徐々に動き出す歯車
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「ということで志帆...
メガネをかけてくれ!!」
「いや...意味分かんないんだけど」
あの一件以降、二人っきりの機会を狙い、秋人は事あるごとに志帆にメガネを掛けるよう差し迫った。
「いいじゃないか!!メガネを掛けるくらい」
「眼鏡変態を前にして、メガネを掛けるわけないじゃない!!」
「ケチだな
美月は二つ返事でオッケーしてくれたぞ」
「はっ!?」
「それに本人自身も途中からノリノリだったしな」
そう言いながらニヤニヤとにやけがもろに顔に出ている秋人に対して、志帆は完全にドン引きモード。だが志帆の頭の中では、秋人から出てきた美月の真意を探っていた。
確かに美月は、秋人の事を少なからず気に入っているとは思う。だが、メガネ変態に罵倒し毒を吐いている美月が2つ返事で了承するのか?答えは否だ。
ここまで考えが至った所で、志帆は最近の現状について改めて考え直した。
どうして、秋人と部室で二人っきりの時間があるんだ??
必ずと言っていいほど、いつも一緒に部室のドアを開ける博臣はルンルンと嬉しそうに鼻歌を鳴らしながらどこかへふらっと行ってしまうのだ。
博臣が上機嫌=美月絡み
志帆の頭の中で、点と点が繋がってきてようやく彼女は閃いたようにハッと顔を上げるのだった。
「どうしたんだ?志帆??
遂にメガネをかけてくれる気になったか!!」
急に目を見開き己を凝視してくる志帆に、秋人は目をキラキラさせた。
「ははーん、なるほどね
美月の差し金ね」
「ギクッ!!なぜそう思ったんだ??」
「だってここには何故か美月も栗山さんもいない
加えて、いつも私と一緒に部室に行く博臣は上機嫌でいつの間にか消えてる…
これらから弾き出されるのはたった一つ…
美月が裏で手を引いてるって事実よ」
志帆に言い当てられすぎて秋人は顔を強張らせたまま固まってしまった。
「どうせ、博臣に一泡吹かせて嫌がらせしたい美月と秋人の利害が一致したんでしょ」
うす気味悪い笑みを浮かべた志帆は、トドメと言わんばかりに秋人に言葉を吐き捨てた。
「さ…流石志帆だな
全部当たってる……」
「私を侮らないで欲しいな」
ガクガクと青ざめていく秋人をよそに、志帆は部室にあるポットからお茶を注いで優雅に飲み始めた。
あぁ…終わった……
この世の終わりを見るような眼で絶望する秋人。だが、予想していた罵倒中傷は起こることは無かった。逆に、秋人は首を傾げる出来事が起こってしまったのだ。
「え………??」
「ほら…さっさと貸して」
何故、秋人がポカンとしているのかと言うと、志帆が無言のまま手を指しのべていたからである。
視線をこちらに向けることなく腕を伸ばして物を要求している志帆に秋人は訝しげな視線を向けた。
「だから何をだよ」
「眼鏡に決まってるでしょ!!」
何もわかっていない秋人に、志帆は苛立ちをぶつけるように声を荒げた。
「えっ……えぇ!!掛けてくれるのか!!メガネ!!」
「美月の案に乗ってあげるだけよ」
ほらっと催促するように手をこまねく志帆に、理由なんかはどうでもいい秋人はコクコクと大きく頷きながらカバンを探り始めた。
「まずはこれを!!」
いつになく真剣な面付きでメガネを差し出す秋人に、志帆は若干引き地味になりながらそれを受け取った。
「まさか…それ全部??」
「当たり前だろ!!!」
キラキラと眼を輝かせる秋人のカバンから覗かせるのは。様々な色と形のメガネ達。志帆はこの時初めて秋人の要望を受けたことを後悔してしまうのだった。
バタン!!!
暫くして部室の扉が勢いよく開いた。
「アッキー…俺を差し置くとはいい度胸じゃないか??」
どす黒いオーラを醸し出し口角を上げる博臣に秋人は恐怖で身体が震えた。
「ほぉ??博臣
コレを見てもまだ言うかな??」
震えながらも、大丈夫だと威勢を奮い立たせて秋人はニヤリと企んだ笑みを浮かべると、博臣に見えるように脇に避けた。
「なぁ?!?!」
驚きの声を上げる博臣の視界に映ったのは、黒縁眼鏡をかける志帆だった。最初彼の反応にキョトンとする志帆だが、どう?似合う??と色っぽい笑みを浮かべて尋ねるのだった。
「あ…あぁ…似合ってる」
「やっぱり色々試したけどこれが無難かな?」
「いやぁ…
志帆の聡明さが際立ってていいと思うぞ!!
でも、赤縁と銀縁も捨てがたい!!」
色んな意味で言葉を失い固まってしまった博臣を横目に、志帆はつけた眼鏡を取りそれを眺め、秋人はまだ物足りないのかあれやこれやと取り出す始末。その光景を部室に入ってきた美月は心底呆れかえって見ていた。が、肩をワナワナと震わしている博臣の様子に気づいた美月が彼を訝し気に見る。
「…兄貴??」
「や…やっぱりダメだ!!」
荒い声を上げた博臣は勢いそのままに志帆の前に。そしてキョトンとする志帆の手から眼鏡をひったくるように奪い取った。
「な!?なんでダメなんだよ!?」
「決まってるだろ!!
眼鏡をかけてたら、志帆の綺麗な青い瞳を近くで見つめられないからだ!!」
秋人の言い返しに対して、博臣は志帆を見つめたまま真剣な眼差しで言い切った。その嘘偽りがない直球の言葉に、言い返す言葉を失う秋人。対して、それは志帆にとってはストレートな言葉過ぎないかと美月が顔を顰めて、志帆の様子を窺う。そして、美月の危惧した通り、志帆の白肌は見たことがないくらい朱色に染まっていたのだった。
両肩を掴まれ近い距離で言われた不意打ちのセリフに志帆は体温が急上昇するのを感じた。彼の熱を帯びた柳緑色の瞳をまっすぐ見ることが出来ず志帆は目を伏せた。確かに今までも何度か瞳に関しては言われたことがある。が、揶揄い混じりなしで純粋に褒められたことが初めてであったため、志帆の心の内で嬉しさが込み上げてきた。
「わかった…
もう…眼鏡かけるのはやめる…」
「…なんか言ったか?志帆??」
だが、口に出すのが照れ臭く、志帆の声はか細かった。当然、秋人と舌戦を繰り広げていた博臣と秋人の耳に入るはずがなく、聞き取れなかった博臣が聞き返す始末。それに対して、意を決して言った志帆がもう一度同じ言葉を紡ぐわけがなく、カッと目くじらを立てて、「何も言ってない!!」とぶっきらぼうに言い捨て、博臣を押し返すと風のように部室を出て行ってしまうのだった。
「どうしたんだ?志帆の奴…」
「さぁ??」
「……はぁ
変態二人揃って馬鹿ね…」
わからないと顔を見合わせる博臣と秋人の様子に、唯一声は聞こえていないものの心情を把握している美月は大きく深いため息をついて吐き捨てると、志帆の置き捨てていった荷物を拾い上げて彼女を追うように部室を出ていくのだった。
メガネをかけてくれ!!」
「いや...意味分かんないんだけど」
あの一件以降、二人っきりの機会を狙い、秋人は事あるごとに志帆にメガネを掛けるよう差し迫った。
「いいじゃないか!!メガネを掛けるくらい」
「眼鏡変態を前にして、メガネを掛けるわけないじゃない!!」
「ケチだな
美月は二つ返事でオッケーしてくれたぞ」
「はっ!?」
「それに本人自身も途中からノリノリだったしな」
そう言いながらニヤニヤとにやけがもろに顔に出ている秋人に対して、志帆は完全にドン引きモード。だが志帆の頭の中では、秋人から出てきた美月の真意を探っていた。
確かに美月は、秋人の事を少なからず気に入っているとは思う。だが、メガネ変態に罵倒し毒を吐いている美月が2つ返事で了承するのか?答えは否だ。
ここまで考えが至った所で、志帆は最近の現状について改めて考え直した。
どうして、秋人と部室で二人っきりの時間があるんだ??
必ずと言っていいほど、いつも一緒に部室のドアを開ける博臣はルンルンと嬉しそうに鼻歌を鳴らしながらどこかへふらっと行ってしまうのだ。
博臣が上機嫌=美月絡み
志帆の頭の中で、点と点が繋がってきてようやく彼女は閃いたようにハッと顔を上げるのだった。
「どうしたんだ?志帆??
遂にメガネをかけてくれる気になったか!!」
急に目を見開き己を凝視してくる志帆に、秋人は目をキラキラさせた。
「ははーん、なるほどね
美月の差し金ね」
「ギクッ!!なぜそう思ったんだ??」
「だってここには何故か美月も栗山さんもいない
加えて、いつも私と一緒に部室に行く博臣は上機嫌でいつの間にか消えてる…
これらから弾き出されるのはたった一つ…
美月が裏で手を引いてるって事実よ」
志帆に言い当てられすぎて秋人は顔を強張らせたまま固まってしまった。
「どうせ、博臣に一泡吹かせて嫌がらせしたい美月と秋人の利害が一致したんでしょ」
うす気味悪い笑みを浮かべた志帆は、トドメと言わんばかりに秋人に言葉を吐き捨てた。
「さ…流石志帆だな
全部当たってる……」
「私を侮らないで欲しいな」
ガクガクと青ざめていく秋人をよそに、志帆は部室にあるポットからお茶を注いで優雅に飲み始めた。
あぁ…終わった……
この世の終わりを見るような眼で絶望する秋人。だが、予想していた罵倒中傷は起こることは無かった。逆に、秋人は首を傾げる出来事が起こってしまったのだ。
「え………??」
「ほら…さっさと貸して」
何故、秋人がポカンとしているのかと言うと、志帆が無言のまま手を指しのべていたからである。
視線をこちらに向けることなく腕を伸ばして物を要求している志帆に秋人は訝しげな視線を向けた。
「だから何をだよ」
「眼鏡に決まってるでしょ!!」
何もわかっていない秋人に、志帆は苛立ちをぶつけるように声を荒げた。
「えっ……えぇ!!掛けてくれるのか!!メガネ!!」
「美月の案に乗ってあげるだけよ」
ほらっと催促するように手をこまねく志帆に、理由なんかはどうでもいい秋人はコクコクと大きく頷きながらカバンを探り始めた。
「まずはこれを!!」
いつになく真剣な面付きでメガネを差し出す秋人に、志帆は若干引き地味になりながらそれを受け取った。
「まさか…それ全部??」
「当たり前だろ!!!」
キラキラと眼を輝かせる秋人のカバンから覗かせるのは。様々な色と形のメガネ達。志帆はこの時初めて秋人の要望を受けたことを後悔してしまうのだった。
バタン!!!
暫くして部室の扉が勢いよく開いた。
「アッキー…俺を差し置くとはいい度胸じゃないか??」
どす黒いオーラを醸し出し口角を上げる博臣に秋人は恐怖で身体が震えた。
「ほぉ??博臣
コレを見てもまだ言うかな??」
震えながらも、大丈夫だと威勢を奮い立たせて秋人はニヤリと企んだ笑みを浮かべると、博臣に見えるように脇に避けた。
「なぁ?!?!」
驚きの声を上げる博臣の視界に映ったのは、黒縁眼鏡をかける志帆だった。最初彼の反応にキョトンとする志帆だが、どう?似合う??と色っぽい笑みを浮かべて尋ねるのだった。
「あ…あぁ…似合ってる」
「やっぱり色々試したけどこれが無難かな?」
「いやぁ…
志帆の聡明さが際立ってていいと思うぞ!!
でも、赤縁と銀縁も捨てがたい!!」
色んな意味で言葉を失い固まってしまった博臣を横目に、志帆はつけた眼鏡を取りそれを眺め、秋人はまだ物足りないのかあれやこれやと取り出す始末。その光景を部室に入ってきた美月は心底呆れかえって見ていた。が、肩をワナワナと震わしている博臣の様子に気づいた美月が彼を訝し気に見る。
「…兄貴??」
「や…やっぱりダメだ!!」
荒い声を上げた博臣は勢いそのままに志帆の前に。そしてキョトンとする志帆の手から眼鏡をひったくるように奪い取った。
「な!?なんでダメなんだよ!?」
「決まってるだろ!!
眼鏡をかけてたら、志帆の綺麗な青い瞳を近くで見つめられないからだ!!」
秋人の言い返しに対して、博臣は志帆を見つめたまま真剣な眼差しで言い切った。その嘘偽りがない直球の言葉に、言い返す言葉を失う秋人。対して、それは志帆にとってはストレートな言葉過ぎないかと美月が顔を顰めて、志帆の様子を窺う。そして、美月の危惧した通り、志帆の白肌は見たことがないくらい朱色に染まっていたのだった。
両肩を掴まれ近い距離で言われた不意打ちのセリフに志帆は体温が急上昇するのを感じた。彼の熱を帯びた柳緑色の瞳をまっすぐ見ることが出来ず志帆は目を伏せた。確かに今までも何度か瞳に関しては言われたことがある。が、揶揄い混じりなしで純粋に褒められたことが初めてであったため、志帆の心の内で嬉しさが込み上げてきた。
「わかった…
もう…眼鏡かけるのはやめる…」
「…なんか言ったか?志帆??」
だが、口に出すのが照れ臭く、志帆の声はか細かった。当然、秋人と舌戦を繰り広げていた博臣と秋人の耳に入るはずがなく、聞き取れなかった博臣が聞き返す始末。それに対して、意を決して言った志帆がもう一度同じ言葉を紡ぐわけがなく、カッと目くじらを立てて、「何も言ってない!!」とぶっきらぼうに言い捨て、博臣を押し返すと風のように部室を出て行ってしまうのだった。
「どうしたんだ?志帆の奴…」
「さぁ??」
「……はぁ
変態二人揃って馬鹿ね…」
わからないと顔を見合わせる博臣と秋人の様子に、唯一声は聞こえていないものの心情を把握している美月は大きく深いため息をついて吐き捨てると、志帆の置き捨てていった荷物を拾い上げて彼女を追うように部室を出ていくのだった。