢い余って壁に衝突しズルズルと床に倒れる。そんな彼を横目で見ながら志帆は口を開く。
「…少し外に出てただけなのに大げさすぎ」
「何してたんだ?志帆」
流石に不憫過ぎると哀れみの眼を床に伸び切っている博臣に向けながら秋人は志帆を見る。
「え…あぁ…泉様に連絡してただけだよ」
「あ…そういうことか」
「そうそう
じゃ行きましょうか」
「どこに行くんですか??」
不思議そうに話についていけない未来が声を上げる。それに志帆が返答するのだった。
「……名瀬家の家よ」